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落ちこぼれ能力者に平穏は訪れない  作者: 戸野牧こと
6.不穏な空気は着実に
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日常が戻って……来た?

 あくる日学校で。



 いつだかロッカーに貼られていたいかにも怪しげな札を眺めていると、悟とあーちゃんがやってきた。



「おー思ったより普通だ」

「事情聴取どうだった?」

「部外者は呑気でいいな……」



 二人は同期の真人教信者(嫌がらせの犯人)を返り討ちにするのには手伝ってもらったが、路地での襲撃の件には一切関わっていない。よって警察や管理局による事情聴取も受けていない。当然元気な二人に向かってため息をつく。



「なんで今さらそんなもの見てるの? 結構前に貼られてたやつじゃなかったっけ」

「あー、これどう処分しようかと思って」



 眉をひそめるあーちゃんに向けて、持っていた札をひらひらと振ってみせる。



「供養いるかと思って取ってたけど、真人教(あんなとこ)のやつなら必要ないかなーと」

「おーおー、破り捨てちまえ」

「翔弥って妙なとこ律儀だよね……」



 煽る悟と呆れ顔のあーちゃんを横目に、ではさっそく、と札(紙)に手をかけると。



「破るよりは燃した方がいい。捨ててあるところ見られたら大変だ」

「あ、古谷」



 急に別方向から声が降ってきた。

 前述の通り古谷だった。何やら難しい顔をしている。



「最近構ってなくて申し訳ない」

「いやむしろその方がありがたいんだけど」

「全部片付いたらまた構いに来る」

「いや構ってもらわなくていいんだけど」

「……ってコウ? 片付いたらって何が?」

「天彦には関係ない」

「翔弥には関係あるのに?」

「……そうそう山崎。あの根付、肌身離さず持っとけよ」

「はあ? 一体何言って、」

「必ず役に立つから」

「え、こっちは無視なの? っておいコウ!」



 首をかしげる俺に向かって訳のわからないことをわざわざ念押しし、古谷は去って行った。

 根付? そういえばもらったこともあったかなくらいの認識だったな。存在すっかり忘れてたからずーっと筆箱に入ってるけど、それでいいんだろうか。



「何だったんだあれ」

「俺にはわからん。あーちゃんわかるか?」

「いやさっぱり」



 意味深なことを色々吐いていったが、悟とあーちゃんにもわからないんじゃ俺には絶対わからないわ。



「あーでも」

「え、なに?」

「翔弥食いつきすぎ。んーとね、多分なんか隠してるよアイツ」

「あーちゃん、なんでわかんのそんなこと」

「長い付き合いだから」



 不本意だけど、と付け足すあーちゃんは本当に面倒そうな顔をしている。

 そんな話をしているうちに昼食を食べ終えた。ゴミ捨てるか。札……はやめとこう、さっき古谷にも念押しされたし。あとで燃やそう。

 ゴミを捨てようと席を立った瞬間。



「しょーおやっ」

「うおっ」



 後ろから思い切り突き飛ばされた。柚木さんやりすぎ、というあーちゃんの呆れたような声が聞こえる。あとちょっとで転ぶところだったじゃないかやめろ。

 体勢を整えてから柚木をにらみつける。



 おーこわ、と言いながら全く怖そうじゃない柚木のことは無視して、ゴミ箱の方に移動する。途中で飛んできたゴミ(明らかに俺の後頭部を狙っていた)も受け止め、当初の目的を完遂した。……まあ、結果としては普通にゴミ捨てただけなんだけど。



「そういえば、大分前に言ってた効果範囲のじ、」



 俺が戻るなり話し始めた柚木の言葉が不自然に途切れたのは、俺がにらんで黙らせたからである。

 柚木が空気の読めるヤツで助かった。

 俺が荷物(貴重品)をまとめて教室を出ると、柚木を始めとする3人もついてきた。

 ここまで空気読めるんならもう俺何も言わなくていいんじゃないか。



「で?」



 外のベンチで一息ついたところで飛んできたのは必要事項を極力削ぎ落とした質問(当然俺を全力で睨んでいる柚木から)。どうにか質問として成立してるの、相手が俺だからなの忘れるなよ。



