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冷たい雨の日の過ごし方

作者: subaya

   


 ~はじめに~



雨の日とは、実に退屈で、憂鬱な気持ちに憎しみさえ湧き上がるものです。

昨日は、あんなにお日様が笑っていたのに。明日は、たまの家族サービスにお弁当を持って、

フリスビーを持ってハイキングに行く予定だったのに。仕事を終え、ひとっぷろ浴び、

夕食を食べていた時には、パパの大きな背中に小さな娘が抱きつき、


「パパ、明日どこに連れて行ってくれるの?」

「それは明日になってからのお楽しみさ!ハハハ」

「こら。パパが好きなのはわかるけど、重くて大変よ」

「かまわんさ。ママ。お前はパパの背中に乗るのが好きなんだよな。明日は楽しみだな」

「うん。楽しみにしてるね。パパ、大好き!」


と、一家団欒であんなにも弾んだ楽しい会話をし、

そんなこんなの興奮が混じって夜の営みにいそしみ、ぐっすり眠ったのに。


 拝み倒して、ようやくデートにこぎつけたお目当ての彼女を、夕焼けのきれいな海に連れていき、

夜景のきれいなレストランでお食事したあと、あわよくば!というプランを立て、

いつもより仕事が楽しかった一日のデートの前夜には、

お風呂でいつもより念入りにカラダをヘチマスポンジでこすり洗い、眉毛を整え、鼻毛をカットし、仕事帰りに買ってきた新しいオシャレな勝負服の組み合わせをチェックし、それをたたんだ上に、財布とブレスケアを置いておき、眠る前には枕元に目覚まし時計を置いて、抜かりなくアラームをスヌーズでセットした携帯電話を充電しながら眠ったのです。準備は万端、ガソリンも満タンでした。


それなのに、深夜、しとしとと心地よい優しい雨音が。

その雨音に目を覚まし、カーテンを開けると、恐れおののくほどの勇ましい稲光。

思わず、

「ガビーン」と、つぶやいてしまいます。

やがて、車のボンネットを殴りつけるような音が始まり、激しい雷雨が降りだす。

ああ、無情にも、明日への夢が、希望が、家族の絆が、下心が下水道に雨と共に流されていく。

もはや、言葉はありません。

暗闇の部屋に灯る一つの光。携帯電話の液晶画面の光。明日の降水確率80%。希望の光もありませんでした。

涙さえこぼれ落ちてしまいます。

その雨こそ、私の涙なのではないでしょうか?

とさえ思うのでした。


そんな経験はないでしょうか?


そんな憂鬱な雨の日をどう過ごすかを考えてみました。

ただ、読んで時間を無駄にしたと、感じさえするかもしれません。

無駄な時間を感じる事もまた、恵まれた環境、素敵な人生、お金がなくとも、恋人がいなくとも、自分には暇を持て余す時間はあるんだと、ポジティブに考えていただければと、願っております。

今、ほぼ全ての結論を言ったために、これから提案するネタは二番煎じになる可能性があります。






1.~雨乞い~


雨男に雨女。あんなに楽しみにしていた遠足が中止。笑顔のてるてる坊主も、もはや首吊り状態の不気味なティッシュの人形と化してしまいました。

友達は泣きながらこう言いました。


「お前がはりきると雨が降るんだ。お前のせいで楽しみがドブの中に流されたんだ。遠足の時も運動会時も夏祭り時も」


テレビの中継で流れるあの悲惨な洪水も津波も、みんな自分のせい?と、さえ思ってしまいます。

いっその事、自分も人間てるてる坊主に。

などと考えてはいけません。

案外、お金になるかもしれません。


雨男と呼ばれて早三十年。いつしかオファーが来るのです。

タイからインドから干ばつの被害に苦しむ国々から、


「あなたがいれば、大雨が降ると聞きました。ぜひ我が国へ」

と。


早急に、今の仕事をやめ、新会社の設立を。雨も降らせるついでに、日曜大工、板金塗装、何でもやりしょう。

悲しい思いをしたからこそ、人の悲しみがわかる。熟年夫婦の離婚問題に、ご近所同士のいさかい、嫌な顔一つせず聞き、トラブルの解決も。その包容力と人情味厚い人柄が評判を呼び、大繁盛。


