四月一日 朝2
太陽が無いことに違和感がありすぎてもう一つの違和感に思考が行かなかった。
「まあ無理も無いか」
そう呟きながら携帯で110番にすぐにでもかけられるように準備をする。
台所のドアを勢い良く開け、
「誰だお前!?」
その誰かの姿を確認する前に叫ぶ。誰がいるかは分からないが誰かが居ることは分かっていた。それもそうだ、俺以外誰も居ないはずの家で起きて、俺が作ったわけでもないのに朝食の匂いがするのはどう考えてもおかしいだろう。もっと早くに気付いておくべきだったかもしれん。
しかし、俺が叫んだにも関わらずそいつはいたって冷静にこちらに振り向き、
「おはようございます夜介様」
と、挨拶をしてきた。なぜそいつは冷静なのか。それよりも気になることがあった。なぜ俺の名
「なぜ俺の名前を知っている?とでも言いたげな顔をしていますね。」
前・・・を・・・
「先読みされた!」
クスクス笑うそいつ。なんか悔しい。
「ああそうさ!なぜ俺の名前を知っているのか説明しろ!」
少し赤面しながら言う俺に一枚の紙を見せてくるそいつ。
「今日からこの家のメイドとして働くことになりました。山吹 雷と申します。」
ふーんメイドねぇ・・・ってはぁ!?
「ちょっと頭が混乱してきた。四つほど質問いいか?」
「どうぞ。」
「質問一。メイドを雇った覚えも無ければメイドを雇う意味も分からん。それについて教えてくれ。」
「私を雇ったのは旅行中の夜介様のご両親なので知らないのは無理も無いでしょう。雇われた理由は私も聞かされてないのでお答え出来ません。」
と、山吹 雷が話し終わったタイミングで母からの着信。
ピッ
『もしもし夜介ー?元気ー?勉強してるー?
ちゃんとご飯食べてるー?』
「そんなことより山吹 雷について話せ!」
『あら〜雷ちゃんもう来てたの〜?早かったわね〜。可愛いでしょ〜?手ぇ出したらダメだからね〜。』
『そうじゃなくてメイドを雇った理由を話せ!』
目の前に山吹 雷が居ることも忘れて大声を出してしまう。しかし、俺がそれを聞くと急に真剣な声色で母は話し出した。
『私とお父さんはもうダメかもしれない。』
「・・・えっ!?」
『私とお父さんは・・・もうイタリアの料理無しじゃ生きていけないの!』
「・・・は?」
『旅行のつもりで来たイタリアだったのに料理が美味し過ぎるので私とお父さんはイタリアに住むことに決めました!』
「・・・」
『だから雷ちゃんを雇ったのよ。あんた達のお世話のお願いしてあるから。もう一回言っておくけど手ぇ出しちゃダ』
プツッ
母が言い終わる前に切ってしまった。まあ馬鹿馬鹿しい理由だがこれが事実なら仕方ない。とにかく理由は分かった。
「夜介様のお母様の声は大きいのでこちらにも聞こえましたし理解しました。」
そうか、説明する手間が省けた。
「じゃあ質問二。メイドって言う癖になんだその格好は!?」
メイドってのはメイド服着てるもんだろ。なんで・・・
「なんで包帯しか身につけて無いんだよ!」
「私の家は貧乏なので。」
貧乏にも程があんだろ・・・。包帯しか身につけて無く、露出度も低いが、なんかエロいな。目のやり場に困る。
「じゃあ質問三。ら、雷ちゃんと呼んでもよろしいでしょうか?(キリッ)」
「どうぞ♪」
もしかしたら拒否されるかもと思ったがOKだった。というかむしろ嬉しそう。
「じゃあ質問四。これが一番重要な質問なんだが・・・太陽が無い理由を知っていたら教えてくれ。」
「・・・っ!?」
明らかに同様する雷ちゃん。太陽に関する情報が得られると心の中でガッツポーズ。しかし、彼女の次の言葉は、
「知りません。それよりも朝食にしましょう。冷めてしまっては勿体無いです。」
「話をそらすな!」
ぐ〜〜〜
「やっぱ朝食にしよう。そうしよう。」
腹が鳴ったことに照れる俺に雷ちゃんは笑顔で応じるのであった。