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私の邪悪な魔法使いの友人2  作者: ロキ
シーズン2 私の邪悪な魔法使いの友人の弟子
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第一章 19)魔法使いの仕事

 謁見の間が賑わい出した。

 停滞していた時間が動き始めたかのようだ。

 私は作成した名簿の順番に客たちを呼び込んでいく。客たちは待ち兼ねたと言った表情で、謁見の間に続々と集まってきて、プラーヌスの前に列を作っていく。


 客たちの依頼の多くは、プラーヌスの魔法で自分の願いを叶えて欲しいというもの。

 例えば近くの街で数件の居酒屋を経営しているというこの主人は、暑い夏の昼下がりなどに、冷えた麦酒を出すことが出来れば客たちは飛びつくはずだから、魔法の力でそれを叶えてくれという依頼。


 「なかなか面白そうだね」


 プラーヌスは興味を示した。「暑い日中であっても、水から氷を瞬時に作ることが出来る道具の装置を作ればいいわけだね。あるいは、どんな液体で凍りつく寸前にまで冷やすことが出来るジョッキを作ろうか」


 プラーヌスは自分の魔法の知識から、何が最善の方策なのか考えているようだ。その最善の策が思いつけば、彼は言う。


 「その依頼、受けてもいい。条件は、君の店の売り上げの半分を毎月僕に収めること」


 そして彼は、私も驚かせるような法外な報酬を、その商人に要求する。


 「月の売り上げの半分? それは麦酒だけのでしょうか」


 依頼主はそんなことでは商売になるわけがないという表情で返す。何という世迷言を仰られているのでしょう。


 「違う、君の店の全ての売り上げの半分だよ」


 「あ、ありえません。そんなことではこちらの商売は成り立ちませんよ」


 店の主人はプラーヌスのことを、商売のことを何もわかっていない者だと小馬鹿にするように笑う。

 何とか状況を説明すれば、きっと納得してもらえると考えているのだろう。


 「では、話しはなかったことに。次!」


 しかしプラーヌスは依頼主のそのような姿勢を一蹴する。彼のほうが圧倒的に立場は上なのだ。彼はどんな無茶な要求でも押し通そうとする。


 「お、お待ち下さい。では、店の売り上げの三分の一で」


 店の主人は慌てて食い下がる。


 「駄目だ。半分以下では応じられないね」


 「五分の二でご勘弁下さい」


 「無理だ」


 「そうですか・・・」


 「仕方ない、九分の四まで譲歩しよう」


 しかし依頼主が諦めかけたと見るや、プラーヌスだって歩み寄る姿勢を見せることもあるようだ。

 彼だって出来るだけたくさんの依頼を引き受けて、効率よく金儲けをしたいのである。


 「その代わり、売り上げを誤魔化すことのないように。もし少しでも、僕たちを欺くようなことがあれば、どういうことになるかわかっているよね」


 「わ、わかっております。その仕事、依頼させていただきます」


 依頼した商人はしぶしぶと頷いた。

 いや、この商人だってただの正直者ではないはずだ。プラーヌス側に法外な要求をされながらも、結局、この仕事を依頼したのは、それでも儲かるはずだという計算が、商人の側にもあったからに違いない。

 暑い夏でも、冷たい酒が飲める店。そんな店、かつて存在したことがない。そのような商売を始めれば、きっと大繁盛するだろう。


 「よし、契約完了だ。では塔から君への店へ、一瞬で移動出来る魔法のルートも敷設しよう。これで君の要求に応えられるような、魔法のジョッキを毎朝送り届けるよ」


 「ありがとうございます」


 その他にも、様々な依頼があった。

 報復したい敵がいるから、それに協力して欲しいという依頼。

 魔法の武具を作って欲しいという依頼。

 隣国との戦争の手助けを願う、政府の高官からの依頼。

 はたまた冒険に同行して欲しいという、冒険家からの誘い。


 中にはプラーヌスの魔法でも叶えることが出来ない、無茶な願いを依頼してくる客もいる。

 永遠の命や、若返り、死者の蘇りなどを求めてくる客だ。

 無理な願いには、正直に無理だと言って断っていく。騙すだけ騙して、利だけを貪ろうなどという下賎な思惑など、プラーヌスには欠片もないようだ。

 もちろん、そんなことをしなくても、多くの依頼があるので、わざわざ騙す必要もないわけである。正当な手段だけで、十分な報酬を得られる見込みがあるのだ。


 プラーヌスは客たちの依頼を、慣れた様子であしらっていった。

 その仕事に対する報酬と、その仕事に要する手間を秤にかけて、報酬側に秤が傾けば簡単に応じている。


 承諾した依頼内容の詳細は全て頭の中に入っているのだろうか、プラーヌスはメモなど一切取らずに次々に処理していった。

 おそらく彼は塔の主になる前から、こうやって度々、依頼者と面会して仕事を請け負ってきたに違いない。

 なぜなら魔法使いであり続けるには、大変な財力が必要なのだ。

 魔法使いが魔法を使うには、その動力として宝石が必要なのだから。

 当然のこと、プラーヌスだってその例外ではない。

 この塔を所有するまでに、かなり熱心に仕事をこなしてきたであろう。彼はこうやって莫大な金貨を稼いできたはずなのだ。


 ちょっとした魔法を使うだけで、あの光り輝く貴重な宝石が粉々に壊れてしまうのである。

 魔法は本当に高価で、貴重な能力だ。

 しかし本来ならばその高価な魔法も、塔の主になることが出来れば、自由に使うことが出来るようになる。

 魔法の塔は何やら特別な場所に存在していて、この塔のテリトリーの範囲内であれば、プラーヌスは宝石の力を借りずしても魔法が使えるのだ。

 それゆえ、塔の主に仕事を依頼すれば、市井の魔法使いに仕事を依頼するよりも、ずっと割安で済むわけである。

 魔法を発動するために必要な宝石の金額を、報酬に上乗せされることはないのだから。


 先程、契約が成立した魔法のジョッキだって、普通の魔法使いに依頼すれば、もっと高額な報酬を要求されたのかもしれない。

 塔の主であるプラーヌスであるから、この契約で済んだのかもしれない。他の依頼だって同様であろう。

 だからこそ今日一日だけで、これほどの客が殺到したのに違いない。そしてきっと、明日以降も、更に遠来の客が続々と到着するだろう。

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