くるくる回ってすってんてん
小さい猫がにゃーにゃー鳴いてる夢を見た。
片手で持ち上げながら撫でると猫パンチしたり目を細めたりしてとても可愛かった。
目を覚ますとそこには片手じゃ持てないほどまん丸太った毛玉がいた。
毛玉「餌まだ?」
人物表
エウナ
吸血鬼 金髪ロング ドレス 記憶力皆無
楓
魔法使い 長い黒髪を後ろで束ねる 赤いコートの巫女さん 第1話で名前を間違えられました
アリス・イン・ワンダーランド
魔術師 銀髪ロング わんぴーす 恋人は女の子 本人も女の子
ミツキ
クラゲ ミズクラゲ そういえば詳細設定一番不明ですよね
「そういえばあなたって喋れないの?」
(ふるふる)
「ふーん、喋れないわけじゃないんだ」
(…こくん)
「…」
(…)
「…喋りたくないならソレでもいいけど、色々と不便じゃない?」
(ふるふる)
「まぁ、あなたがそれでいいならいいけど…というより、あなたと話してると独り言みたいね」
(…)
「そんな困ったような顔しないで。ほら、乾杯しましょう」
カチン。
□ □ □ □
雲の間から差し込む月明かりが照らす草原を、二人の少女がくるくると回っている。片方は赤色、もう片方は水色の少女たちは優雅に近づいたり離れたりを繰り返しており、まるで二人でダンスを踊っているよう。
しかし少女たちの手には、長さこそ違えどそれぞれ刃の付いた獲物があり、そうしてみると優雅な踊りも殺伐としてくるわね。巫女服を着た方の子は動きの中に打撃も織り交ぜているから、余計に。
そんな光景を肴にしながら一人ワインを飲んでいると、軽い衝撃と共にやわっこいものがが背中に襲い掛かってきた。
そしてその衝撃の元凶は離れるどころか、前へと腕を回して来て離れる気がないことを無言で伝えてくる。
「…何してるの?」
「んー、抱き心地が良いかどうか気になったもので…意外と暖かいんですね」
衝撃でずれた位置をお面を直しながら、サラサラと肩に掛かって来る銀髪へと問いかけてみるも、当然ながら返事は私の頭の後ろから来た。髪が返事したら怖いけど。
「で、どう?」
「ルカさんの方が良いですねー」
「…」
誰よ、それ。
私が未知なる誰かに負けたことについて考えている間も、アリスは私の背中から離れずに抱きついたままだった。それにしても軽いわね。
「あなたちゃんと食べてるの?」
「…」
「…もしもし?」
「ん?んー…?ちゃんと食べてますよ?」
…今寝てなかった?
とはいえ、きちんと食べてるのに子供みたいな体にしかならなかったのね。
「む、なにやら失礼な事考えてません?」
「気のせいよ。そういえば仕事は終わったの?」
このまま追求されると苦しくなりそうなので、視線を髪から戦ってる楓たちの方へと向けると話題を振る。い、今楓と目が合ったような…。
「まだですけど、後は待つだけですからねー」
「へぇ、随分と雑なのね」
「最近の生態調査なんてそんなものですよ。探知魔法使って待つだけー」
「ふうん…」
頭の上にぐりぐりと押し付けられるあごを感じながらワインを注ごうとすると、突然横から伸びた手がボトルを取り去っていった。
「手酌は出世できませんよ」
「…何に出世するのよ」
「んー…魔王ですかね?」
「それなら出世できなくて良いわね。あなたもどう?」
「私はいいです。お酒呑めないので」
「そう…」
とくとくと目の前で告がれていくワインに気を使いながら問いかけてみるも、返ってきたのはつれない返事。いい加減一人で呑むのも寂しくなってきたのだけれど、しょうがない。
再びグラスに満たされたワインは赤黒い色をしており、まるで血のよう。そういえばパンは肉らしいけど、ワインは水か血かどっちだっけ?
