102話 星祭りに行く道中で新型タブレットをお披露目してみた
カゲリちゃんと別れ、レストとも別れた後、私は星祭りまでのんびり過ごした。
時間はあっという間に流れ……外はいつの間にか夜に変わっていた。私はそれなりに身なりを整え、最新機器を片手にウキウキしながら待ち合わせ場所である自宅の屋上へと移動した。
ゴーレムのゴーくんとゴーレムもどきのシーくんは大きな腕をブンブン回しながら屋上を走り回っている。どうやらこの2人も星祭りが楽しみらしい。
「ロイワ、やっほ」
「先程振りだね、準備は出来てるかな?」
やがてレストとカゲリの2人も屋上へとやって来た。2人ともおめかししており、今回のお祭りがいかに楽しみなのかが伺い知れたような気がした。
「会場までどうやって行く?ダンデに車出してもらおっか?」
「いやいや、2人はバイクの免許を持ってる事だし、ここは空からゆっくり会場に向かうのが一番楽しいでしょ。あとロマンティック」
「ロマンチックかぁ……確かカゲリちゃんはそのまま空飛べるんだっけ?」
「うん。だから2人の後を……あっ、星祭りの会場に案内する為にも私が前飛んだ方がいっか」
「大丈夫、私も星祭りの会場は既に検索済みだから!」
「おぉ〜頼りになるね〜」
「検査済み?」
光妖精の連絡網は本当に便利だ。星祭りの情報を調べたら道順まで提示してくれたのは本当に有り難かった。
「ゆっくり移動するのなら、低い位置で飛ぶ事にしよう。これなら上への許可は必要無い筈だ」
「40キロ以内で、街灯の上辺りの位置を走るのなら許可無しでも大丈夫になったんだよね。それにしても……空飛ぶ度にわざわざ許可取らないといけないって何か煩わしいね」
「技術が向上すればいつか法律もある程度緩和されるだろう。それまでの我慢だ」
「そうだね」
私は会話をしながらゴーくんとシーくんをバイクに乗せ、スポーツバイクにランプをぶら下げたりと、夜の街を飛ぶ為の準備を進めた。
「さてと、それじゃあそろそろ飛び立ちますか」
「うん!バイクの灯りを点灯させて……と。それではお祭り会場に向けて出発!!」
こうして私達は1人、また1人と屋上から飛び立ち、街灯に沿っての飛行を開始した。
「外綺麗だね!」
「そうだね、この位置からでしか分からない景色もまたいいものかもしれないね」
街灯の上を飛ぶのはとても楽しかった。
普段とは違う視点から見る景色をゆっくり眺めながら、友達と取り留めの無い会話をするこの空間はとても居心地が良かった。
ロイヤルタウンからグリーンタウンへと移動すると景色もかなり変わってくる。グリーンタウンは文字通り緑に囲まれた町で、建造物は殆ど木製の大人しくも美しい場所だった。
「見て!あの飾り可愛い!!」
「いーね、あの形のランプ欲しいね」
今夜は星祭りの日だからなのか、星形の飾りがあちこちに飾られていてとても綺麗だった。
(折角だし、この景色を撮影しとこっかな!)
私は新しい魔導具『携帯タブレット』を取り出し、時折停止しては写真撮影をした。
祭り会場に近付くにつれて、次第に下の道を歩く人も増えてきた。
魔物達は時折空を見上げて私達の姿を見たり、小さい子供達が私達を見て歓声を上げたり手を振ったりしてきた。みんなに手を振り返すと、子供達はまたまた歓声を上げた。可愛い。
「魔物の子供も随分と可愛いですなぁ」
「ね〜!無邪気で可愛いよね〜!」
「僕達もまだ子どもなんだけどね……所で、ロイワは先程からカード片手に何かしているみたいだけど、その装置は何なのかな?」
レストは私が持つ携帯タブレットに興味を示しているようだ。
「このタブレット?これは私の技術を詰め込んだ最新機器だよ!今はこれで外の景色を撮影してたの!見て!」
私は先程撮影した景色を画面に表示させ、2人に携帯タブレットの中の景色を見せた。
「うわぁ、すごくキレイ……」
「まるで景色を切り取ったかのようだ、素晴らしいね……まさかいつの間に高度なカメラを作成していたとはね」
「これカメラじゃ無いよ?」
「えっ?」
「私が前使ってた帽子型の魔導具じゃやっぱり不便な所もあったからさ、このタブレットに魔導書や大容量バッグやカメラやその他諸々を全て詰め込んだんだよ!」
「……君は何を言ってるんだ?」
「えーっと、大雑把に言うと……今まで私が作った道具の力を全てこの携帯タブレットにまとめたって事かな!」
「…………」
レストが黙ってしまった。恐らくレストは私の話を疑っているのだろう。ならばこのタブレットの一部機能をとくとお見せしよう。
「ねえ、2人とも喉乾いてない?」
「乾いた乾いた」
「……えっ?あ、ああ……」
「よし分かった!2人とも、両手を出した状態でちょっと待っててね!」
「?」
