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13話 電車百足と異世界

「貴方が新しい大精霊様…!」

センチさん以外の魔族達が、私の姿を見るなりその場で跪いてしまった…

よく見ると蝶人のマリさん土下座をしてる…

「センチ!お前も跪け!」

「分かったよ…」

ヘルに指摘され、センチも渋々跪いた。

「初めまして、ヘルから話は聞いております。我々は「誰かと勘違いしてない?私は最近生まれた鉱石の大精霊様の使いのロイワって言うんだけど?」

私は骨人のダンの堅苦しい話を無理矢理遮り、嘘の自己紹介をした。

「あの、ヘルの話では赤い鉱石人である貴方様が「違うよ?」

「ですが魔力や気配が…「ダン、やめんか!」

話を続けようとするダンをドワーフのスミスが止める。

(大精霊さんはな、今は一般人として我々の前に出ているんだ。分かるか?)

(だが…あの方は…)

(そう、大精霊だ。だがな、今は目の前の大精霊さんを一般人として接するんだ、いいな?)

(分かった…)

スミスはダンに小さい声で指示を出した。

「おい、貴様は何者


ガツン!!!


「違う!厳しい対応をしろと言う事では無い!!無礼だぞ!!」

厳しい口調で喋り出したダンに駆け寄ったスミスは、手に持ったデカいハンマーでダンの頭を思い切り殴った。

(あの方は既に名乗っただろうが!!鉱石の大精霊の使い、ロイワさんだ!!)

(そ、そうだった…)

スミスの説明にダンがふらふらしながら頷いた。

「あのー、そろそろいいですかね?てか、とりあえずみんな立ち上がってくれないかな?」

「ああ…すまないロイワさ…ん」

私のお願いを聞き入れ、魔族達は皆急いで立ち上がってくれた。

「とりあえずみんな私の話を聞いてくれませんか?」

私の言葉に、この場に居た魔族達が黙って頷いてくれた。


「さて、この場に集まって頂いた魔族の皆様、とりあえず私の後ろに付いて来て下さい!」

私は魔族達を新しく作った洞窟の奥に案内した。

「凄い…物凄く綺麗…」

蝶人のマリは洞窟の奥の施設にある周りの白い壁や床のパネルに驚いているようだ。

「1ミリの狂いも無い正方形の石が綺麗に敷かれている…此処には良い腕を持った彫刻師が居るのか?いや、大精霊様の力なら…」

ドワーフのスミスはその場に屈み、床のパネルを1つ1つを確かめているようだ。

「洞窟内なのに物凄く明るい…この明るさの街灯があれば夜道がかなり明るく…」

エルフのブラッシュは天井に埋め込まれている「物凄く明るく光る鉱石」をじっと見つめている。

「ねえ、この洞窟は何処に続いているの?」

センチはプラットホームから横に広がるトンネルを見つめながら首を傾げている。

「それはこれから分かる事だよ!おいで!!」

私はトンネルの奥に向かって大声で呼びかけた。


ドドドドドドドドドドドド……


トンネルの奥から物凄い音が聞こえてきた。

大きな音と共に巨大な生物が此方に近付いて来る…

「あれは…デカい百足!?」

猿人のカガが驚きの声を上げた。

そう、このトンネルを走ってやって来たのは電車と百足と鎧が合体したような巨大な生物だ。

名付けてムカデンシャ!…いや、やっぱり電車百足の方がいいかな?

