第十四話 授与するのは誰?
フィルの周辺は一気に賑やかになった。
つい先日まで一人ぼっちで食事をしていたフィルだったが、今では俺が増え、シア、ユリカ、シンイチと5人で食卓を囲むようになった。
賑やかになった食卓を一番喜んでいるのは、間違いなくフィルだろう。
シアは美味しい物が食べられれば満足のようだし、シンイチはまだ遠慮しているところがあるように感じるからだ。
俺はと言うと、実のところ戸惑っていた。
「ご主人さま、この服フィルお姉ちゃんのお下がり」
ユリカは奴隷として暮らしていた時間が長いせいか、今まであまり上等な服を着たことがないらしく、王のお下がりの服を着られることを喜んでいた。
「ユリカちゃんすっごく似合ってますよ!ねぇコウ様!」
ユリカの着ている服は黒を基調としたフリルがふんだんに使われた、フィルの幼い頃に着ていた服。
つまりメイド服だ。
「ああ、ユリカにも似合ってるよ」
確かに可愛らしいユリカがメイド服を着ているのは可憐で、お人形さんのようなと言う表現がぴったり当てはまる。
フィルがメイド服の袖の長さとかを調整してくれたらしく、まるでユリカの為にあつらえたかのようだ。
「…ん。ありがと」
ユリカは俺が椅子に座っている横に立っていて、俺の一挙手一投足に気を配っている。
イメージの中のメイドさんの仕事を忠実にこなしているつもりなのだろうが、見つめられ過ぎて少々食べにくい。
俺は根っからの一般庶民なんだなあ。
「なぁユリカ。一緒に食べたほうがご飯も美味しいぞ」
「…給仕する」
「それも奴隷のお約束ってやつか?」
「うん。前の主人はそうしないと殴ってきた」
ユリカはあまり表情を変えないし、口調も淡々としている。
しかし言っている内容は重く、自分は奴隷だと思って行動しているのだ。
兄のシンイチに言わせると嬉しい時は口角が少し上がるらしく、無表情なのは抑圧された生活を送っていた名残だろうか。
「俺は奴隷として扱わないと言っただろう。殴ったりもしない」
「働かざるもの食うべからず?」
「疑問形なのかよ。ユリカは弟子としてみっちり修行してもらう。腹が減ってたら力が出ないぞ」
「…給仕はいいの?」
「ああ、せっかくのフィルの料理だ。暖かいうちに食べてくれ」
ユリカは待遇の差に戸惑っているようだったが、「必要な時はいつでも呼んで」と言って席についた。
染み付いた習慣はそう簡単には拭い去れないだろうし、しばらくは似たようなことが続くだろうが、皆の暖かさと時間が解決してくれるはずだ。
他力本願の様に思われるかもしれないが、心の傷はゆっくり時間をかけて治すしかないと思う。
「片付けが終わったら、キリングス将軍のところに行くからな」
先日の面接で部下を採用した報告と、シンイチの訓練用の装備を貸してもらうためだ。
食事を済ませキリングス将軍の執務室に向かうと、朝礼の真っ最中だった。
文官たちが、報告を読み上げキリングス将軍が指示を出している。
まるで会社のような光景に懐かしさを感じる。
「朝礼中にすみませんでした。出直してきます」
「いや、構わん。部下達の顔見せか?」
「ええ、そのつもりだったんですが…」
キリングス将軍はちょうどいいと思ったのか、「文官たちも揃っている今紹介しろ」と言ってきた。
挨拶をしなければならないので二人にとっては試練だろうが、転校生が教室で自己紹介をするみたいなものか。
シンイチは緊張に顔を歪めていたが、ユリカは相変わらずの無表情だ。
俺だったら、何を話すか緊張してしまうだろうからシンイチの不安がよくわかる。
自己紹介を始めようとすると、皆の視線がユリカの首に向けられていた。
「その娘についている首輪はまさか…」
「隷属の首輪だそうです」
「ユリカ・タカミヤ。見ての通り奴隷。主はコウ様」
その瞬間、文官達はひそひそと話をし始めた。
