第一章‐9
「はは、それはとても嬉しい提案だけれども、ついさっき会ったばかりの俺を住まわせるなんて本当にいいのか、どんな人間かも分からないのに」
「何言ってやがる。コウの人となりはもう十分把握できたさ。人を見極めるのに長い時間は必要ない。向き合う距離が大切だ。食事をしている間、コウの言動、仕草を観察した。その結果嘘はついていないと判断し、悪意も全く見えなかった。人を助ける事は頻繁にあるが誰でも助けるわけじゃない。気に入ったから、救うべきだから、コウという人間が俺の心を動かし、助けさせた」
「俺が、助けさせた……」
ほんの短時間で救うべき人間なのだとスラッグに思わせた、と。可哀想だからというようにネガティブな意味で俺は今ここに居るのだと思っていたのが、実際は必要性があると思われての、ポジティブな意味だった。
「だが、何もせずに住まわせるとは言わない。ちゃんと働いてもらうからな」
「働かざる者食うべからず、ってわけか」
スラッグは今後の事を見据えて俺をここに連れてきて、必要な事を説明してくれた。俺のためを思い、そして自分の事も考えている。気後れしないように、俺が気兼ねなくこの家に身を置けるように役割を作ってくれようとしている。十分に働いたその報酬として食事と寝床を提供する、その図式をとても簡単に手にできるよう示してくれている。他に取る選択などありはしない。
「なんて素晴らしい提案だ。スラッグ、アテラ、これからよろしく頼むよ。君ら家族の荷物にならないよう同居人として不足のない生活を送って見せる」
胸を叩き、心に誓う。
「俺からも頼むぜ、これからコウには体を鍛えてもらわなきゃいけないんだからな」
「それはまさか、モンストラクターを狩るという仕事をするのかな」
「話が早くて助かるねぇ、その通り。ヘリオスではハンターを生業とする人間は多い。俺もハンターだ。とくれば我が家族であるコウもハンターになるのは自然だろう」
つい数時間前死にかけた俺によくもまぁ軽々しく言ってくれるものだと笑ってしまう。けれど納得する。郷に入っては郷に従え。とんでもない仕事なのは分かり切っているのに不思議と嫌でも怖くもない。むしろやりたいとさえ感じている。知識上の世界と違うこの環境に放り出された理由は分からず、その件に関してどうすることもできない今、ヘリオスの生活に慣れて暮らしていく事が最善だと思える。記憶がない事も関係しているかもしれない。過去に対して執着がない事に感謝する。……そして、家族として扱われた事はとても嬉しかった。アイデンティティは名前くらいしか覚えていない俺にとって家族は当然記憶にない。