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Run away! 1

負った傷。

作者: 貴幸

人は好きな人と出会った時、それを運命うんめい、偶然という。


人は嫌いな人と出会った時、それを運命さだめ、偶然という。


「あ。」


少し秋に近づいてきた今日、俺、横田悠斗はその運命が待ち受けていた。








高梨春人。

俺を殺した人物が今目の前にいる。

目を合わせて数秒がたつ。

俺はまだこいつを許していない。

そもそも許す、という理屈がわからない。

この関係に許す許さないがあるのかもわからない。


「えっと、はじめまして。」


春人が一言、言った。


「はじめまして。」


はじめましてではない。


「俺といるの、嫌?」


「別に。」


「じゃあ、少しでいいから話そう。」


「…わかった。」


あの時に感じた恐怖はもうない。

ただまた違った恐怖はある。


辿り着いたのはマック。


…マックだ。

こんな殺人野郎でもマックに行くのか…。


「あれ、もしかしてロッテリア派だった?」


「モスバーガー派だ。」


な、なんなんだこの会話。


向かい合う形で席に座る。


こいつ、何も気にしてないのだろうか。

そう思うと腹がたってくる。

先に手をうってやろう。


「お前」


「ダブルチーズバーガー二つお持ちしましたー。」


店員が笑顔で俺の話そうとしたところを遮る。


「ありがとうございます。」


ありがとうございます!?人を殺す奴がありがとうございます!?

春人はハンバーガーを食べる前に俺の方を見た。


「ごめん。」


「え?」


「人を殺してごめん。」


真顔だ。

ただただごめんと言ってきた。

これで許すなんていったら負けな気がしてしょうがない。


「そんな事ここで話すものかよ…」


「俺…マック派だから…」


「その話はもういいっつうの!」


ハンバーガーを一口食べる。

モスバーガー派だがマックもありかもしれない。

なんだか緊張していたのに、なんなんだ。


「人に恨まれる事に慣れ過ぎてるんだ、許してくれ。」


眉があがる。

こいつはきっとあのゲーム以外でも人を殺しているんだろう。


「正直さ…俺は怒ってねぇから。」


「モスバーガーじゃなかったから…?」


「だからちげぇよ!」


一つ咳払いをする。

落ち着け、何故こいつはこんなにもマックかモスバーガーかの話を引きずってくるんだ。

そうだ、それは俺に気をつかったりしているからだ、話しづらいからだ。

ここは話にのろう。


「まぁ…モスバーガーの方が美味しいよな。」


「いやもうその話はいいよ」


「いいのかよ!!」


ようやく春人もハンバーガーを食べはじめる。


「許す許さないとかどうでもいい、ただ言わないままは嫌だったから。」


何故食いはじめてから真面目な話をする…


「…殺された時ってどんな感じだった?」


目を合わせないまま話す。


きっと、これが本当に聞きたかった事なんだろう。


ここで本当の事を言った時、こいつはどんな反応をするのだろう。


引け目を感じて殺しをやめる?


…いや。


きっとやめないだろう。



「覚えてない。」



「…そう。」


会話がやむ。

ハンバーガーは食べ終わり、話も終わりここにいる理由はなくなった。

俺は席を立つ事にした。



少し、言いづらいけど。



「次の時はモスバーガーだから。」



「いや、モスよりはロッテリアの方が…」


「素直に受け止めろよ!」





また、偶然が重なった時にでも。





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