「美人が多いと評判の兎族を愛人にとは…うらやま…コホン!けしからん!」
「なかなかの美貌ではないか、将来が…」
皆の視線が痛かったので緊急避難的に主になったことを告げると、視線は少し和らいだものになった。
「まぁコウ殿は人族だ。獣人に劣情を催すことはなかろうて」
この世界では通常、下等な生物と獣人を見下しているので性欲の対象にはならない。
だからハーフは数少ないのだが、ここにはシンイチとユリカ兄妹もいればクォーターのシアもいる。
彼女らはレアな存在で、デュッセル王国でも片手くらいしかいないはずのハーフ達がここには集結している。
しかも平凡な顔立ちの俺とは違って、シアは美人だしユリカは可愛らしく、シンイチも美形だ。
「え?ユリカは普通に可愛いとは思いますが」
「「「んなっ!?」」」
皆一様に驚いたかと思うと、またひそひそと話をし始める。
今度はキリングス将軍も混ざっていた。
「宮廷魔術師殿は変態じゃったのか?」
「儂の娘も気をつけねば」
「お主の娘は40歳を超えてるだろうが」
「ふむ、儂にとっては都合のいい展開だ」
文官のおっさんたち聞こえてるからな。
別に獣人って言っても、獣の耳が生えてるだけで見た目は人族と変わらない。
俺にとってはむしろ萌え要素だ。
「アレキサンダー殿の娘さんは35歳だったかの」
「家で食っちゃ寝しててのう…。昨日も働いたら負けだと言っておった。誰に似たのやら…」
「ならこの際……」
なにやら不穏な空気を感じる。
35歳独身獣人…ニート…しかもおまけでアレキサンダーさんまでついてきそうだ。
きっとアレキサンダーさんは俺の稼ぎで、親子共々楽して暮らして行こうと考えているに違いない。
アレキサンダーさんと目が合うと、視線は鋭くまるで狩人のようだった。
バルツバイン軍の中に単独でいた時よりも、生命の危機を感じる。
「宮廷魔術師殿、お見……」
「そ、それよりも!」
お見合いという不穏な言葉が出る前に、言葉を被せてアレキサンダーさん思惑を阻止する。
「実はユリカは魔術師なんですよ」
「「「魔術師!?」」」
話を無事逸らす事が出来たので、このままユリカの説明を続ける。
部屋の隅でアレキサンダーさんはしゃがんで、のの字を書いているが気にするまい。
どうして獣人は皆真面目で純朴なのに、あの人だけは怠け癖があるのだろう。
「まだ実力は俺が魔法学園に入学した頃くらいですけどね」
「ううむ…彼女は本当に獣人の魔術師なのか?」
どうやら獣人の魔術師は前代未聞らしく、キリングス将軍も耳を疑っていた。
「ユリカ魔法をみんなの前で見せてくれるか?」
百聞は一見に如かずで、ユリカが魔法を使えば魔術師であることの証明になる。
そう思ったのだがユリカはなんだか乗り気では無いようだ。
「ご主人さま、魔法を使うのはいいけど杖がない」
この世界の魔術師にとって杖は実際のところ補助具だが、杖が必須だと思っている人も少なくない。
ユリカもその中の一人なのだろう。
魔法学園でも、必ず杖を持って魔法を使えと指導されていた。
その理由は魔法の本格行使にはデリケートな魔力調整が必要で、杖を装備すると補正効果で魔法攻撃力が底上げされる事から、底上げされた状態で魔力操作に慣れるよう訓練しろと言うことだと解釈している。
キリングス将軍に尋ねるが、魔術師用の杖はもう無いらしい。
俺が持っているダガリポートの杖を貸すことも考えたが、補正効果が強すぎて下手をすると変な癖がついてしまい今後の魔術師生活に悪影響が出かねない。
あの杖は補正魔法攻撃力だけでも、ユリカの素魔法攻撃力以上だからな。
どうしようかと思ったが、俺はある杖の存在を思い出した。
「ちょっと待っててもらえますか」
急ぎ自室に向かい目的の杖を持ってくる。
魔法学園から貸与されていた訓練用の杖だ。
一応弁明しておくと学園長が気を利かせてくれて、新しく杖を買う資金も無いだろうからそのまま使って良いと許可を得ているのだ。
