第三章 7)三つの仕事
「とにかくやらなければいけない仕事は三つです。この塔の主であるプラーヌスは、必要のない召使いのクビを切るつもりで。だからこの塔で働く召使いの数はどれくらいが適切なのか調べなければいけません。それが第一。それに関連して、この塔の正確な見取り図の作成。この塔は本当に巨大で、ちょっとした迷路みたいなものです。どこに何があるのか、誰も把握していません。それを明確にするための地図作り。そして三つ目が、昨日からぞろぞろとやってきている客への対応」
執務室も何とか形になったので、改めてサンチーヌたちを部屋に集める。そして私は語る。「なるほど」とサンチーヌたちは相槌を打って聞いてくれている。
「それ以外にも、女神探しとか、金庫番の問題とか、色々あるんですけど。まずはその三つが優先事項です」
この塔のどこかに女神像があるらしい。頻繁にこの塔に襲撃を掛けてくる蛮族の捕虜が明かした事実だ。
奴らはこの女神像を取り戻すために、この塔を襲撃しているというのだ。この女神像を彼らに返すまで、あの無意味な襲撃は繰り返されるかもしれない。
だから女神像探しも重要な仕であるだ。しかし今、それは完全に暗礁に乗り上げている。彼らに任すべき仕事でもない。
金庫番の問題も、もう少しプラーヌスと相談してから進めよう。
「そういうわけで、エドガルさんとアデライドさんには、この塔の見取り図を作ってもらいたい。ドニさんとラダさんは来客の応対をお願いします。そしてサンチーヌさんと僕で、この塔の召使いの問題を片づけたい」
「わかりました。承りましょう。しかし僭越ながら一つアドバイスしたいことがあります」
サンチーヌが言ってくる。
「はあ、何でしょうか?」
「彼らにもそれぞれ向き不向きがあります。アデライドとラダの役割を変えましょう。ドニとアデライドに客の対応を任せたほうが良いと思います、そしてエドガルとラダに、この塔の見取り図作りを」
彼らも頷いている。私もサンチーヌの意見に同意した。
彼らの能力の向き不向きなど、まるで知らない。サンチーヌのほうがずっと的確に把握しているのは間違いない。彼のアドバイスに従うべきであろう。
まだ、彼らの人となりなど、しっかり把握したわけではないが、簡単に紹介しておこう。
エドガルは長身で逞しい身体つきの付き人である。アリューシアの衛兵的な存在なのだろうか。常に腰に剣をぶら下げていた。
サンチーヌより若いが、私たちよりも少し年上だろう。真面目そうで、落ち着いた雰囲気のある男性だ。
ドニは笑顔が印象的な若者である。侍女たちと何か言って、ケラケラと大声で笑っているのをよく見る。
小柄で敏捷で、よく動き回っているという印象。
アデライドは生真面目そうな女性である。教会の修道女か家庭教師のよう。
年齢はエドガルと同じくらいだろう、アリューシアを何度か叱りつけているのを見たことがある。実際、アリューシアの教育係のような女性らしい。
ラダはかなり若い女性だ。アリューシアより二、三歳年上といった程度。
しかし若いがまるで活き活きとした印象はない。アリューシアに向かって、何かボソリと辛辣な意見を口にしているのを聞く。アリューシアもそれに言い返している。アリューシアとは本当の友人のような関係のよう。
ここにはいないが、リーズという侍女もいる。アリューシアの衣装係、化粧係専門の侍女のようだ。
リーズ自身もかなりお洒落で、パッと人目を惹く美しい女性だった。
簡単だが、以上が私の仕事を手伝ってくれることになったアリューシアの執事や侍女たちの特徴である。
誰も彼も身なりは綺麗で、その佇まいには何と言えない気品のようなものが漂っている。
貴族に仕える執事や侍女だが、彼らも下級の貴族の出に違いない。あのボーアホーブ家に務められるのは、それなりの身分が必要なんだろう。
さて、そういうわけで、午後になって、ようやく仕事が始まった。