ぼーっとどうでも良いことを考えていると、楓が短刀を弾かれ、戦いが決した様子が見えた。雲の切れ間から差し込む月明かりを受け、銀色に輝いた短刀がくるくると回って飛んでいく。
「何者なんでしょうね?」
その様子を眺めていたら頭の上から声がした。
「…どっちが?」
「えーと…」
視線の先で、今度は2メートルほどはあるムキムキな石像が本人たちの代わりに戦っている。ただし、片方の像は下半身しかないしもう片方は上半身しかないので、その戦いはとてもシュール。というか知らない人が見たら黙って目を逸らす光景。
「ク、クラゲさんの方です」
「ああ、あっち」
下半身側の少女…名前なんだっけ?は謎の石像対決が始まるや否や、少女の姿をやめて普段のクラゲへと戻っていた。
「そういえばアレって何なのかしらね…楓の使い魔じゃないの?」
気が付いたら居たような気がするし。
「使い魔じゃなさそうですが…それよりもエウナさん知らなかったんですか!?」
「知らないわね…そんなに変なの?アレ」
見れば下半身が己の機動力を生かして上半身の後ろを取り、執拗に蹴りを入れている。上半身は何とか腕を回して対抗しようとするも、悲しいことに足がないから移動すらも上手くできていない。どう見ても勝負にはならない光景なのだけど…何で上と下で2つに分けたのかしらね?
しかし下半身側も蹴りを入れるたびに軽く飛び跳ねて居るのは衝撃が強いのか、それとも痛いのか…どちらにしても意味不明な戦いであることに変わりは無いでしょうけど。
「…あなたの竜も同じ様なものじゃない」
「あの子達と一緒にしないでくださいよ!」
余りにも見てられないので空を眺めながら呟くと、悲しいことに聞こえたのか、アリスがぽこぽこと頭を叩いてくる。別に痛くは無いけれど、衝撃でお面がずれるずれる、ワインが零れる零れる。
「わかった、わかったから叩くのをやめなさい。投げるわよ?」
「魔法にも出来ること出来ないことがあるんです」
頭上からの襲撃も止むと、地へと散っていった儚きワインたちの補給をしながらアリスが言った。
「そうなの?」
「はい、それぞれちゃんと制約があってその制約の範囲内の事しか出来ません。簡単に言うと、水辺の近くで火を使うのはかなり難しいです。
クラゲさんみたいに自由に姿かたちを変えたり出来るというのは…見たことも聞いたことも無いですね」
「つまり?」
「禁術、もしくは古代魔術ってことです」
「…」
…あのクラゲってかなりすごかったのね。というかアレはクラゲなのか人なのか
「…魔法って便利そうに聞こえるけど、意外と不便なのね」
「まぁ…何でも出切るわけじゃないですが選択肢が増えるのは良いことですよ。こういう仕事の時とか、焚き火するときとかも便利ですし。
要は使い方次第ですよ使い方」
背後例の如く後ろにへばりつく魔術師はそう結論付けると、また私の頭の上にあごを乗せて全てをゆだねる体勢。少し熱気の残る夜の上、後ろに体温上昇要因がいるのでたまに吹くそよ風が心地よい。
ふと、先ほどの戦いの続きを見れば上半身が体ごと腕を回転させて空へと飛び去り、下半身はその脚力でジャンプを繰り返し白熱した空中戦を繰り広げていた。
「・・・アレは魔法なの?」
「・・・どうなんでしょうね」
雲の間から覗く星空に舞う、片方は上半身だけ、もう片方は下半身だけの2つの筋肉。飛び散る石片、絶え間なく続く岩と岩がぶつかる音。華々しく両腕を回して天高く上っていく上半身の姿は、何処か輝いているようにも見える。そのまま墜落して地獄にまで落ちろ。
「そういえばアリス?私のドレスの洗濯のことなんだけど・・・」
「そろそろ休憩も止めにして働きに行かないと!」
アリスはわざとらしくそう言うと、私の話を最期まで聞かずに走り去っていった。
