夢の残りを思い出せ
より頻度が落ちてます……
油断していたら実習が始まってしまった……
次に見た景色はまた何もない部屋だった。
間取りが違うから前とは違う部屋なのはわかるけれど、手掛かりがないのでここがどこなのかイマイチわからない。
さっきまでの部屋は見張りがいたが、今度は人っ子ひとりいない。物音ひとつ聞こえない。
俺だけ縛られて放置。
……うう、腰が痛い。
この部屋に無造作に落とされたせいだな。俺、モノじゃなくて人間なんだけど。
ああ、真人教徒サマにとっては超科学力使えない俺は人間どころかゴミくず以下ですかそうですか。
とりあえずやることもやれることもないし寝よう__。
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「随分やさぐれてるねー、翔弥クン?」
「あといい加減超科学力使えない使えない言うのやめな?」
聞き覚えのある声がして、俺は反射的に立ち上がって周囲を見回す。
……見回す?
「あ、これ言うなれば夢だから」
「別の言い方すると無意識の世界ってヤツ?」
目に入った(って言ってもこれ夢か……)のは、黒ずくめの男と黒猫。
黒猫はぽんっと音を立てて、真意の読めない笑顔の男の子に変身した。
……ご無沙汰してます、でいいのかこれ?
「まあ合ってるんじゃない? 久しぶりなのは事実だし」
「カイはともかく、俺はずっと一緒にいたんだけどなあ……ま、顔合わせてなかったのはホントだもんな」
うーん、言ってることがよくわからない部分もあるけど。こいつらは前に会った(って言っていいのか?)黒ずくめとカイで間違いなさそうだ。
それにしても唐突だな。今回は何の御用で?
「ほら前に言ってた『次』だよ」
「だいぶ遅くなっちゃって申し訳ないね、でも今が一番よさそうだから」
なるほどね、あのとき__昔のことを思い出したときか。
……ていうかさっきから俺、一切口動かしてないよな。
まあでもこれ夢だしなあ、ってええいややこしい。
夢といえど普通考えてることと口に出すことって別になるもんじゃないか?
「あーうん、面倒だからこの人に頼んで君の考え勝手に読ませてもらってる」
カイが黒ずくめを見ながら言う。
そういう黒ずくめは……わかってそうだな。俺の方見ながらうっすら笑ってるし。
なんとなく面白くなくて、俺はそっぽを向く。
ふ、と黒ずくめが笑い、口を開く。
「そういえば、君の『罪』は思い出せたかい?」
……いきなり何のことだ?
「主さーん、やっぱりあれだけじゃ無理だったみたいだねー……」
「まあ、そこは最初から期待してないから」
もしもし、俺を置いて話進めないでもらえます?
「ああごめんごめん、こっちの話。じゃあ今回はそっちでいこうか」
「そうだねー。これでうまくいけば、もうこっちから呼びに行くことはないよー」
だから意味がわかんないんだけど。ちゃんと説明、
「ごめん、そこまでの時間はないんだ」
「現実世界の方に誰か来てるみたいだしー」
「続きは現実世界で。前は無視してたみたいだけど、きちんと考えれば思い出せるはずだ」
「ということで頑張ってね翔弥クン~」
二人(どっちも人外だけど)の声とともに、俺の意識は遠くなる。
夢の中なのに意識が遠のくってどうなってるんだこれ___。
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目を覚ますと連れてこられた部屋だった。
……そりゃそうか、昼寝して変な夢見てただけだもんな。
体の鈍い痛みが「こっちが現実だ」と告げている。
……罪、罪か。悪いこととか後悔するようなことならごまんとしてるんだけどな……。
ぼんやり考えていると足を蹴られた。
どうも真人教徒のやつが来ていたらしい。一気に大量に入ってきたので、そのうちの一人の足が俺の足に当たったみたいだ。
ぎゃーぎゃー騒いでいるが、騒いでいる人数が多すぎて何を言っているかわからない。
ああもううるさい。くそ、俺に超科学力があればこいつら黙らせられるのに__。
ブミャー、と猫が怒ったような声がした。
少し目を動かすと、窓の外に毛を逆立てた黒猫がいるのが見えた。……多分あれカイだ。
カイは俺に目を合わせると、もう一度全力で威嚇してきた。
なんで俺そんなに怒られないといけないわけ。
ああ、「超科学力ない前提で話するな」って?