キリングス将軍も部下にシンイチ用の剣を持って来させたようで、フィルもいることから会場を謁見の間に移し、自己紹介を兼ねた叙任の儀式を始めることになった。
俺の宮廷魔術師への叙任の儀式では、フィルによって杖を授与された。
今回も国王が剣や杖を授与するのだろうと思い、訓練用の杖を渡そうとするのだがフィルは不思議そうな目で俺を見ていた。
「コウ様、なぜ私に杖を渡そうとなさるのですか?」
「フィルが叙任の儀式で、皆に剣や杖を授与するんじゃないのか」
「皆はコウ様の直属の部下ですよ?」
どうも話が咬み合わない。
俺の思いでは皆は儀式で国王であるフィルに忠誠を誓うはずだから、フィルから授与されることが最高の名誉になるはずだよな。
だけど、フィルは授与をするのは自分では無いと言う。
ひょっとして俺の時は宮廷魔術師と言う、国でも有数の官職だから特別だったのだろうか。
考えてみればデュッセル王国の全ての兵士に、フィルが叙任の儀式で剣を授けるのも人数的に無理がある。
そう考えると今回は執政であるキリングス将軍が授与するのだろうか。
それであればキリングス将軍を通じて、国に忠誠を誓うと言うのも理解できなくもない。
やがてキリングス将軍は、玉座が空席のままの状態で口を開いた。
「これよりコウ・タチバナ宮廷魔術師、直属部隊の任命式を行う」
重く響く声が謁見の間に響き渡る。
キリングス将軍の横には、文官が並んでおりその手には授与する剣と杖を持っている。
「この部隊は各々の所属するまでの経緯を鑑み、長であるコウ・タチバナを通じ国に忠誠を誓うものである」
ん?俺を通じて国に忠誠を誓う?
さっき兄妹をまるで転校生のように挨拶をしなくちゃいけないから、大変だなと他人事のように思っていたのだがひょっとして…。
「宮廷魔術師殿、こちらへ」
悪い予感は当たるもので、キリングス将軍は司会でしかなかった。
気楽に任命の儀式を見ていた俺を待っていたのは、叙任の役目だったのだ。
突然の出来事に心の準備が整わない。
必死になって頭の中を目一杯回転させ、俺が叙任された時を思い出す。
確かあの時は俺がフィルの前で片膝をついてフィルが何か言って……そしてフィルが杖を渡してくれて……。
あああああ、キリングス将軍の無茶振りに頭がパンクしそうだ。
緊張しまくりの俺がキリングス将軍の横に立つと、シアが目の前にやって来て片膝をついた。
さすが元王族で、その所作は見ているものを惚れぼれさせる。
俺が固まっているとキリングス将軍が小声で「授ける剣でシア殿の肩を叩くのじゃ」と助け舟を出してくれる。
文官から剣を受け取ると、ずっしりと重い。
怪我をさせないように配慮しながら、剣の平でシアの肩を叩いた。
次はここで言葉をかけるんだよな。
ええい!男は度胸!
フィルに言われた言葉を思い返しながら、自分流にアレンジを加える。
「シア。貴君を我が副官に任じる。デュッセル王国のため、民である獣人たちのためその剣を振るう事を切望する」
するとシアは恭しく剣を受け取った。
元々シアの持っていた剣を、持ち主に返しただけなんだがこれでいいんだよな。
キリングス将軍を見ると及第点はもらえたのだろう、満足気に頷いていた。
「このシア、姓はございませぬが、この身体この剣私の全てを、コウ・タチバナ様に捧げます」
全てと言われるとなんだか重い感じがするが、誓いを言われる王様ってこんな気分なんだろうか。
王は命令一つで部下を死地に追いやる事にも繋がりかねない。
そう考えると王様は、まともな神経では務まらないのかもしれない。
シアと入れ替わりでシンイチが前にやって来る。
相変わらず緊張しているのか、右手と右足が一緒に動いている。
それを見るとなんだか少し安心してくる。
シンイチは俺と同じで緊張しまくり仲間だ!
