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98話 レストと勝負

レストと共に歩いて移動し、物凄く大きなアミューズメント施設『ブルーコンドル』へとやって来た。


「すごーい!此処って新しく出来たお店だよね!?」


施設内にはピカピカの真新しい遊具が沢山並んでおり、ただ眺めているだけでワクワクしてきた。


「当たり前だ。君と公正な勝負をする為に最新設備が整った場所を選んだんだ。これで君が不正を働くような真似は出来ない、観念するんだね」


「凄いなぁ……!私の為にわざわざこんな高そうな所を貸切にするなんて……!!レスト、本当にありがとう!!」


「どこまでも能天気な奴だな……」


「いやぁ、それ程でも……さて、早速勝負しよっか!どれから始める?」


「今のをどう聞き間違えたら褒め言葉に聞こえるんだ……?とりあえず、小手調に『ウッドパンチ』で力比べだ」


「オッケー!」



『ウッドパンチ』とは、木の模型の中央にある的を殴る事で力を測定する装置である。(パンチの威力によって木の反応が変わり、主に50個実っている木の実の落ちた数で競う。



「まずは僕から行くよ。はあっ!!」



ドンッ!!



ドサドサドサ!!



レストが放った鉄拳は的のど真ん中に命中、木が物凄く揺れて木の実が地面にバラバラと落下した。落下した木の実は26個、中々良い結果だ。


「フッ、こんな所か。さあ、次は君の番だよ」


「分かった!」



(最初から私に有利なゲームが来るとはね……!)



実は私、このゲームを分解して遊んだ事があるから攻略法、もとい裏技を既に知ってるんだよね。確か的の下辺りを……よし、行くよ!!



「はあっ!!」



私は的の下ギリギリを狙って水平にチョップを放った。



バキィ!!



ズドーン!!



木が派手な音と共に真っ二つに割れた。土台を失った木は、木の実ごと後方に倒れ込んだ。



「木が折れた!?おい!この装置に一体何をしたんだ!!」


「大丈夫、これも仕様だからすぐ復活するよ!いやぁ〜前にこの『ウッドパンチ』を解体したから色々と知ってるんだよね〜!因みに、的のど真ん中を静かに突くと『スコン』って矢が刺さるような音が鳴るだけで木が全く揺れないんだよ」


「装置を分解して調べただと!?卑怯だぞ!!正々堂々と力のみで勝負しろ!!」


「頑張って仕組みを理解しただけで別に卑怯な事はしてないもんね〜!って訳で、この勝負は私の勝ちだね!」


「話を聞け!僕はこんな勝利は認めないぞ!!」


「しょうがないなぁ〜……ふんっ!!」



バキィ!!



私はレストを納得させる為、復活したウッドパンチの的のど真ん中に向かって拳を叩きつけた。



ドシーン!!



私の拳をモロに食らった木は再び真っ二つになって倒れた。


「なっ……!?」


「技術って力が必要な場面も結構あるからね!力には自信があるよ!」


「……赤エルフは他の種族と比べて力が強いし、勝つのは当たり前だろうね」


文句言わずにすんなり認めればいいのに、一々余計な事ばかり言うなぁ〜。1番になりたい気持ちは分かるけどさぁ……


「よし!じゃあ次は……あっ!見てあれ!次はカーレースで勝負しようよ!」


私は下の階にある大きなカート場を見つけると、下を指差しながらレストを見つめた。


「僕に乗り物で勝負しようとするなんて、随分と命知らずだね。いいよ、軽く捻ってあげるよ」


フッフッフッ……私はね、ゴーくんの為に自作のカートを作ったり、許可を貰って尞にある自室の庭にサーキット場まで作って遊んだりしていたんだよ!!


(今回の勝負も私が貰った!!)


私は満面の笑みを浮かべながら意気揚々とカートに乗り込み、ハンドルを握り締めた。だが……



「よーい……スタート!!」



ギュルルルルルル!!ドンッ!!



「うわーっ!?!?」


スタートした途端、私が乗るカートが真横に曲がりレース場の壁に思い切りぶつかってしまった。


どうやら想像以上にカートのハンドルの効きが良すぎたようだ。


「無理無理無理無理!このカートの操作めちゃくちゃ難しいんだけど!?」


ガコンガコンと左右に揺れるカートを何とか操作しながら進むが、その間にレストはどんどん先に進んでいく。もはや勝負にすらなっていなかった。何で慣れてるはずなのにこんなに操作に苦戦するんだ……



(あっ、そうか!私が作ったカートは操作しやすいよう様々な改造を施していたから楽に操作出来たんだ!!)



残念ながら私は何もいじられていないごく普通のカートには慣れていなかったようだ……



「改造させて!このカート改造させて!」



結局一対一のレースは私がビリとなり、カート勝負は私の負け。これで一勝一敗となり勝負は振り出しに戻った。


「当たり前だね。今回は小細工は無用の真剣勝負だったんだ、僕が勝つのは当然さ」


「す……」


「ん?先程の勝負に不満でもあるのかい?残念だけど……」



「すごーい!あんな操作が難しいカートをすいすいと動かせるなんてレストって凄いんだね!どうやって運転したの?」



「えっ……?」


「実はさぁ、私って一切改良されてない乗り物に乗る機会が中々無いんだよね。自分で乗りやすいように改造しちゃうからさ。多分それが原因で操作の腕が上がりづらいんだと思うんだよねぇ〜、その点レストは凄いよね!運転技術が高いのって憧れちゃうなぁ〜!!」


「何なんだ!?今更僕を褒めたって何も……!」


「えっ?だって凄いじゃん、あんな華麗なハンドル捌きでカーブを綺麗に曲がりまくる所とか最高だったよ?ねえ、折角だし勝負抜きでもう一回カーレースしようよ!」


「…………」


「お願い!私、もう一度レストが運転してる所を見たいなぁ〜」


「……勝負が終わった後、嫌になるまで僕の運転技術を見せつけてあげるよ」


「ホント!?やったぁ〜!勝負が終わったら絶対にやろうね!約束だからね!」


「本当に調子狂うなぁ……ほら、次の勝負を決めに行くよ」


「分かった!次は何にしよっかなぁ〜」


私は次の勝負の内容をあれこれ考えながら、私に背を向けて歩き始めたレストの後をゆっくり追いかけた。





(僕に負けたのに、何でロイワはあんなに嬉しそうなんだ……?)


『打倒ロイワ』の目標を掲げて勝負を挑んだ筈のレストだったが、ロイワは嫌がる素振りはせず、想定外の反応ばかり見せてくる。


レストはそんなロイワの反応に戸惑うのと同時に、少しずつだが心が揺らぎ始めていた。

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