第1話、大切なモノなんていらない
大切なモノ。
それは、1番失いたくないモノでもある。
だけど、いずれは失ってしまうモノ。
どうせなら、大切なモノなんて作らなきゃいいのにね。
「おはよう」
と友達の高梁明海が明るい声で言う。
「うん。おはよう」
と私も元気に言う。
私の名前は、高橋晶菜です。私立青空学園、中等部に通っていて一年A組です。
制服は主にセーラー服かなぁ。服についてのきまりは特にない。
髪の色はなんでもよくてほとんど自由きままな学園だ。
明海も一緒で一年A組です。明海とは青空学園の小学校の部の入学式に会いました。
それからだんだん仲良くなって、クラスも全部一緒だった。
今も、一緒のクラスで仲良くしている。
「ねぇ、晶菜って好きな人いないのぉ?」
と面白そうでコギャル風に杏奈は私に聞いて来た。昔っからそんな喋り方で私もそんな喋り方になってしまったのだ。私は言い返すように
「じゃあ、そっちはどうなのよぉ」
「私はぁ、いるよっ」
とちょっぴり照れぎみの杏奈は、
私が言ったんだから晶菜も言ってという目をしながら、
「ねぇねぇ。晶菜は?好きな人、いないのぉ?」
と妙に優しく言う。
「いないに決まってんじゃん」
昔っからそうなのに、杏奈はいつも聞いてくる。
うんざりだ
「なんで、いつも好きな人作らないのぉ?」
「だからぁ、大切な人を作ってもぉ、私には意味がないのぉ」
といつも通りの答えをする。
「私は、晶菜が大切な人なんていらないって言った理由は知ってるよね」
「う、うん」
と私はか細く、小さい声で言った。
思い出したくない。
また、明浩は私の前から消えていく。
明浩が、明浩が・・・・・・。
また、私の前で・・・・・死んでしまう。
何でぇ。何で?ガクガク震えながら、私は思い出してしまった。
悪夢を見ているかのような時間を・・・・・・。