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落ちこぼれ能力者に平穏は訪れない  作者: 戸野牧こと
4.夢は記憶を繋ぎ合わせたものらしい
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悪夢は続くよどこまでも……?

今回、ここ数回よりは長めです。

内容の進みがカタツムリ並みなのは相変わらずですが……。

「……ちょっと状況が飲み込めないんですけど!?」



 俺が叫んだのも許してほしい。何せあの部屋でよくわからない光に包まれて、次に気づいたときはまた路地にいたんだから。見覚えのある景色だから同じ場所だろうな、多分。

 で、今回は最初から一人。しかもいきなり不審な集団に追いかけられてるから___




「気づいて早々いきなり全力ダッシュとか本当に勘弁してくれ!」



 思わずまた叫んだ声がいつもより高い気がして驚いた。小道に隠れて確認すると、やはりというべきか子供の手になっていた。道理で走ったときの進みも遅いわけだ。



「ていうかこれなんなんだ……」



 いつの間にかまた角材を握っている右手を見つめ、思わずため息をつく。

 走っても走っても変わらない景色の中を子供の姿で走る。こんな奇妙なことが現実で起こる訳はないことくらいはわかっているが。



 ……夢にしては既視感が強い。

 俺の夢はもっと荒唐無稽なものだったはず。テレビ見てたらその世界に入るとか、超科学力の存在しない世界だとか。

 どれも見たことのある素材を元にした、見たことのないものだった。



 なのに、今は。

 走っている路地の景色。

 手に持つ角材。

 素性のわからない集団に追われる光景も。

 全部どこかで見たことがある気がする。

 それもそれぞれ単独ではなく全部まとめて一度に見たのだ、と微かな引っ掛かりが主張する。


 でもこんなの夢以外ではあり得ないんだよなあ……。昔こんな夢見たことあったか?


『ああもう違うったら!』

『こら抑えろ、聞こえる』

『だって、僕に気づいたからもう色々わかったのかと思ったのに全然なんだもん』

『仕方ない、あの思い込みは筋金入りだから』

『それはわかってるけどさあ』

『それに、気づいていないとは言っても完全にハズレってわけじゃないぞ』



 どこからともなく声が聞こえる。この声は、黒ずくめと能面野郎?

 立ち止まっていたせいで、今回はあっという間に集団に追いつかれてしまった。

 あれこれ考える暇もなく、俺はまた謎の集団に袋だたきにされる。小さい体に扱えもしない角材1本で、こんな奴らに敵うわけがない。

 そしてまた遠のく意識。



 _________________


 次に覚醒したときには、


「なんで今度はいきなり路地裏(ここから)なんだよ!?」



 路地裏で集団に囲まれていた。ちょっとは休憩させてほしい。

 角材で何人かなぎ倒し、開いたすき間から逃げる。体が小さくなってる分小回りは効くんだよな、角材邪魔だけど。護身具これしかないからしょうがない。



(……うわ、行き止まり)


 逃げ込んだ先は行き止まり。

 囲まれたところでまた何人かを殴り、別の道に逃げる。



 ……で、その先も行き止まり。

 運が悪すぎる。

 夢だからこんなこともあるのか?

 でも夢なら都合よく逃げ切れると思うんだけどな。



『あーまだ言ってるよ』

『バカ、聞こえるって』

『いいよ聞こえても。そんなに支障出てないみたいだし』

『あー、うん……でもこれそのうちヒント出さないといけないかもな』

『あと何回したらにする?』

『……心が折れたら』

『……それ教えるつもりないでしょ?』

『これはあくまで自力で』

『たどり着かないと意味ないって? 聞きあきたよもう』

『……』

『まあ、今回はもうおしまいみたいだけど』



 ……あいつらまだ何か言ってる?

 混乱したまま逃げ続け、結局また囲まれる。当然またこてんぱんにやられる。



 がんっ、と額に拳とは違う衝撃を感じる。


 あ、持ってた角材取られたのか。

 急速に意識が薄れてゆく。




 ……あれ?

 俺、この感じ知ってるぞ?


 何かを思い出しかけたところで、俺の意識はまたぷつりと途切れた。


 ________________


 次に気づくとまた路地に立っていた。

 相変わらず体は子どものそれだが、今度はあの集団は追ってきていない。

 手を確認しても、特に何も持っていない。



「……あ、そうか」



 これ多分俺の記憶だ。ちょうどこんくらいのときの。

 今回はまだ始まってないけど、さっきまで何度も繰り返してた内容はそれとそっくりだ。

 ずっと忘れられなくて今まで何回も幼なじみの3人にも話してたのに、なんで思いつかなかったんだ?



 確かこの路地を歩いてる途中で急に変な集団に追いかけられて。原因なんだっけ、俺何もした覚えないけど。「見つけたぞ」とか「あいつだ」とか言われた気はするけど、はっきりとは思い出せない。

 その途中でハカセに鉢合わせ。成り行きで一緒に逃げる羽目に……。



「それホント?」



 急に背後から声がした。

 振り返るとそこにいたのは、



「……能面野郎」

「やだなあ、そんな名前じゃないのは知ってるでしょ?」



 能面のせいで表情は見えないが、こいつ絶対今笑ってる。

 面倒なのに絡まれたな。さて、どうやって逃げるか__。



「山崎クン」



 急に名前を呼ばれて身構える。



()()()()一緒に走ったのは僕だ、って言ったら信じる?」



 いきなり何を言い出すかと思えば。

 ……意味不明すぎる。




「意味わからないって顔してるね? (ヌシ)の許可も出たし、ちょっと説明しようか?」



 ふ、と笑った能面野郎をぼんやり見ながらあることに気づく。



 ……こいつの超科学力(ちから)が見えない。

 正確には生命力みたいなもん? 前に幼なじみたちに説明した「ぼんやりした光のようなもの」がこいつには見えない。

 俺から見える世界では(それ)が見えるのが当たり前。記憶だろうと夢だろうと、それがないなんてことはあり得ないのに。



 そこでさらに気づく。

 ……()()()()()()()()()()にあの光は見えてたか?



「お、ちょこっと思い出したかな?」



 能面野郎が楽しそうに言う。



「じゃあ、答え合わせその1と行きますか」



 能面野郎がゴロッと喉を鳴らした。


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