私は両手を差し出すレストとカゲリちゃんを画面に納めたまま携帯タブレットの機能『バッグ』を選択し、中に表示されている『瓶ジュース』の画像を選択し、1つをレストの手のひらの上へと移動させた。
すると、レストの目の前に先程選択した瓶ジュースと同じものがパッと現れた。
「突然飲み物が……!?」
「お〜マジック〜」
レストは目を丸くして驚き、カゲリちゃんはパチパチと軽い拍手をして喜んでいる。
「これは大容量バッグの機能だよ!カメラの画面に映った物をタップで選択して保存するとこのタブレットの中に入るんだよ!で、出したい時はこのアイテム一覧から選んで押すと……カゲリちゃん、手を出して!」
「ほいほい」
私はカゲリちゃんの手元が写った状態でペットボトル飲料をもう一つ選択、お次はカゲリちゃんの手元に同じ種類の瓶ジュースが現れた。
「ありがと」
「どういたしまして!そうそう、物が出てくる場所は画面で調整出来るよ!中の人工精霊が物の出てくる位置とか色々と調整してくれるから物凄く簡単で」
「待て」
「まだ信じない?えーっとね……頭に思い浮かべた魔術をメモの欄に記載してくれる機能もあるよ!ある程度呪文を予測してくれるから多少の間違いも訂正して」
「待て」
「あっ、そうそう……この携帯タブレットの中には私が一から作った人工精霊のガレッド(と大精霊のミュラー)が居るよ!このタブレットの人工精霊に指示を送れば自動で目覚まし掛けてくれたりバイクを操作してくれたり」
「君は少し黙ってくれないか!?!?」
何故か突然レストが叫び出し、会話が中断されてしまった。
「うわびっくり」
「レスト、急にどうしたの?」
「どうしたのじゃない!?こんなとんでもない魔導具作っておきながら何故こんな雑談をしている時に、まるで図画工作の作品を自慢するかのように語っているんだ!?」
「実際図画工作みたいなものだし……」
「全然違う!!」
「違うかな?まあ、実際は物凄く頑張ったし、ゴーレム達も頑張って手伝ってくれたし、ある意味最高の芸術作品とも言えるかな?」
「いや、しかし……!そもそもこんな所でそんな会話して、誰かに聞かれたりでもしたらどうするつもりだ!?」
「大丈夫!飛ぶ前にガレッドに『私達の会話が周りに聞こえないようにして』って頼んであるから!だから外でも堂々と会話出来るよ!!」
「…………そっか」
どうやらレストも納得してくれたようだ。
「あっ、そうそう。このタブレットにはチャット機能っていう、遠くの人とメッセージのやり取りが出来る機能があるよ!」
「いいな〜。ロイワは誰とチャットしてるの?」
「今はリュユ理事長と魔王様と魔王軍所属の友達と繋がってるよ」
「…………」
レストはずっと無言のまま私の話を聞いている。
「へぇ〜、魔王様とどんなやり取りしてんの?」
「幾ら何でもそんな機密文書を他人に見せられる訳が無いだろう……」
「特に深い内容の文は無いよ。『頑張ったね』とか、『凄いね』とか、私のやった事に当たり障りの無い褒め言葉送ってくれるんだよ」
「浅い文だね」
「魔王様のお褒めの言葉を浅いとか言うな!!」
突然レストが元気になった。今日は感情の起伏が激しいようだ。
「まあそれはさて置き……実は今手元に、チャット機能のみ使用出来るカード状の端末なら持ってるけど……2人とも欲しい?しっかり動くかテストしたくて……」
「「!?」」
2人は私の問いかけに対して分かりやすく反応した。
「めちゃくちゃ欲しい」
カゲリちゃんは相変わらず無表情のままだが、宙に浮かんだまま身体全体をバタバタさせてカードを欲しがっていた。
「…………欲しい」
何とレストも素直に欲しいと答えた。少しは見栄を張るかと思っていたが、以外な反応に私は少し嬉しくなった。
「ちょっと失礼……はい!これでカードに登録された人以外にこのチャット用カードは見えなくなったよ!作成者である私には見えてるけどね!とりあえず使い方教えるね!」
私は2人に簡単にチャットの説明をした。2人は飲み込みが早く、あっという間に使い方を覚えてしまった。
「こんな感じかな?今の所はこの場にいる私達のどちらかに文が送れるようになってるからね!」
「ありがと、後で当たり障りの無い文送るね」
「国王の文めちゃくちゃいじってるね」
「…………」
私達が会話する中、レストはカードを無言でまじまじと見つめている。
「レスト、これでもっとお喋り出来るね!」
「……うん」
レストはカードを見つめたまま素直に頷いた。
「さてと、雑談はこの辺にしてそろそろ星祭りの会場行こっか!」
「あ、ああ……そうだったね。早く行かなければメテオストライクを見そびれてしまうかもね」
「れっつごー」
私達は再びバイクを走らせ、星祭りの会場へと急いだのだった。