はいはいそうですね、確かに俺超科学力ありましたね使えないから意味ないけど。
……超科学力、ねえ。
周りはうるさいが、カイににらまれて頭が冷えた。
ずきずき痛む頭を押さえ……あ、縛られてて無理だった……我慢しながら、昔に思いをはせる。
俺、超科学力の制御昔っからできなかったんだっけ?
制御もなにも、いつも勝手に発動してたような。回復はなんかそんな気もするけど……。
『__俺の超科学力は増幅じゃなかったか?』
頭の中で声が響く。
確かにへんじ__佐野先生と愉快な幼馴染たちにはそう言われたっけ。
ん、そもそも増幅と回復って全然別物じゃ。
『おいおい、その二つの本質は一緒だろ?』
え?
『回復を『生命力の増幅』と考えればつじつまは合う』
あ、そうか確かに。
じゃあ回復の超科学力がうまく働かなくなったあたりに何かあったって思えばいいのか。
確か傷が治るのが遅くなったのは。
『カイを助けたあのときだな』
頭の中の声とほぼ同時に、カイがそっぽを向く。
……ジト目でにらまれてるように感じるのは俺の気のせいか?
周囲の連中はまだうるさく騒いでいる。
『あれより後に、超科学力関連で何かあった覚えはないか?』
え? 超科学養成学校に入れられて科学の勉強が自由にできなくなったくらいだけど。
『違うそれより前。ああもう、これだから思い込みの強い奴は……』
泣きそうにも感じられる声。
俺は慌てて入学前の出来事を遡って思い出す。
__瞬間、周囲のものがすべて吹き飛ぶ映像がフラッシュバックする。
慌てて記憶の糸を手繰り寄せる。
この間真人教徒に襲われたときのやつ? ……違う、これ駅じゃない。
しかも見えてる自分の服が黒い……制服。
この制服は……中学のときのやつか。中学時代になんかあったっけ……?
『思い込み……自己暗示が強いと本当に苦労するね』
ため息混じりの声が聞こえる。……いや、実際聞こえてるわけではないんだけど。
周りの騒がしさが増した。バタバタと何かの用意をしているようだ。
連中の超科学力の色もだんだん濃くなってきて、見た目も本当に騒がしい。
……その極彩色が記憶の奥底を刺激する。
こんな光景、前にも見たことがあるような……。
『やれやれ……いつまで甘えてるのさ。もう俺の存在はいらないはずだろ?』
頭の中の声が呆れたように言う。そういえばこいつ誰だ?
夢の中の黒ずくめの声? うんそれで間違ってはないんだけど、もう一歩なにか__
すごく聞き覚えがあるっていうか、いつも聞いてたような気がするのはなんでなんだろう?
「あ」
そこまで考えて思わず声を漏らす。
それとほぼ同時に、部屋のドアが吹き飛ぶ。
ごちゃごちゃになっていたパズルのピースがかちっとはまった気がした。……うん、確かにこいつは「罪」だ。
ありがとう黒ずくめ。
確かに二度と会うことはなさそうだな。
だってお前、
……俺が目を背けてた記憶だろ?
何それそのファンタジー、ってな感じだけど俺ならそういうこともあり得るからなあ。
お前の言う通りものすごく思い込み強いし。
お前の声俺のとそっくりだし。
だから。
__もう二度と会わなくて済むことを祈ろうぜ。
俺はもう目を背けない。
逆光の中に立つ5つの人影を見ながら、俺は心の中で強く誓った。
説明不足感が否めない。
次回更新回で補足します。




