おまけ 田舎エルフと都会エルフ
此処はこの世界で一番栄えている街『ロイヤルタウン』。
そんなロイヤルタウンの玄関口でもある『ロイヤル駅』からは、日々、色んな魔物が忙しなく出入りする姿を見る事が出来る。
そんなロイヤル駅にうら若きエルフの乙女が1人。このエルフの名前は『シテラ』、彼女は鎧ムカデの走るホームを見つめながら、両親の到着を今か今かと待ち侘びていた。
「シテラ!!」
「パパ!ママ!」
駅のホームから顔の良い男女のエルフが仲良く現れた。2人はシテラの両親で、シテラは大喜びで両親の元へと駆けつけた。
母は普通だったが、父は手一杯に大荷物を持っており、田舎臭い格好と相まってとても目立っていた。
「シテラ……都会は息苦しいだろう?そろそろ実家に帰って来たらどうだ?」
「パパったら……開口一番で言う事がそれ?私なら大丈夫だから!」
「もう、お父さんったら……シテラは賢い子ですし、もう1人でも大丈夫ですよ」
「だが……最近は都会で変な奴らが暴れたりとか、危ないニュースばっかり流れてるじゃないか」
「ニュース……えっ?パパ、もしかしてついにテレボ買ったの!?あの機械大嫌いなパパがついに!?」
「そうなのよ。シテラが手紙で『いい加減テレボ買ったら?』って何度も書くから、この人もついに根負けしてね……家から一番近い町に行ってわざわざ購入してきたのよ」
「こら!余計な事言うな!」
「まあまあ……ほら、とりあえず私の家行ってその荷物置いて来てさ、ユグドラシルに買い物に行こうよ!まずはパパの田舎臭い格好をどうにかしなくちゃ!後は荷物を入れるリュックも……」
「今時の変な服はいらん!」
「あなたったらもう……」
などと、家族で仲睦まじく会話していると……
「あれ田舎エルフじゃね?」
「すいませーん!ちょっといいっすか?」
都会っ子のオーガとエルフがエルフパパに話しかけてきた。
「な、何だお前達は……」
「1つ質問したいんすけど、おじさんって鎧とか持ってたりしますか?」
「おじさん……まあ、鎧なら家にあるが……それがどうした?」
「マジ!?マジで鎧持ってんすか!?」
「すげぇ!やっぱ田舎の人ってマジで鎧持ってんだ!!」
田舎の人は怒ると鎧を着て敵を追いかけ回す。この光景は番組のドラマやコントでも再現されており、今時のテレボっ子の若者にも馴染み深いものであった。
因みに今時鎧を所持している魔物は非常に珍しい存在だ。それこそ博物館か金持ちの家、もしくは田舎の家に行かないと見れない代物だ。
「へぇー!!何で鎧なんてモン持ってんすか!?」
「はぁ!?鎧持つのは当たり前だろ!?逆に自分に危険が迫った時はどうやって身を守るんだ!?」
「そんなの服さえ着てりゃ大丈夫っしょ」
「はぁ!?布の服なんかで自分の身を守れる訳無ぇだろうが!!」
「何怒ってんすか?」
「お前らが怒らせたんだろうが!!」
「パパもうやめて!恥ずかしいって!」
父を見かねてシテラが割り込んで来た。父は顔を真っ赤にして激怒している。
「ありがとうございまーす!あー面白かった!」
「飲み会のネタが出来たな!」
シテラがお父さんを宥めている間に、都会っ子の2人は笑いながらその場から離れていった。
「くそっ!これだから都会は嫌なんだ!!シテラ、こんな野蛮な所よりも美しい自然に囲まれた我が家に戻ろう!ベスも寂しそうにしてたぞ!!」
ベスとは全身緑色の大きな犬である。余りにも賢すぎるので最近は会計の仕事を任されている。
「もう、あなたったら……ほら、此処で話してたら通行人の邪魔になるわよ。早く外出ましょ」
「そ、そうだな……」
シテラは少し大人しくなったお父さんと、ショッピングが楽しみなお母さんを引き連れて駅を後にした。
そして、数ヶ月後……
再び駅のホームで両親を待つシテラ、そんなシテラの前に再び両親が現れたのだが……
「パパ!ママ!久しぶり……パパ?」
「シテラ、久しぶり。元気だったか?」
そこには、新しいファッションを着こなす、すっかり都会に染まった『都会エルフ』の父の姿が。
「パパ、随分とオシャレになったね!それどうしたの?」
「この人ったら、あれから頻繁にロイヤルタウンに行くようになって、テレボのドラマやバラエティ番組も観るようになって……すっかり都会に染まっちゃったのよ」
「ほら、早くユグドラシルに買い物しに行くぞ。パパが2人に新しい服買ってやるから」
「いいの!?やったー!!」
「良かったわね。さ、早く行きましょ」
こうして仲睦まじい家族は駅を後にし、大型ショッピングモール『ユグドラシル』へと向かったのだった。




