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14話 異世界の中の異世界

「この世界は一体…?」

ヘルは窓の外に広がる大自然と太陽が輝く青空を呆然と眺めながら呟いた。

「此処はね、地上で魔族狩りをする冒険者から身を守る為に作った場所なんだよね」

私は外の景色を眺めながらヘルの呟きに答えた。

「わざわざこの世界を作ったの!?あいつらから離れる為に!?」

センチは驚きながら私を見た。

「そうだよ!此処なら魔族達は謎の外敵に怯えて暮らす事も無いし、植物も水も…ついでに海もあるから、私達の干渉が無くても魔族達は自立して生きていけるだろうし…」

「海まであるのかぁ!?」

カガは口をあんぐりと開けた。開いた口から犬歯がはっきり見える程に。

「あるよ!水の大精霊さんがこっちに来てこの場所作るの手伝ってくれたし…」

「水の大精霊様まで…!」

「私…じゃ無くて鉱石の大精霊さんは洞窟を掘って地面や天井を固めたり、確か魔法?の大精霊さんも来てくれてね、空を広げたり太陽作ってくれたり…」

「なんという…」

ブラッシュはぶっ飛び過ぎた会話のせいなのか、難しい顔をしながらその場で頭を抱え込んでしまった。


電車百足は洞窟内に広がる異世界の中を真っ直ぐ走り続けている。

「みんな!あっちのツリーハウスが沢山生えてる場所見える?」

私は魔族達に、外にある森のような場所をよく見るよう促した。

「あれは…集落?」

「ホントだ!ゴブリンやオーク達が集まって何か建ててる!畑耕してる人も居る!」

そう、地上の森に住んでいる魔族達をセレセルさんに集めて貰い、早速この新しい世界に住まわせているのだ。

「凄い…地上と大差無いな」

スミスは畑を耕す魔族達を眺めながらボソッと呟いた。


電車百足はセレセルさんが大樹で作った豪華な駅を通り過ぎ、物凄いスピードを保ったままずっと走り続ける。


「あっ、そう言えばセレセル様は何処へ!?」

ダンは顎をガタガタ鳴らしながら電車内を見回し、先程から見えない自然の大精霊セレセルを探している。

「セレセルさんは多分、地上の森に住んでる残りの魔族達を集めに行ったんだと思う…あっ、そろそろ到着するよ!!」

大きくて真新しい駅が段々と近付いて来た。

電車百足は少しずつスピードを落としていき、やがて静かに停止した。


シューーーー……


電車百足の扉が一斉に開く。

「はい到着!!みんな降りて!」

私は先に駅のプラットホームに降りて魔族達も電車百足から降りるよう促した。

「凄い!めちゃくちゃ綺麗な場所だね!」

「美しい…」

センチとヘルは電車百足から降りて駅の中を見回している。

「すげー広いな!」

「カガ!走り回るのはやめとけ!」

駅のホームを全力で走るカガに大声で注意をするスミス。

「清潔感のある建物だ…」

「開放感があり、新鮮な風が建物内を通り抜けています。まさに自然と同調した…駄目です、この建物を上手く表現する言葉が出て来ません…」

「私は今すぐこの建物に合う服を作りたいわぁ」

ブラッシュにアリア、マリも電車百足から降り、建物の感想を呟いている。

「……」

最後に無言のままダンが電車百足から降りる。


ドドドドドドドド……


全員降りて無人になった電車百足は体の扉を全て閉めると、再び洞窟の入り口に向かって全力で走り出し、やがて見えなくなった。

「大精霊が作り出した異世界にようこそ!みんな、とりあえず私について来て!」

私は魔族達を引き連れ、駅の出口辺りにある広場に向かって歩き出した。


「広場に到着!…と言っても今は広場しか無いんだけどね…」

石を敷き詰めて出来た簡単な広場の前には、コンクリートで作られた大きな一本道が真っ直ぐ伸びていた。

「よし!みんな、地上は危ないから今日から此処に住んでいいよ!私が認める!」

「ホント!?ありがとうロイワさん!!」

「ありがとうござ…ありがとうロイワさま…さん」

「助かる、ありがとう」

みんなが私に向かって口々にお礼を言ってきた。

面と向かってお礼言われると何か恥ずかしいね…


「そうだ、外に置き去りにして来たテントや荷物を取りに戻っても宜しいでしょうか…?」

全員がお礼を言い終えた後、ブラッシュが外にある仮拠点を回収しに行きたいという旨を私に伝えて来た。

「いいよ!そうそう、回収し終わったら私の所に戻って来てくれないかな?私、じゃ無くて大精霊様がみんなにプレゼント?みたいなのを用意してくれてるから」

「分かった、必ず戻る。待ってろ」

「なっ!?」

「うおっ!ダン、もっと丁寧に運べ!!」

ダンは私の話にぶっきらぼうに答えると、近くに居たブラッシュとスミスを片手で持ち上げながら駅の中に入って行った。

しばらくすると、さっき乗って来た奴と違う個体の電車百足が駅に到着。しばらく停止した後、電車百足は洞窟の出口に向かって全力で走り去って行った。


「外の荷物はあの3人に任せて大丈夫かな。

さて…ロイワさん、プレゼントって何?」

センチ含む、残った魔族達全員が私を見つめている。

「そうそう、この場所に来てくれた君達全員にね…


一軒の建物をプレゼントします!!」


「「「「「!?」」」」」

私の発言に、この場に居た魔族全員が目を丸くして驚いた。

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