「シンイチ・タカミヤ。貴君を我が部下に任じる。我が副官であるシアに師事し自らを高めよ。この国は君たち兄妹を護ってくれるだろう」
「は、はひっ!全力で頑張りまひゅ!」
シンイチは噛みまくりながらも、歳相応の受け答えをしてみせた。
線も細くユリカと瓜二つの美形なので、日本なら一部のお姉さま方にさぞかし人気者になるだろう。
俺が12歳の頃はこんなにしっかり受け答えは出来なかっただろうし、俺に人を見る目があるならば、きっと近い将来デュッセル王国にとって欠かせない人材になってくれるはずだ。
続いてユリカがやって来る。
ユリカは相変わらずの無表情で、緊張とは無縁の存在に見える。
「ユリカ・タカミヤ。貴君を我が部下に任じる。俺と共に魔術の腕を磨き、この国の力になって欲しい」
「奴隷がご主人さまについて行くのは当然。期待に応えられるよう頑張る」
文官の一部が俺に怨嗟の詰まっていそうな視線を向けてくるが、気づかなかったことにしよう。
あくまでユリカは部下であり、弟子だ。
そして俺はロリコンではない…はずだ。
俺がユリカに杖を手渡すと、ユリカの口角が少し上がった。
シンイチが言っていた、嬉しい時のユリカの表情はこれなんだな。
「ご主人さまがずっと使っていた杖。大事にする」
ユリカは愛おしそうに杖を抱きかかえていた。
俺にとっては魔法学園時代の3年間使い続けた愛着のある杖なので、大切にしてもらえると思うとなんだか嬉しい。
ユリカを弟子にすると言うことは、訓練中側にいることにもなるし、これから一緒に過ごす時間が長くなるだろう。
隷属の首輪をつけられているのはユリカの悲劇だが、俺にとっては絶対に裏切らない部下が出来たに等しい。
まずは自分の力を高めることが優先になるが、同時進行でユリカの修行も積まなければなるまい。
3人の任命の儀式が終わったところで、俺はほっと一息ついていた。
ようやく一仕事を終え、緊張の糸がほぐれるのを感じていたからだ。
周囲を見回した時、異常事態に気づく。
シアとシンイチに剣を、ユリカに杖を渡し全員が終わったはずなのに、まだ一人文官がその手に何かを持って待っているのだ。
見れば誰も、儀式の最中にいた場所から動いていない。
想定外の事態に、キリングス将軍を見るが「早くしろ」と急かされる。
俺は文官から、それを受け取る。
受け取ったそれにはフリフリのレースがあしらわれていた。
今まで授与した剣や杖とは明らかに違うものだ。
こんな物を授与するなんて聞いたこと無いよ!と心の中で叫ぶが、誰も助け舟は出してくれなかった。
動揺している俺の前で、フィルが照れくさそうに片膝をついた。
ああ、フィルはこの時のために玉座にいなかったんだな。
「フィルシアーナ・リュ・アムドル……」
「フィルです!コウ様フィルって呼んで下さい!」
俺がフィルの本名を読み上げようとすると、本人からダメ出しが入る。
一度緊張の糸が途切れてしまっていたのもあって、気持ちの立て直しに戸惑ってしまう。
キリングス将軍が「このまま続けろ」と言ってくれたので、その言葉に従って先に進める。
俺の背中は、汗でシャツがくっついていた。
「フィル、貴方に我が隊のお世話役をお願いします。私コウ・タチバナ及び部下達は、貴方の為デュッセル王国の為死力を尽くすことを誓います」
「はい!コウ様をお支え出来るよう頑張ります!」
さすがに王様相手に命令口調では言えないのでお願いの言葉にしたが、フィルは納得してくれたようだ。
フィルは頭を軽く下げ、俺からの授与を待つ。
