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黒き大森林
サタンは、血光が照らす黒き大森林を歩いていた。
【どれほど進んだのか分からぬが、同じ景色はいい加減見飽きたぞ……】
サタンはため息まじりに呟いた。
延々と同じ景色の中を歩いていれば、誰とて飽きすら覚えるもの。
魔王であっても、飽きからは逃れられぬものらしい。
【ぬ? なんだ? あの紅い光は?】
サタンの視界に映ったのは、周囲を照らす血のような光よりも深く輝く火の玉のような球体だった。
それは明らかに、不変な景色に変化をもたらす存在だ。
【ふむ、このままでいるより、あの火の玉を追ってみるか】
サタンは火の玉との距離を詰め始めた。
【ぬ? なぜ火の玉が離れていく?】
サタンは火の玉へと、瞬歩のごとく一息で距離を詰めたが、火の玉も詰められた距離をすぐに広がらせてしまう。
まるで、一定の距離を保とうとするかのように、だ。
【ふむ、一定の間隔で相手を誘っているのか? となると、火の玉を追っていれば奴のいる場所へ行けるのか? なら、試すのみだ】
火の玉の行動を読んだサタンは、[火の玉がどこかへと導いている]という推測を立て実行へ移した――。