「おお、これは凄いな」

「カッコいい!触っても大丈夫?」

スミスとセンチは顔を輝かせながら電車百足に近付く。

「敵か!?」

ダンは背中の鞘から抜き取った大きな剣を構えた。

「さっきロイワさんが「おいで!」って言って呼び出してただろ!?武器構えるのやめとけ!!」

武器を構えたダンを羽交い締めで止めようとするカガ。

それ以外の魔族達は巨大な電車百足に驚き、その場で固まってしまったようだ。

「大丈夫、この子はわた…じゃなくて大精霊様が作った生き物だからね、近くに寄って観察しても大丈夫だよ」

みんなは私の話を聞き、大人しく待ち続ける巨大な電車百足に恐る恐る近付きながらじっくりと観察をし始めた。

「体内が透けている…?」

「中に椅子が並べられているように見えますが…」

「馬車が複数合体して出来たような…何か不思議な乗り物に見えるな…」

みんなは目の前の生き物を顔から足元、後ろ姿を隅々までよく観察している。

「よし、電車百足!扉開けて!」

私が電車百足に指示を出すと


シャーーーー……


「身体に穴が!!」

電車百足の身体に付いている扉が突然全て開いた。

扉の前にいた翼人のアリアさんが突然の出来事に目を丸くして驚いている。

「みんなこの電車百足に乗って!移動するよ!!」

「いいの!?やったー!!」

「まさかこんな物に乗れる日が来るとは…長生きしてみるもんだな」

センチとスミスは電車百足の体内にあっさり入ってくれた。

「乗る!?この生き物の体内に入るのか!?」

「乗るのはちょっと…」

「これ、大丈夫なのかしらぁ…」

センチとスミス以外の魔族達はこの得体の知れない生物にあまり乗りたがらないようだ。

まあそうだよね…生き物の体内に入り込む訳だし。


「恐れなくても大丈夫です…私が保証します」

「「「セレセル様!?」」」

何と、電車百足の体の奥からセレセルさんが出て来て魔族達の前に現れたのだ。此処に居る魔族達はみんなセレセルさん知っているんだね、セレセルさん有名人じゃん。

「あれ?セレセルさん外の森に居る魔族達や他の大精霊を呼びに行ったんじゃなかったの?」

「全て終わりましたよ、ロイワさん。

それより、皆様早くこの生き物に乗ってくれませんか?早くしないと日が暮れてしまいますよ?」

「はい!セレセル様が仰るならば!!」

「喜んで乗らせて頂きます!!」

セレセルさんの指示を受け、外に居た魔族達は急いで目の前の電車百足に乗り込んだ。そんな中…

「マリ危ない!!」

センチが立ち上がって電車の外に飛び出し、蝶人のマリを持ち上げて電車内に急いで乗り込んだ。

「センチ、何するのよぉ?」

電車の中に乗せられたマリは、近くにある座席に座りながらセンチに文句を言っている。

「ごめんマリ、でも靴脱いでこの生き物に乗り込んだらね、生き物が移動した際に靴が置き去りになるんじゃないかと思ってさ…」

まさかマリさんがプラットホームで靴を脱いで電車に乗り込もうとしていたとは…室内だから癖で脱いじゃったのかな?何かマリさん日本の人みたいだね…


「とりあえず全員乗り込んで席に座ったね?

では出発進行!行き先は新異世界!!」


シャーーーー……


私の合図を聞いた電車百足は身体中の開いた扉を全て閉め、少しずつ速度を上げながら走り始めた。


「速い…だが全く揺れない…!」

ヘルは驚きながら辺りを見回している。

「凄い!凄く速いよ!!トンネルの明かりが凄い速さで通り過ぎてるよ!!」

センチは後ろの窓から外のトンネルを眺めながらはしゃいでいる。

「ほぉ〜この生き物の体内物凄く明るいな」

スミスは天井の明かりをじっと見つめている。

「あっ、外の景色が変わっ…て…ええ!?」

エルフのブラッシュが窓から見える外の景色に驚きの声を上げた。

「ああ!?こりゃどうなってんだ!!」

「えぇ…!?此処は洞窟の中の筈…」

「今日は曇りだった筈なのに…眩しいわぁ…」

他の魔族も窓から見える景色を驚きながら見つめている。

「ロイワ様…いや、ロイワさん、此処何処です…だ?」

「此処は洞窟の中、新異世界だよ」

私はヘルさんのぎこちない質問に簡単に答える。

「何で…


何で洞窟の中に外の景色が広がっているんだ!?」

そう、洞窟のトンネルを抜けた先には


真っ青な空


白い雲


輝く太陽


緑で覆われた綺麗な大地


太陽に照らされた美しい世界が広がっていたのだった。

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