・・・逃げたわね。
□ □ □ □
「えーうーなーさーんー」
ようかいみこがあらわれた。
「つーかーれーたー」
ようかいみこのだきつき、わたしはつかまってしまった。
「つーかーれーたーのー!」
「・・・」
楓は私の腿の上で同じ言葉を連呼している。むしろ憑かれたのは私の方なんだけど。
それにしても、一体私に何を求めてここに来てるのかしらね?生憎と疲れを癒す方法は全く知らないのだけれど。
「ワイン飲む?」
「ちゅー?」
うん、全て無かったことにしようそうしよう。
そう結論付けると片手で彼女のほっぺを伸ばして遊ぶ。おおー、まるで餅みたい。
「いひゃい、いひゃいです」
そうしてしばらくの感触を堪能していると、やがて捕まっていた手を話して抵抗し始めたので渋々手を離す。
「むー、伸びてないですか?」
「よく伸びる良い子に育ちなさい」
「慎ましい淑女に私はなりたいです」
「それは・・・難しそうね」
「何で何でー!」
寝転がったままびったんばったんと暴れだす楓。そういうとこを直さない限り淑女はありえないでしょうね。
「そういえばあのクラゲは?」
「ミツキですか?あの子なら飛んでった石像を探すとかで何処か行きましたよ」
「・・・アレって探さないといけないものなの?」
「後始末はしっかりするように言われてるらしいです」
「・・・そう」
ホント、変なところで律儀なクラゲね。
「そういえばアリスさんはまだお仕事?」
「あー・・・アリスね・・・」
そこで切るとアリスが去っていった森のほうをチラリと見る。
「アリスならほとぼりが冷めるまで森の中で大人しくしてるんじゃない?」
「それはそれは・・・世知辛い世の中ですね」
「ええ、ホントにね」
ワインの染みは取り辛いし、この服どうしようかな。
そうこうしてる間に眠くなってきたのか、楓はうとうとと目を閉じ始めた。
「眠いの?」
「んぅ・・・」
眠たそうにしている彼女の頭を撫でれば、黄金色の耳がぴくぴくと動いて少し面白い。
しばらく月と雲と星空景色を肴にワインを飲んでいると、下から微かな呟きが聞こえてきた。
「森の中で・・・綺麗な人を・・・見たんですよ・・・」
目を向けると寝ぼけているのか、楓は誰かに向かって話しかけるように言っている。
「金髪の・・・綺麗な人でした・・・」
「そう」
私はぽつりぽつりと呟かれる言葉に相槌を打ちながら、一人空を見上げる。
「いつかココを出たら・・・色々見て回るの楽しみですね・・・」
聞きなれない名前に反応して彼女の方を見ると、目じりから水滴が流れ落ちるのが見える。
その何かを指先で軽く拭うと、突然楓は目を覚ました。
「・・・?」
「良い夢は見れた?」
「氷華・・・ちゃん?」
ふふ、まだ寝ぼけてるのね?この子は。
「あ・・・」
「んー?どうかした?」
「え、えへへー・・・」
私がにっこりと微笑みかけると、楓も引き攣った笑顔で応えた。
「ねぇ楓?」
「な、何ですか?エウナさん」
「だーれと間違えたのかしらー?」
「なな、何のことでしょう?」
目が泳いでるわよ?
どうやらシラを切る様子なので涙を拭った手を反転、全力で楓の頬を突付く。・・・おお、これは意外と癖になりそうな感触。
「さ、刺さっちゃいます!刺さってますって!」
そのままつんつんぷにぷにとしていると、本格的に楓が暴れ始め、私たちの間で静かな戦いが始まった。
でも噛み付かれて指先の危機を感じたので数秒後には終戦した。
・・・何でこうなったんだっけ?
「ねーねー、エウナさん」
「ん・・・?」
こうなる経緯を思い出そうとするにも、思い出せるのは楓のもち肌のみ。・・・今度機会があったらまた狙ってみよう。
「目覚めのちゅーは?」
「地面としたい?」
「ぶーