1話:依音はニートである
俺の名前は新田依音、ニートをやっている。
社会からはじき出され、一人孤独に部屋に閉じこもってPCと向き合うのが日常になってしまった。両親はすでに他界しており、身請け人になってくれた叔父も仕事都合でほとんど家にいない。このだだっ広い家の一室で今日も一人ネトゲをする。学校も行かず。友達もいない。昔は友達は大切だと思っていたが、今は友達と遊ぶ時間があるならネトゲをしたい。いや、友達ならいるじゃないか、ネトゲの中に。そんな生活が。ある日を境に一変した。
8時にセットしておいた目覚まし時計が反響しやすそうなベルの音を鳴らしている。朝が来たようだ。依音はあんまり朝に強いほうじゃないが、今日はすぐに目覚ましの音が止まった。ベッドに依音はいない、椅子に座ったままネトゲに没頭していたら朝が来てしまっていた。
「もう朝か、ネトゲしてると時がたつのは早いな。」
依音はPCの画面の右下に書いてある日付を見て、ふと何かを思い出した。
「しまった!今日NLOのライブの日じゃないか」
NLOとは「Near Link Online」の略で依音が熱中しているオンラインゲームの事である。そのゲームの運営が主催するゲーム内の音楽を使ったライブの日だったのだ。
「たしかライブが始まるのは19時...今から8時間寝れば16時になるな、ちょうどいい時間だ。よし決まり!寝よう」
そう独り言いながらジャージ姿でベッドに横たわろうとしてる時だった。依音の携帯からピコンという電子音とともに一通のメッセージが送られてきた。依音は寝る前に確認しておこうと、しぶしぶ携帯のロックを解除してメッセージを開いた。
「なになに...(この世界の生き方を間違えたなと思っていませんか?)...なんだこれは。いたずらか?くそが、こんな生活をしていて間違ってないわけがないだろうが!!」
つい依音は携帯に向けて大声を出してしまった。自分でもこの生活はダメなことなんだと気づいてはいた。一度は真っ当な生活に戻ろうと試みたこともあったが、失敗していた。メッセージにはまだ続きがあった。
「(もし、間違えたと思っているならば、やり直したいと思っているならば、違う生き方を授けてあげます...なんだこれ、いたずらにも限度というものがあるぞ。まぁでも、やり直せるならやり直したいね。」
その言葉に反応したかのように再び一通のメッセージが電子音とともに送られてきた。仕方なく依音はそれを開いた。
「今度はなんだ、また嫌がらせか?(では、お望み通り違う生き方を授けましょう。一緒に添付したファイルを開いてみてくださいね。では、ご武運を)...手の込んだいたずらだなぁこれ。どうせスパム系の何かだろう...」
最近の迷惑メッセージにはこういって違法なサイトへ誘導する手段も少なくない。依音は、どうせそんなものだろうと思っていた。しかし、少し考えた後、依音はそれを開いてしまった。心のどこかで違う生き方を期待していたのだ。開いた瞬間携帯の画面が真っ暗になり、突然睡魔が襲ってきた。
「なんだ...これ...は...」
そのまま依音はベッドに横たわって意識が落ちていった。
初めまして、今回が初投稿のしもつきひうです。いろいろなアニメなどを見てるうちに、自分でも書きたくなったのです。僕が大好きな異世界ものにするつもりです。
投稿ペースとしては週一までを目標にしてますが、多忙の時などは遅れる場合もあると思います。
次も読んでいってくれると嬉しいです。次回は転移します。