容疑者確保その1
お久しぶりです。
色々一旦落ち着いたので投稿です。
休んでいた2週間分は明日以降に投稿します。
「はい確保~」
「楽しそうだな柚木」
嬉々として、という表現がぴったりな顔で人を捕まえた柚木を見ながら、俺はこめかみを押さえる。そろそろこの辺が痛んでくるはず……はあ。
録画開始の通知を見てすぐ俺はロッカールームに向かった……が、柚木以下3人もついてきてしまった。現場に急いで向かいたかったので廊下で振り切ろうとするも叶わず。結局自分一人で向かうのの倍くらいの時間がかかってしまった。
この状況でイタズラしてるやつを現行犯で捕まえられたのは奇跡に近い。
さて。
頭痛が治まったところで、俺は柚木に捕まっている容疑者に目を戻した。
「……俺のロッカーで一体なにしてんの? 古谷」
「……」
古谷は何も答えない。その表情から、見つかるとは想像もしていなかったことがわかる。
そりゃそうか、こいつ超科学能力者だし。小型カメラの存在なんか知りもしないはずだ(後日同じことを拓やハカセに言ったら「能力者じゃなくても盗撮なんて想像しない」と怒られた)。
「まー悪いことしてたんじゃなさそうだから見逃してもよかったんだけどな」
「え、翔弥何言ってんの」
「てっきりイタズラ犯がこのコウだから飛んできたんだと思ったんだけど」
「あーちゃん辛辣すぎ」
ごちゃごちゃほざいている三人は放っておくことにして、俺はまだ一言も発していない古谷に向き直る。
「今回俺がここに来たのは協力してもらいたいからだよ、古谷」
「え?」
おー驚いてる。そういえばこの古谷が驚いてる顔初めて見た。
珍しいもの見れたばっかりでちょっと勿体ないけど、さっさと説明すませよう。
「簡単に言うと、俺のロッカーを放っておいてほしいんだ」
「でもそうすると山崎が、」
何故か慌てる古谷の言葉を指を振って遮る。
「根元を絶たないと終わらないんだよ、こういうの。雑草も根元から抜かないとまた生えてくるだろ?」
「除草剤を撒けばいい」
「いやそうじゃなくて……」
予想の斜め上の返答に頭を抱える。
ああもう面倒だ。
「んじゃ例えとかオブラートとか抜きで単刀直入に言うぞ。俺は俺のロッカーに妙なもの仕掛けてる犯人を現行犯で捕まえたい」
「……?」
何を言っているのかわからない、という顔をされた。こいつ学年1、2を争う秀才のはずだよな?
「もっと言うと、お前がやってたことは俺から見たら大事な犯人に繋がる証拠の隠滅でしかない。お前はよかれと思ってやってたのかもしんないけど」
それとも、と一旦言葉を切って古谷を睨み付ける。
「もしかしてお前も犯人の仲間だとか?」
「違う! 絶対違う!」
古谷が目に見えて竦み上がる。よく絡まれるせいで鍛えられた俺の眼光なめるなよ。
……あ、悟とあーちゃんも引いてる。ちょっとやりすぎたか。そういえば久しぶりに本気で人睨んだ気がするな。
「いや、俺も本気でそうだとは思ってないよ」
言いつつ力を抜くと、全員がほっと息をついたのがわかった。そんなに怖かったのかごめん。
「というわけで、今後一切俺のロッカーには触れないでくれると助かる」
今度やったらそのときはただじゃ済まさない、と笑顔で言ってやると古谷は真っ青な顔でこくこくうなずいた。
それにしても女子(柚木)に羽交締めにされてる古谷ってなんか面白い。
でも俺自分のことヤクザっぽいなとか一瞬思ったけど、未だに拘束を解かない柚木もひどいな。
「柚木もういいよ離しても」
「やだ」
……そんなに珍しいことでもないが、柚木の聞き分けが悪いな。
「ん、じゃあいいや。気が済むまで捕まえといて」
「「「はあ!?」」」
「ちょっ、待っ、翔! 何考えてるんだよ!」
「そうだよ、柚木さん今ヤバい目してるから放っておいたら危ないって!」
予想以上の音量で騒ぎ始めた3人に思わずため息が漏れそうになる。
……柚木の目がヤバいのは俺もわかってるよ、何年の付き合いだと思ってるんだ。
……というか、この目してるときはもう何言っても聞かないってことも経験上わかってるんだよ。ああ、また頭が……。
「あーちゃん、悟、そんなに気になるならどうにかしておいてくれる? 俺ちょっとやることあるから」
俺は逃げる、と声には出さず伝えて出口に向かって歩き出す。悲痛な叫びは聞かないフリ。
……やることあるのは嘘じゃないしな。
次の目的地に足早に向かいつつ、俺は古谷の冥福を祈った。
絶対死なないけど、大変な目にあうのは間違いない。上手く切り抜けろよー。




