第五章 14)塔の大改革案
「ところでどうなっているだい、今日の僕の予定は? 相変わらず客たちは順番待ちをしているのかな」
長口舌に疲れたのか、それとも頭痛が更に激しさを増したのか、プラーヌスは背凭れに深々ともたれる。
「ああ、うん、まだまだ順番待ちをしている客たちが大勢待機しているよ。でもその前にちょっとした重要な報告がある。この塔の改革案らしきものがまとまったんだ。それを報告しようと思っている」
私は何度か咳払いをしながら、プラーヌスが作り出していたペースから、自分のペースにへと持っていく。
今度は私が長い話しをする番だ。
「ほう、それは早く聞きたいね」
「実は君のさっきの話しにも関連するはずだ。街での買い出しの話題に。結論から言うと自給自足体制だよ。塔の周りを開墾して、自前で農作物を育てるのさ。その体制を作り出すことが出来れば、塔の余剰人員を働かせることも出来る。それにかなりの節約にもなる。この塔の主な出費は食費だからね」
「なるほど、王からの兵糧攻めにも対処出来るわけか」
「まあ、自給自足が出来るのは食料に関してだけだから、王と仲良くするのは必須だと思うけど。何より最大の利点は、常に新鮮な野菜や果物が簡単に手に入ることかな。ミリューやアバンドンが料理人として腕を奮うに最高の環境にもなるはずで、あの優秀な料理人二人も、更にここが気に入るはずだ」
「なるほど、二人を繋ぎ止めることも出来るね」
プラーヌスの反応は悪くなかった。いや、むしろかなりの好感触である。彼の表情が見る見るうちに輝き始めたのだ。
「実はこの改革案は、サンチーヌがまとめてくれたものなんだけど。サンチーヌっていうのは、アリューシアが連れてきた執事のリーダーさ」
「覚えている。優秀な男のようだね。あの二人の料理人ともども、この塔に残って欲しい人材だ」
「ああ、本当に優秀だよ」
彼の発案だということをしっかりとプラーヌスに伝えたおかなければいけないだろう。
別にサンチーヌの功績をフェアに伝えておきたいと思っているだけではなくて、実は私自身、それほどこのアイデアに乗り気ではないからかもしれない。
「でもサンチーヌも言っていたんだけど、このアイデアには当然のこと問題点もある。召使いたちがそのようなハードをやりたがるかどうかさ。今まで塔の掃除をしていた連中に、外で働いてもらうわけだからね。林を伐採して、田畑を開墾させる。かなり大変な仕事だよ」
私は召使いたちの反応が気になるのだ。それが合理的だからという理由で、突然、そのような新しい仕事を言いつけられても、彼らは納得出来るはずがない。
当然、反感を覚えるはずだ。
召使いたちの心情を考えると、彼らに同情せざるを得ない。
「いや、そんな心配など不必要だよ。召使いたちの衣食住を世話してやっているのは、この僕なんだ。僕の稼いだ金でこの塔を運営されている。彼らに反論など許されるはずがないじゃないか」
「プラーヌス、君はそう言うだろうと思っていたよ、でも」
このような改革を行えば塔は大混乱するだろう。この大混乱に対処しなければいけないのも私の仕事である。
私の仕事がまたもや増えるということだ。
しかし別にそれが嫌だというわけではない。もちろん、歓迎するようなことでもないのだけど、そんな理由でこのアイデアに乗り気でないわけではない。
ただ単に私は、もしかしたら起きるかもしれないその大混乱を収める自信がないのだ。
これは自分の手に余る大仕事。塔の根幹を揺るがしかねない大改革。このような仕事、歴史に残るような優れた行政家でもない限り不可能ではないだろうか。
「積極的にその話しを進めても構わない。むしろその提案を歓迎する。いや」
今すぐ、実行しよう。
しかしプラーヌスは言ったのだ。




