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99話 作戦失敗……?

カート勝負の後も白熱する勝負を繰り広げる私達。正直言うと、何でもこなせるレストとゲームで真剣勝負をするのは物凄く楽しかった。


(これで一言余計な所さえ無ければなぁ……)




「よし!2000点!」



「2010点、この勝負は僕の勝ちだ」



そして同点のまま迎えたシューティングゲームバトルは、まさかの10点差で私が負けてしまった。これでレストが1点リードだ。


「たった10点差だろうが勝ちは勝ちだ、言い訳を考えるよりも大人しく負けを認めた方が身の為だよ」


またそれか……あーあ、それさえ無ければなぁ……




「あーもう、それさえ無ければレストと友達になれたかも……」




あっ!思った事がつい口に出ちゃった……


「……それとは何だ?」


「いや、何でもない!ほら、次の勝負しに行こ!」


本来はレストから距離を置いてもらうのが目的なのに、レストと友達になりたいなんて言ったら本末転倒でしょ。



「……友達になれる、だって?僕と君が?」



出たよレストの悪い癖……多分『僕が君みたいな魔族を友達にすると思ったのかい?』とか言われるやつだよ……



「そうそう!レストと友達になれたら嬉しいな〜って思ってたんだよね〜!!だってレストって何でも出来るし?そんなレストと一緒にいたらきっと楽しいんだろうな〜って!!」



まあ、今回はレストにウザがられるのが目的だから別にどう思われようが別に構わないけどね!!



「って言うか、こんなに遊んだ仲なら私とレストは既に友達!みたいな感じじゃん!?レストもそう思うでしょ!?」




「…………そんな事言ったって、勝負の手は抜かないよ?」



(……えっ?)


「まだ勝負は決まってないんだ。ほら、次の勝負をしに行くよ」


レストは私のウザ絡みを軽く受け流すと、私に背を向けて何事も無かったかのようにスタスタと歩き始めた。



(……あ、あれ?友達発言については否定しないの?)



おかしいなぁ……しかも、結構しつこく絡んだ筈なのに嫌な顔すらしなかった……



この後も、私は何かある度にレストにしつこく絡んでみたのだが……


「レストすご〜い!後で私にもその技術教えて〜!」


「またか……後で幾らでも教えてあげるから今は目の前の勝負に集中してくれないかな?」


「やった〜!私の勝ちだ〜!!」


「負けたか……ロイワ、僕に勝てた事を誇りに思うといいよ」


「ねえねえ、あのゲームの景品の卵すごく綺麗だよ!しかも卵の中からガラス製の蝶々が生まれるんだって〜!すごく欲しい!だから次の勝負はあれにしようよ!」


「あんなゲームじゃ勝負にならないのが分からないのかな?まあ、どうしてもアレが欲しいなら平凡な君よりもずっと腕の立つ僕が直ぐに取ってあげてもいいけど?」


何で!?何でウザがらないの!?あの時の嫌な顔をしていたレストは何処に行ったの!?



あっ、まさか……もうウザ絡みに耐性付いたとか!?あの短時間で受け流す術を身に付けたと言うの……!?



くそぉ……!耐性が付く前に最初からフルスロットルで絡みまくれば良かった……!!






結局まだ勝負は引き分け続きのまま。その勝負の間も頑張って絡んだが、私が絡む度にレストがウザがる様子は段々と消え失せていった。これは完全に作戦失敗だ……



「ねえ、そろそろ休憩にしない?」



長時間戦った私達は、とりあえず一旦休憩する為に施設内にあるフードコートで休む事になった。



「はぁ……」


私はカラフルなグミの魚が泳ぎ回っている透明な炭酸ジュースを片手に持ちながら、レストに取って貰ったガラスの蝶々達を追いかけ回すゴーくんとシーくんを遠巻きに眺めていた。


目の前のテーブルには先程沢山買ってきた美味しそうなホットスナックが山積みになっているが、本来の目論見が外れたショックからなのか食事に手を付ける気にはなれなかった。



