97話 レストとお遊び
ついに待ちに待った長期休暇が始まった。
とりあえず私は、ロイヤルタウンにある高層マンション(ダンデが購入した)の最上階に帰宅し、真っ先に新しい魔導具の製作に取り掛かる事にした。
(今取り掛かりたいのは精霊石の技術の拡張……!)
知識を共有出来る技術を上手く使えば、自身の脳内に地図を転写したり、例え使用者が素人だろうが簡単に高度な魔法を使用可能になるだろう。
例えば緊急事態の際、咄嗟に避難経路を導き出して脳内に送り込んだり、一時的に防衛魔法を使用可能にして自身の身を守る等々……もし全員がこの技術を使用可能になれば、命の危機を容易く回避出来るようになる筈だ。
だが、確実にこの技術を悪用する輩も出てくるだろう。悪用されないよう何か手を打っておかないと……そしていずれは精霊石無しでこの技術を使用可能に出来たらいいな。
だが、この魔導具の製作に本格的に取り組む前に1つだけやっておかないといけない事がある。
そう、レストとの交流だ。
「と、言う訳で……これから外に遊びに行ってきます!」
「ロイワ、折角だから吾輩も一緒に遊びに行きたいのだが……」
「申し訳無いけど……ダンデがコレに関わったら事態がややこしい事になりそうだから、今回は大人しくお留守番しててね。まだ長期休暇は始まったばかりだし、今度一緒に遊びに行こうね!」
「うむ……分かった……」
こうして私は、ゴーくんとシーくん、私の保護者としてダンデの眷属である吸血族のマリーを連れ、屋上からバイクを使用してロイヤル駅前へと飛び立ったのだった。(子ども1人だけで街中をうろつくのは危ないからね)
「目的地に到着!」
高層マンションが街の中心部にあった事もあり、あっという間にロイヤル駅前にたどり着いた。
「少し早く来過ぎたかな?」
立体駐車場にバイクを止め、ロイヤル駅前へ徒歩でやって来たのだが、まだ早朝なので駅前は大量のサラリーマンでごった返していた。
駅前に駐車している移動型店舗の雑貨屋の前にはサラリーマンの行列が出来ている。
「新聞を更新するサラリーマン、コーヒーを飲みながらラジオを聴くサラリーマン……まさに朝って感じがするなぁ……」
「ロイワ様。まだ時間も十分にある事ですし、折角ですから最近新しく出来たコンビニに行きませんか?」
そう言えば最近コンビニが立ち上がって、ロイヤルタウンでは密かにブームになりだしたんだよね。
最低限のものは何でも揃う上に1日中運営しているから超便利だ。
「いや、今の時間帯はどのコンビニも混んでると思……ん?」
マリーと会話をしていると、駅前の銅像の前に見覚えのある人物を発見した。
(あれ?あそこにいるのってレスト?)
そこには執事と思しき犬族の老人と、今時のファッションに身を包んだレストの姿があった。どうやら2人は言い争い……いや、会話をしているようだ。
まだ予定時刻までかなり時間はある筈だけど……来るの早くない?私が言えた事じゃ無いけど。
(まあ、別にいっか!時間は少し早いけど声掛けちゃお!)
私はマリーとゴーくんとシーくんを連れ、急いでレストの元へと駆け寄った。
「まさかレスト様に御友人が出来るとは……!」
「だから違うと言ってるだろ!アイツはそんな奴じゃ無くて……」
レストと老人の2人は私が急接近しても全く気付く様子が無い。
「レスト、おはよう!」
「ようやく来たか……ふん、逃げずに此処に来た事だけは褒めてあげるよ。ロイワ、僕に惨めに惨敗しに来「おお、貴方様がロイワ様ですか!初めまして、私はレスト様の執事、『ユニ』で御座います」
相変わらず毒を吐くレストを遮り、礼儀正しい執事の人がご挨拶をしてきた。
「本日はレスト様を遊戯に誘って下さり誠にありがとうございます。実は、レスト様はからロイワ様との遊戯が楽しみだったようで、前日からそわそわして……」
「こら!余計な事を言うな!!」
「へぇ〜、私と遊ぶの楽しみだったんだ〜」
「能天気な奴だ……僕に背を向けて逃げる姿を晒すお前を見に来ただけさ、今日でようやく下らない相手との勝負に決着を付けられると思うと清々するよ」
「そっかそっか〜!レストはそんなに私と遊びたかったんだね〜!私も嬉しいよ!」
「違うと言ってるだろ!下らない事言ってないで早く行くぞ!!」
「はーい!でも、今から行ってもこんな早朝じゃどの施設も準備中じゃないの?」
「僕がそんな失態をおかすと思ったのか?ロイワと勝負する施設は既に確保し、貸切にした。君と違って僕は用意周到なんだ」
「えっ!私の為に場所取りしてくれたの!?ありがとう!!」
「違う!お前の為じゃない!さっきから何なんだ一体……!下らない事を言ってないでさっさと行くぞ!」
「はーい!」
フフフ……今日の私は一味違うよ……!
平和な学校生活を送る為にも、レストにどんなに暴言を吐かれようが全力で相手をすると決めたんだから!
呆れられるまでぐいぐい行くからね!




