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私の邪悪な魔法使いの友人2  作者: ロキ
シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
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第一章 2)塔の主の証し

 「承認状、僕が塔の主であることを、この国の王も認めるという証しさ。ずっと待っていたんだよ、この承認状が発行されるのを」


 プラーヌスは承認状というの物が何なのか説明してくれた。


 「この塔を魔界から支配している魔族と契約を交わして、それで終わりではない。この地を支配している世俗の権力からも、正式な塔の主として認められる必要がある。まあ、魔法審議会は僕のことを、この塔の主として認めているからね。国王との折衝だって手続きくらいのはずだけど」


 どのような権力からも距離を取っていて、限りなく自由に思えた魔法使いであっても、このような面倒な手続きが必要であるなんて少し意外な気もしたが、考えてみれば当たり前のことにも思える。

 魔法使いの塔が建っているこの場所だって、王国の国土にあることは事実なのだから。


 「王から承認状が来たということは、街でも、この塔の主人が新しくなったことが知れ渡り始めているという証しだ。魔法を求める依頼人が、これから続々と押し寄せてくるだろう。まあ、金庫はもう空っぽに近かったからね、手っ取り早く稼ぐ必要があった。いいタイミングかもしれない」


 この塔に住んでいる住人は多い。彼らを喰わしてやる必要がある。それにこの塔を守る傭兵たちに払う給金だって馬鹿にならない額だ。

 最近、金庫が底を尽きかけている。取り急ぎ、仕事をしなければいけない。そのセリフを、プラーヌスから何度聞かされたことであろうか。


 「シャグラン、かなり忙しくなるぞ」


 「そうなのかい?」


 今でも既に、やらなければいけないことは山積みだった。

 この塔で働いている召使いの名簿作り、塔の見取り図も作らなければいけない。

 名簿作りはそれなりに進んでいるが、召使いを部署ごとに割り振らなければいけない作業も残っているし、塔の見取り図は一枚も出来ていない。

 まだそれだけじゃない。私はこの塔のどこかにあるという女神像も探さなければいけないのだ。そしてときおり、聞こえてくる謎の女性の泣き声、その謎も解かなければいけない。私にはやらなければいけない課題が山済みである。

 それなのに続々やってくる客の相手までしなければいけないとは。


 「シャグラン、君には金庫番もしてもらおうかな」


 しかしプラーヌスは、更に新しい仕事を押し付けてきた。


 「えっ? 今でも仕事は大変だよ。この上、金庫番なんて!」


 「どこの組織でも財政を預かっている者が強い。他の者がその役を勤めれば、君のこの塔のナンバー2の地位は危うくなるかもしれないけど」


 「そ、そうだね。誰も僕の命令や、指摘に耳を貸さなくなるかもしれない」


 別にこの塔のナンバー2でありたいわけではなかったが、きっちりと責任をこなすためには、それなりの権力は必要である。それは以前から考えていたことであった。


 「でも一人で、金貨の量の出入りの記録までチェックすることは不可能さ。そんなことまでやっていれば、いつか疲労で死ぬに違いない」


 「うむ、それならば誰かを会計係にして、そいつを君の下で働かせればいい。とにかくこの塔の財布を預けられるのは君に以外にいない」


 プラーヌスは私を全面的に信頼していると告げるように、何とも人懐っこい笑顔を浮かべてくる。

 こんな表情で見られると、この依頼を断るのは不可能だろう。とにかく金庫番でも何でもやるしかない。


 私たちは門を通り抜け、裏口から塔に中に入り、ようやく中央の塔のエントランス部分に到着した。

 正面にある中央の入り口を通って、目の前の階段を上がれば、まずこの場所に辿り着く。確かに、そこに見知らぬ男性が立っていた。


 やあ、ようこそ、我が塔に! 君が王の遣いの遣いだね。


 プラーヌスがその男に向かって、朗らかなに声を掛けた。

 一方、王の遣いの遣いの男は、かなり疲れた様子でその声に応えた。

 恐らくかなりの長い時間、ここに突っ立ったまま待たされていたのであろう。少し不貞腐れた表情で、塔の壁柱にもたれている。


 「王はいつ頃、到着の予定だろうか?」


 しかしプラーヌスは客のそんな心情に気づいていないのか、あるいは、どれくらい待たせても配慮する必要はないと思っているのか、何ら詫びることもなく、自分が聞きたい質問を優先する。


 「三日、四日後には到着されるでしょう。しかし道中は悪路を極め、塔はこのような僻地にあるため、予定通りに行くとは限りませんが」


 王の遣いの遣いが不貞腐れた表情を変えず、そう言った。


 「そうだね、確かに僕の塔は僻地にある」


 僻地という言葉に気を悪くしたのか、プラーヌスは不気味な表情でニヤリと微笑んだ。「それならば僕が魔法でお迎えに上がるけど?」


 「心遣いは痛み入りますが、王の遣いは王の分身と言っても過言ではなく、そのようなお方を魔法で移動させるわけにはいかない」


 確かにその魔法が使われている間、王の遣いはプラーヌスの支配下に置かれるわけである。彼に命を握られているも同然。


 「そうか、では三日でも四日でも待とう。シャグラン、とりあえず彼を客間に案内してくれ。一心地ついてから、謁見の間で改めて話しを伺う」


 「では、こちらへ」


 客間は東の塔にある。常日頃から、どのような客でも迎えられるように、それなりの準備は整えてある。

 私はその客を連れて東の塔に向かう。

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