「この雨は、私が降らせているのでありません。神様が、何度も辛い失恋をし、涙を流しているのです。私は、辛い時は泣けばいいよと語りかけているだけです」


と、謙虚ながらもロマンスチストっぷりに女性にも大人気。

気がつけば、美女をはべらせ、庭にプール付きの豪邸を建てるほどの億万長者に。

いつからか、水色の装束を身にまとった集団の教祖様になり、こうあがめられるのです。

『ミスター雨フラシ』

と。

テレビや雑誌の取材、生中継に世界が注目。

しかし、肝心な時に限って雨が降らない緊急事態。仕方がありません。

欲に溺れるとこういう事になります。


ひたすら、雨雨ふれふれと、祈り続けましょう。

かれこれ、五十年ほど祈り続け、飲まず食わずで脱水症状にもなり入院。

病院のベッドの上で、死ぬ間際、奇跡が起きました。

病室の窓の向こうに見えるのは雨。

詐欺師と呼ばれた罪悪感も流していく事でしょう。


天を仰ぐ大きなガッツポーズでこう言いましょう。


「やった。雨を降らせたぞ!わしが、ミスター雨フラシじゃ」と。

「はいはい、おじいちゃん」


その雨は、町や自然を飲み込み、一都市が崩壊するほどの大災害になったとか。




2.~ゴロゴロゴロ寝 ~


ひたすらゴロゴロする。

ゴロゴロ、布団の上でゴロ寝をしながら、


「あー、退屈だぁ。何かいい事起きないかなぁ?隣に多分住んでる可愛い女の子が、肉じゃが作り過ぎて、良かったら、なんてお鍋に持ってきてくれるとか」


と、しまいには頬杖をついてつぶやいているあなた。そこの独身サラリーマンのあなた。

退屈を楽しみましょう。それこそが幸せの証拠です。退屈とは素敵な事です。

貧乏暇無しな方、戦争区で怯えて暮らす方。何だかんだで忙しい方がいる世の中。

そんな世の中で、退屈だと思える時間がある余裕と豊さがある。

むしろ、罪悪感を感じてもいい位。ご飯を食べてすぐにゴロゴロゴロ寝して、栄養が全て脂肪に変わって太ってもいい位です。そう思われる程幸せなのです。

ただし、せっかくの休みに、あまりにゴロゴロし過ぎていつの間に深い眠りについてしまう事もあります。

気がつけば午後9時。見たかったお笑い番組を見過ごしてしまったという事にならないように注意を。


ちなみに、あんなにも大好きだった彼氏や夫。付き合いたては、一緒にいれるだけで幸せだった。

まさかこんなに退屈な男だったとは。今や、退屈どころか一緒にいるだけで腹が立つ。

それは危機です。早めになんとかしましょう。


ちなみにのちなみに、退屈以上に幸せなものは、退屈を感じない楽しい休暇らしいです。




3.~たたずむ~


今日は、彼女の仕事がお休みの日。内緒で彼女のお家へ行っちゃいましょう。


雨の中、カッパを着て、彼女の家の前に電信柱の影にたたずむ。

2階のピンク色のカーテンがある部屋にいる彼女の部屋を見つめ、たたずむ。いえ、見守るのです。

ストーキングではありません。あくまでも、見守るのです。

まだ彼氏ではありませんが。


豪雨にも負けず強風にも負けず、真夏の暑さにも負けず見守ってくれています。

ハァハァと呼吸器系が狂うほど。これほどあなたを大切に思ってくれる人はいないでしょう。


たたずむ。もとい、見守るあなたへ。


きっと、あなたの思いは伝わります。

ストーカーは、他の人よりもちょっと熱い人間なだけです。




4.~流しそうめん~


 赤いトタン屋根を小刻みに叩き、突き破りそうな豪雨。

その雨水はどこを伝い、流れていくのでしょうか? そう、雨どいです。

自然の猛威を利用したダイナミックな流しそうめんを提案します。

雨どいを、流れる雨水を利用して流しそうめんをすると言ったら、話は終わってしまいます。

よっぽど、悲しい事がなければ屋根に登る事はまずありません。


折角、ローンで買った一軒家。十年、二十年が立ち、定年退職した後も払い続けなければいけないのに、返済のめどがたたない。死ぬまでに払い終えるのだろうか?いっその事、売り家にしてしまおうか?


「いや、娘たちが生まれ育ったこの家をなくすのは、最愛の家族との思い出を消すことと一緒だ」


そんな思いと汚れとその家の歴史が詰まった家。

そして、何よりも家族を守ってくれているのが屋根です。

色あせたピンク色と化したトタン屋根であればあるほど、コクと旨味が溶け出すのです。


その時、妻と娘の悲鳴が雨の中に響く事態が。

足をすべらせパパが屋根から流れてくる。箸ではつかめません。

腰を落として体で、あれば愛でつかむのです。


雨どいは、壁に沿って垂直に設置されているために、そのスピードを計算をしてタイミングをはかりましょう。また雨どいは、中の見えない完全な筒状のために、そうめんのみならずじゅんさい等を流すいたずらにより、闇鍋のようなスリリングに盛り上がれます。




