第三章 1)新しい一日
昨夜のアリューシアの喜びは、それはもう大変なものだった。プラーヌスへの弟子入りが叶ったのだ。それは彼女の積年の願い。
嬉しさのあまり、その場にへたり込んで、彼女は静かに泣き出した。
そんなにも喜んでいるのだから、アリューシアは当然のようにして、プラーヌスからの交換条件を受け入れた。
これからはあの二人の料理人が、私たちの料理も作ってくれることなり、彼女の連れてきた召使いたちも、私の仕事を助けてくれるようになった。
「でもリーズだけは残しておいて。あの子は私のお化粧係なの。彼女がいなければ、服も選べないし、髪型も決まらないから」
プラーヌスが謁見の間を去り、その興奮もいくらか落ち着いてきたのか、アリューシアが私にそんなことを言ってくる。
「わかった、もちろん細かいところは君に任せる」
「その代わり、サンチーヌ、エドガル、ドニ、アデライド、ラダを貸すわ。あなたから命令は私の命令と同じだと思えって、しっかりと言っておく」
ああ、明日が来るのが楽しみだわ!
アリューシアは本当に幸せそうに、部屋に帰っていった。
それが昨夜のこと。あの美味しい夕食のあとの、謁見の間での出来事だ。
そこでプラーヌスはアリューシアを弟子として受け入れることを宣言して、その代わりアリューシアが連れてきた料理人と付き人たちが、この塔で働くことになった。
さて、それから一夜明けて今朝。
私はいつものように一人で朝食を食べ、出来るだけ素早く身づくろいを整え、いつものように中央のホールに向かう。
そして、その入り口を入ってすぐのところでアビュと落ち合う。
しかし今朝はアビュだけでなく、既にサンチーヌ、エドガル、ドニ、アデライド、ラダが私を待っていた。
「やあ、皆様、お揃いで」
私は待たしてしまったことを申し訳ないと思いながら、彼らに声を掛ける。
彼らがこの時間に来ているのなら、私はもっと早く起きて彼らを待たなければいけないだろう。
確かにこの塔では私のほうが立場は上で、命令を発することが出来るわけだけど、この仕事の経験の豊かさは彼らのほうがずっと上だと思う。
こっちも率先して働かなければ、彼らがついてきてくれるわけがない。
それに案の定、彼らの表情は一様に硬かった。私の下で仕事するのが不服だからに違いない。
彼らの信頼感を勝ち取るまで、かなりの時間が必要だろう。
私は彼らの表情を見ながら覚悟を決めた。
確かに彼らの力を借りれば、これまで停滞していた仕事が一気に処理されるかもしれない。
しかし一緒に働くとなれば、こっちはかなり気を遣わなければいけない。これからは別種の疲労感と戦わなければいけないことになるだろう。
それでも仕事が効率よく進むのならば、それに耐えよう。
「それでは早速、仕事をしましょう」
私が彼らと同じように硬い表情で言う。
しかしアビュが私の言葉に割り込むように言ってきた。
「ちょっとボス!」
私の助手、ただ一人の従順な部下、アビュ。
しかし彼女の表情も硬い。と言うか顔色が悪い。真っ青だったのだ。
「ど、どうした、アビュ」
「謁見の間で、誰か死んでるんだけど・・・」
「え? 死んでる?」




