11話 おもちゃとスライム
目の前には私達を見つめ続けるスライム達。
「それじゃあ…私に付いて来てくれる子集まって!遊びとか色々教えるよ〜!」
そう言いながらセンチが移動を始めると、数名のスライムがセンチの後を追って歩き出した。
「ロイワさん、後の子は任せたよ!」
センチは去り際にそう言い残し、尻尾をゆらゆらと揺らしながらスライムと共に森の奥に向かって歩いて行った。
「さて、残った子は…」
私の足下には5匹のスライムが残っていたが…
スライム達は集まるのに飽きたのか、その辺の石を積み上げて遊び始めた。
「自由だなぁ…まあいっか」
私は地面に腰を下ろすと、右手から赤い金属を生み出してある物を作り出した。
「出来た!けん玉!」
糸の部分が細かい鎖で作られた、普通のけん玉を作り出してみたのだ。
コマ、ビー玉、かっこいいおもちゃの剣…とりあえず頭に浮かんだおもちゃを作り出してみた。
シンプルで簡単に作れるやつばかりだけど、中々いい出来のおもちゃが出来た気がする…
「???」
スライム達は私が作ったおもちゃに興味を示しているようだ。よく見ると私の周りに集まっているスライムの数が増えている。
「??」
1匹のスライムがコマを持ち上げて観察をしている。
「ああ、このコマはね…こうやって回して遊ぶんだよ」
私は新しいコマを作り出し、コマに付いているつまみの部分をつまんで勢いよく回した。
ブーーーン……
綺麗に回るコマに見とれるスライム達。
「ほら、もっと作ってあげるからこれで遊んでみな」
私は様々な形をしたコマを作ってスライム達の前に置いてみた。スライム達はコマの山に群がり、あっという間に全てのコマを持ち去ってしまった。なんかアリみたいだね…
あの小さい手でコマを回そうと頑張るスライムの姿がとても微笑ましい…かわいい。
中にはコマみたいにくるくると回ってみるスライムも居るようだ。微笑ましいね。
コツン!
何の音?音がした方を向くと…
金属のスライムが地面に置かれているけん玉の玉を足で蹴っている姿が見えた。
私はけん玉を持ち上げ、スライム達に遊び方を教えてあげる事にした。
「これはね…こう、こうやって……こう……………この………………ね?」
駄目だ…中々窪みの部分にはまらない…でも一部のスライムには魅力的に見えたのか、私が持っているけん玉を欲しがって群がっているようだ。
「待ってて、もっと作ってあげるから」
私は少し軽めの金属で小さめのけん玉を作り出し、スライム達の目の前に置いてあげた。
スライムはけん玉を持ち去り、けん玉を使って色んな遊びをし始めた。
棒の部分を掴んで玉を引き摺ったり、遠心力を使って玉を遠くに投げてみたり、玉の部分と棒の部分を引っ張り合ってみたり…自由だなぁ。
「これなーに?」
「かわいーい!」
あっ、妖精達がいつの間にか外に出て来てる。
妖精はスライムが持っているおもちゃに興味津々のようだ。妖精達がスライムからおもちゃを奪い取ろうとする様子は無いが、いつかおもちゃを巡って喧嘩が始まってしまったら大変だ。
よし、妖精達の分も作ってあげよう。
「こっちおいで、みんなにも分けてあげるよ」
「かわいーのちょうだい!」
「わたしも!」
かわいいやつ…妖精ってみんな女の子だし、きっと指輪とかブローチとか気に入ってくれるよね。
と、言う訳で指輪入りブローチを妖精達に作ってあげたのだった。
ルビーやサファイアのような宝石で作られたかわいいブローチの中に、ダイヤモンドのような宝石のみで作られたかわいい指輪が入っている。我ながらいい作品が出来上がったと思う。
「きゃー!かわいい!!」
「ありがとう!だいじにする!」
妖精達は指輪入りブローチを受け取りご満悦の様子だ。
「賑やかですな」
「あっ、吸血鬼!」
洞窟から普通の人間サイズの吸血鬼が赤い傘を差しながらやって来た。
「吸血鬼はこれから散歩にでも行くの?」
私は吸血鬼に近付きながら行き先を尋ねてみた。
「いえ、洞窟の中について主人に報告をしに来たのです。
実は…我々が居た洞窟内をもう少し広げる為に作業をしているのです。主人が元の姿でのびのびと生活出来るように…もし宜しければ洞窟に対する主人の意見を聞かせて頂けますか?
出来る限り主人の要望を叶えた洞窟を作りたいのです」
吸血鬼…まさか私の為にそんな事をしてくれていたなんて…なんていい吸血鬼なんだ…
「それなら私も手伝うよ!丁度作りたいのがあったし」
私は立ち上がり、洞窟に向かって歩き出した。
「宜しいのですか!!」
「いいよ!ただ何もせずぼーっとするのも嫌だったからね!」
そう言って私と吸血鬼は洞窟に入り、しばらく閉じ篭って作業をしたのであった…
この時、私が遊び感覚で渡したおもちゃがスライムや妖精達にとんでもない影響を与えてしまう事になるとは…当時の私は全く予想していなかったのでした。