首筋から見えるうなじと白い肌が目に飛び込んでくるが、緊張でガン見する余裕はない。
フィルの首に紐を通す。
するとフィルは立ち上がって、くるりと後ろを向いた。
背中の紐を蝶々結びをする。
エプロンを着たネコミミメイドさんの完成だ。
「えへへ、これで私も貢献出来ます」
嬉しそうにしているフィルに理由を尋ねると、自分なりに考えた結果なのだそうだ。
曰く、キリングス将軍の様に力もなければ皆を鼓舞する力もない、俺のように魔術も使えない自分に出来ることは家事くらい。
お飾りとは言え王としてどうかとも思ったそうだが、俺達に貢献する事で変革期のデュッセル王国に寄与したいのだそうだ。
俺の部下が出来る話になった時点で、キリングス将軍に相談し了解を得ているそうで「コウ様中心にお世話するのは変わりませんから」と恥ずかしそうに言っていた。
キリングス将軍はフィルに歳相応の女の子として生活して欲しいと望んでいるから、あの人なら本当に了解しかねない。
これで良かったんだろうかと、考えていると俺の袖がくいくいと引っ張られた。
そこにはフィルのエプロンを羨ましそうに見ているユリカがいた。
「私もエプロン授与して欲しい。こう見えても料理は出来る」
「え…」
そしてエプロン姿のウサミミメイド幼女さんも誕生しました。
いや、可愛いんだけどね。
「ところでコウ殿。ユリカが魔術師だと言う件だが」
俺が儀式とエプロンのお陰ですっかり忘れていたことを、キリングス将軍が尋ねてくれる。
「あ、そうですね。杖も授与しましたし実演してもらいましょう。ユリカいいか?」
「ん、火魔法でいい?」
「ああ、人にぶつけないように気をつけてな」
ユリカはぎこちない仕草で杖を構えた。
あまり魔法を使い慣れていないのかもしれない。
「ファイヤーボール」
ユリカが抑揚のない声で魔法を唱えると、拳くらいの大きさの火の玉が浮かび上がる。
ステータスからの想像していたとおり、今の俺から見ると火の玉はバチバチと火花を散らしており、制御の甘さも理解できる。
だが魔法学園入学当初の俺より上かもしれない。
10歳でこれなら将来が楽しみだ。
「ご主人さまの魔法も見せて欲しい」
師匠として恥ずかしくないところを見せないと、と考えると杖を握る手に力が入る。
ユリカと同じようにファイヤーボールの呪文を唱え、サッカーボールくらいの大きさの火の玉を作り出す。
一応室内なので魔力を凝縮し、火花が飛び散らないよう制御にも気をつけるが、時々火花が飛び散ってしまう。
もちろん火事にはならないが、自分がまだまだ未熟だと実感できる。
だけど、ユリカの俺を見る目は違った。
無表情だったはずの目は、見開かれていて俺を凝視していた。
「…魔力の濃度、制御、発動速度…どれをとっても凄すぎる」
美少女に褒められてこそばゆくなるが、ユリカは本当に驚いているようで悪い気はしない。
聞けばユリカに暴力を振るっていた魔術師の使う魔法は、俺と比較すると数段落ちるものだったらしい。
「段違い。こんなに凄いファイヤーボールは初めて見た」
フィル達はいつも見ている光景なので、いまいち実感していないようだったがユリカの言葉を聞いて、頼もしそうに火の玉を見つめていた。
「コウ様はすごいですよ。魔術の腕だけでなく算術も達者ですし、悪徳商人から国を護って下さいました」
「そうだな。捕虜を大切に扱い、交換交渉を行うなんてのも並の男では出来ることじゃない」
フィルとシアが俺を褒め殺しにかかる。
そしてユリカの目は、キラキラと輝いているように見えた。