5.~したたせる~


就業時間、帰宅しようと会社を出ると外は雨。

天気予報を見てこなかったために。

こちらをにやつきながら、横目で見た挙げ句、鼻で笑い、通り過ぎる用意周到に傘を持ってきていたイケメン同僚。女子社員からは、


「きっと、仕事もデートも段取りがいいはずね」


と、わけのわからぬ高評価をされるんでしょうね。

あきらめてはいけません。ここで、ダンボールに入った捨てネコがいないかと思ったりしてはいけません。いません。おもわぬ展開で、女子社員から相合い傘のお誘いがある。はずがありません。

いかにいさぎよくスマートにずぶ濡れになるか。そこに賭けるのです。

水もしたたるいい男と言いますから。顔がいいのが条件である事は言うまでもありません。

とにかく日頃、女子社員には、優しくしておきましょう。

相合い傘はなくとも、百円均一で買ったビニール傘位は貸してくれる(=もういらないからあげる)はずです。




6.~5の2~


忍者になり、かわしてみるパターンです。

男性の3割は子供の頃、忍者になりたいと思ったはず。男らしさはありませんが、夢と希望とバカっぽさがあります。忍者になりきり、雨のつぶてをかわしましょう!

女子社員に聞こえるか聞こえないか、さり気なくこう言って飛び出すのです。


「さて、この雨をかわしながら風のように帰るでごさる。忍法、雨かわしの術。略してニンニーン!」


いさぎよく人として負けを認めましょう。

決して、困ったふりをしてチラチラ見つつ、相合い傘アピールなんてしないように。

あまりの怖さに傘ごと貸してくれる可能性もありますが。




7.~素振り~


ぶっちゃけ、雨があがった後の楽しみ方です。

駅のホームで見かけるサラリーマンが素振りをする光景。ゴルフに、野球に、ビリヤード。道具一式を買うほどのお小遣いはもらってないけど、イマジネーションは誰にも負けません。

年季の入った傘は、ドライバー、バット、キューに見え、ウェアにサンバイザー、ベースにリストバンドに、ビリヤード台のあるバーに、注がれたブルーハワイまで見えてきます。

もはや、傘でラウンドを回れるほどの技量がそなわっている事でしょう。

誰が彼らを失笑できるでしょうか。

彼らの一振りが明日の日本を支えていると言っても過言ではありません。

「ナイッショー」ぐらいの一言を言ってあげましょう。

大仕事のホールインワン、満塁ホームランをねらうための活力となります。

ちなみに、バントの練習している方。そこそこ出世する世渡り上手なタイプです。

人生は送りバントくらいが丁度いいのです。



8.~捨てネコ~


したたせるから生まれたパターンの過ごし方です。

雨に打たれるダンボールに入った捨てネコ。しゃがみこみ、そっと優しく抱きしめる。

偶然、たまたま、女子社員がその現場を目撃。

これこそが、最大のモテ雨の日の過ごし方ではないでしょうか。

とは言うものの、ダンボールに入れられた捨てネコがいる、女子社員に目撃される可能性は、雷に打たれる確率よりもはるか低いのは言うまでもありません。

例えて言うならば、初恋の相手と浮気する事なく、愛を育み、ボケても献身的に介護され、一生添い遂げ、同じ墓に入る。と、同じくらいの確率なのです。

ネコを捨てない事を願ってやみません。



9.~水族館~


やっぱり定番は水族館です。

楽しいです。一番のおすすめです。

映画館とかもいいですよ。



                                      

     

 ~おしまいに~



天気予報と男の「浮気してないよ」

どちらがあてになるでしょう。

男の浮気なんてレジャーみたいなもの。大きな波が目の前にあれば、後先考えずチャレンジしたいのが、男の、野生の本能。簡単に言えば、命知らずのバカなのです。

公園の遊具で回旋塔なるものを、全力で高速回転させ、吹き飛ばされないように遠心力に耐える。

そんな遊びをする小学生と同じレベルなのです。かわいいものです。


テレビに出る天気予報士には、可愛いお姉さんが多い。男性は、予報が外れる事など気にしないのです。

むしろ、天気の事などどうでもいいのです。ノー天気なのです。

家に帰れば、妻の笑顔を作れなくとも、鬼のような顔に舌打ち、ため息をつかせないように空気となるのが仕事。会社に行けば、手揉みごますりで上司のご機嫌をとり、女子社員に影で、


「シュレッダーにつっこんで、この世から田村係長と言う存在とか情報とか消したくね?」


と言われる。そんな日々の憂鬱な出勤前に、お天気お姉さんの笑顔になんだか心が晴れる。

可愛いお天気お姉さんを起用する必要性がここにあります。



晴れがあれば雨がある。

山があれば谷がある。

それが人生であり、日常の試練です。

ただ、あなたの存在が、ちょっとした仕事がどっか知らない人達の笑顔を作り、様々なストレスのはけ口になっている事を考えて頂けたらと思います。


そうすれば、きっと雨が降ろうが知ったこっちゃなくことなるでしょう。





                                        

                                                            おしまい

                                 

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