101話 レストといっしょ
レストと本音をぶつけ合った後日、私は初めてレストと遊びに出掛けた。
最初の行き先は、私とレストが興味を持っていた『鉱石博物館』だ。
「物凄く大きなダイヤモンドだ!綺麗……!」
「うん、そうだね」
「見て!クリスタルで出来た蝶が集団で飛び回ってる!」
「うん、綺麗だね」
最初はぎこちないと言うか何というか……あまり会話は弾んでいなかった。
だが、相手はただ緊張しているだけで、別に私と遊ぶのが嫌という訳では無い事はなんとなく分かった。
何度も遊びに誘い、時に誘われ、お互いに興味が出る魔術関連の会話をしていく内に次第に緊張がほぐれ、やがて打ち解けていった。
そして……
「おはよー!!ねえレスト!このペンの横にあるボタン軽く押してみてよ!」
「いや、先にそのペンの説明をして貰えるかな……?」
「えへへ〜何だと思う〜?」
「その笑い方からして絶対に碌なものじゃないだろ……」
ついには無駄話が出来る仲にまでなれた。
レストに話しかけても見下す発言しか帰って来なかった状況から、普通に会話のキャッチボールが出来るまでになれたのは大きな進歩だと言えるだろう。
「正解は簡易式レーザービーム装置でした〜」
「なっ……!こんな小さな物で高威力のレーザーを撃ち出せるのか!?君は本当に凄いな……学校で常に低レベルな同級生と相手をしなければならない君がますます可哀想だ……」
「そんな事無いって!!」
レストの悪口は相変わらずだった。
そして今現在、レストを私の自宅にあるサーキット場に招いて、私が1から作り出したスポーツバイクを試乗してもらっていた。
「スピードを上げたいならこの補助は切れるようにした方がいいよ。
嫌味ったらしい言葉はすっかり鳴りを潜め、まともで正直な発言ばかりになったレストの指摘はとても有り難かった。
レストのあの嫌味な発言は多分、『自分と同年齢かそれ以下の子どもは基本アホしか居ない』と思っていたから、それが態度となって現れていたのではないかと思っている。(学校では同級生には碌な態度を取っていなかったらしいが、大人に対しては丁寧に接するし、歴史上の偉人にも敬意を払っていた)
現在は私も認めてくれたようで、こうして物作りをする私に真剣に言葉を投げかけてくれるのだった。
「成る程、じゃあ一旦コレは外して……レスト、再走お願いできる?」
「勿論、僕とロイワが納得出来るものを作る為にも何度だって走るさ」
なんて会話をしていると……
「随分と楽しそうですなぁ」
部屋の陰から少女がひっそりと姿を現した。
「なあっ!?誰だお前は!?」
「うわぁ!?って、カゲリちゃん!?」
「ロイワ知ってるのか!?」
「夜の時間の学校に通ってる、神出鬼没の友達だよ!人によっては姿が見えなかったり、言葉も分からなかったりする不思議な子でもあるよ!」
「どんな友達なんだ……?」
「で、カゲリちゃんも遊びに来たの?それとも大事な用事?」
「用事。だけど……うーん、本当はロイワと2人きりで行きたかったんだけど仕方ない。折角だから君も誘ってあげるとしよう」
「随分な態度だな。何なんだお前は……」
「カゲリだよ」
このやり取りが出来る、と言う事はレストもカゲリちゃんが見えるし言葉も分かるのだろう。
「ねえ、今日の夜この3人で『星祭り』見に行かない?」
「星祭り……?」
「うん。グリーンタウンの隣にある『大海原自然公園)』って言う、めちゃくちゃ広い草原があってね、そこに落ちて来る星を眺めるってだけの祭り。出店も沢山出るよ」
「初めて聞くなぁ……えっ?本当に星が落ちて来るの?確か宙で凝固したマナの結晶が地上へと落ちてくる『メテオストライク』って現象があったりするけど……それと関係あったりする?」
「正解。落ちて来るのはマナのカケラだよ。運がよかったらマナのカケラも拾えるかもしれないし、出店で面白いモノ買えるかも知れないし、かなり面白いと思うよ」
「ホント!?私その祭り行ってみたい!!」
「ロイワならそう言ってくれると思った。で、そこの君はどうするの?」
「……ロイワが行くなら僕も行く。『メテオストライク』をこの目で見る絶好の機会でもあるからね」
「行きたいなら素直にそう言えばいいのに〜。じゃ、今夜ロイワの家の屋上に再び集合って事で」
「カゲリちゃんまたね〜!」
「消えた……?アレは一体何だったんだ……?」
「まあ、何はともあれ楽しみだね!星祭り!」
「……まあ、たまには同級生と意味の無い外出をするのも悪くは無いか……」
どうやらレストもこのお出掛けを悪く思ってはないようだ。寧ろ楽しみにしているようにも見える。
(星祭り、物凄くワクワクする……!)