「おや?ロイワはもう疲労困憊なのかい?そんな調子じゃ僕には一生勝てないよ?」


「まあ、そんな感じかな……」


「…………もう動けないのか?」


「うん……はしゃぎ過ぎて疲れちゃった。でも、十分楽しめたし私は満足かな……」


後、普段やらないような絡み方したのも原因かな……


そうだ、大型休みになったからって張り切って一切休まずに作業に没頭したのもあるかもね……それが今になって疲れになって出たのかも……


「ふん、この程度で満足するなんて君は随分と浅いんだね。羨ましいよ。僕は全然楽しめなかったし、こんな場所で楽しめる程子どもじゃないからね」


…………






「そっか。じゃ、私帰るね」





「……何?」


「だって、私が疲れた時点で勝負は決まったようなものじゃん?私達は勝負の為に此処に来た訳だし、よく考えたら勝負が決まった時点でこれ以上一緒にいる意味無いもんね。マリー、ゴーくん、シーくん、帰るよ。その蝶々そこに置いてってね」


「まっ、待て!!まだ「そうそう、施設のお金だったら後でこっちに請求書送ってくれれば私が支払うから、じゃあね」


私はレストに背を向けると、3人を引き連れて施設から素早く退場した。








(はぁ……疲れたぁ……)


あの後、私は何とか自宅まで帰ると、素早く魔力補給をする為に大ぶりの魔石を口に放り込むとベッドの上に転がった。


ゴーくんとシーくんはくたびれた私にジュースやお菓子を差し出し、心配そうにベッドの周りを歩き回っている。


(最後、レストに『もう来ないでね』くらい言っとけば良かったかな……あのまま別れたら『納得いかない』とか言ってまた話しかけて来そうだし……)


それにしても、あんなに散々遊んだにも関わらず『楽しくなかった』って……楽しかったのは私だけだったかぁ……


(友達になれるかも、なんて考えてた私が馬鹿みたいじゃん……)


付き添いで来ていたマリーはレストに対して「あの態度は頂けない」と、嫌悪を露わにしていたし……やっぱり、ダンデと一緒に来なくて正解だったな。



ガチャ……



「ロイワ様、お休み中に失礼します」


「あっ、マリー。どうしたの?」


私は口から魔石を出しながら、マリーがやって来た出入り口に顔を向けた。


「あれ?ロイワ様、もう疲労の方は大丈夫なのですか?」


「うん、魔石舐めながらベッドの上でゴロゴロしてたら元気になった」


「帰宅してからまだ数分しか経過してませんよ。あまり無理をなさらないよう……実は、レストの執事が玄関前に……どうやら謝罪をしに来たご様子です」


「えっ?執事が謝罪を?」


色々と気になった私は、とりあえずレストの執事に会ってみる事にした。





「ロイワ様、わざわざご足労いただきありがとうございます」


(そんな歩いてないよ……)


応接間に移動するとそこには、直立したまま私に頭を下げまくるユニ執事の姿があった。


「レスト様の世話係のユニでございます。本日は、レスト様の非礼を詫びに来ました……」


「……謝りに来たんですか?」


「はい、折角ご友人との遊戯に水を差す真似はしたくないと、施設内ではレスト様からだいぶ距離を置いて時折レスト様の様子を見に行ってましたが……


どうやら食事の時、私が席を外した際にレスト様がロイワ様への心無い一言を放っていたようで……あのような事が無いよう、常にレスト様の側に居るべきだったと後悔しております……


ロイワ様、誠に申し訳ございませんでした」


ユニはそう告げると、私達に向かって深々と頭を下げた。


「……ユニさん。お言葉ですが、一言失礼します。何故張本人をこの場に連れて来なかったのですか?謝るべきは貴方では無くレスト様では無いのですか?」


怒気を含んだ言葉がユニの頭に降り掛かる。

そんな怒り気味のマリーに対してユニは、頭を上げる事無く次のように告げる。


「申し訳ございません。私も分かってはいるのですが、今レスト様はとても外に出れる状態では無くて……本当に申し訳ございません……」


外に出れない、ねぇ……


「ひょっとしてまだ怒っているんですか?」


「いえ、レスト様は怒っておりません!その逆でございます……!」


「逆?」


「はい。実は、レスト様……





今まで見た事無い程に落ち込んでしまって……」




「……えっ?」


「私もこのような事態は初めてで……レスト様は『何故気分が優れないのか分からないと』仰っておりました……」


「もしかして、私との勝負が楽しくなさ過ぎて落ち込んで……?」


「とんでもない!寧ろレスト様は今までに見た事無い程に楽しそうな顔をしていました!

あんなレスト様を見たのは今日が初めてでございます!!」


「えぇ……?」


あのレストが、私との勝負を楽しんでたって……?

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