あの変人(せんせい)の話によるとだいたい半径2mくらい」



 まあ色々やられた体感的にもそんなもんだった。

 効果範囲が存在するなんてゲームみたいだと思ったのは覚えている。

 ……先生に言ってみたら「ゲーム」という単語が通じなかったのはまた別の話。



「あとやっぱり回復じゃなかったらしい」

「え、じゃあなんだったの?」

超科学力(ちから)が俺の体に今まで及ぼした影響を分析すればわかるって言われた」



 次行くときまでの課題らしい。クイズみたいで面白そうじゃん、ってあーちゃんは言ってるけど、俺はこれ補講が1科目増えたみたいで本当に嫌だ。なんだって好きでもないことに時間と頭を使わないといけないんだ。あと悟、残念ながら正解言い当てても商品とかご褒美とかはないらしいから。



「ちなみに実験って具体的になにやったの?」

「人体実験」

「え」

「あの変人、そこまで鬼畜だったのか」



 この三人に詳しく説明する気はないけど、俺に向けて超科学力(ちから)をぶっ放したり、その他飛び道具で思い切り攻撃したりしてたから立派な人体実験だと思う。

 一応は全部必要なことだったとはいえ、公表したら非難されるレベルだよなあれ。

 もう少し穏便なやり方なかったのかなあ……。



「で、次の呼び出しいつ?」

「明日」



 答えたとたん、柚木が非常にいい笑顔になった。あ、これダメなヤツ。



「じゃあ明日の夕方、いつものファミレスで」

「……おう」



 ()()()()ってことは……拓とハカセ(あの二人)ももれなくついてくるってことか、気が重い……。



「柚木さーん?」

「いくら翔弥相手とはいえ、今目の前にいる俺たち無視しないでほしいんだけど」



 もう悟りでも開くか、と俺が意識をどこかに飛ばしている間に、あーちゃんと悟が二人して柚木を小突いていた。仲良さそうでなによりだよ。



 そういえば、ここまでのごたごたのせいであの札まだ持ったままだった。

 うーん、別に俺は絡まれても適当に逃げるからいいんだけど、滅多に忠告とかしない古谷からの忠告だしなー。柚木はともかく悟とかあーちゃんに迷惑かかるのは申し訳ないから、ここはアドバイス通り燃やしておくか。



 ポケットからライターを取り出して火をつける。

 札に点火する寸前で水を用意していなかったことを思い出し、慌てて火を消す。

 急に静かになったので顔を上げると、三人がこちらを凝視していた。



「なにその箱」

「ライター。え、知らない?」

「知らないよそんなもの」



 ……あ、そうか。超科学能力者はライターなくても火がつけられるからいいのか。

 柚木は「翔弥、タバコ吸ってたっけ?」と聞いてきた。ライターに関する認識はそんなに間違ってないけど俺は別に吸わない。

 面白いから「これ使うと誰でも炎能力を使えるようになるんだよ」とからかってみることにした。

 ……え、信じた。いやいや嘘だからね?

 ほら柚木も呆れてる。これただの科学技術の結晶だから。……いや、そんな科学の粋を集めた感じではないけどさ。




 はあ、とため息をつき、さっさと火をつけて札を燃やしてしまう。

 水を用意できる状況ではなかったので、その辺のむき出しになった土の上で燃やした。当然そのあと埋めておいた。

 まさかこれ燃やしたことによって真人教の信者に連絡的な何かが行く、とかはないよな。

 どうも不安げな顔になっていたらしく、悟に「心配することないだろ、翔弥らしくもない」と言われてしまった。能天気な悟に言われるとか相当だったんだな。






 荷物を置いておいた教室に戻ると、なくなった物はなかったがカバンの周りがあの怪しげな(でも安っぽい)札だらけになっていた。



「もう勘弁してくれ」



 反射的にライターで火をつけそうになり、柚木、あーちゃんに止められる。

 ……今日の帰りは久しぶりに本屋に行こう。こういうときは無心で科学の勉強をするに限る。


思いきり説明回になってしまいました。

ストーリー展開上手くなりたい。練習します。

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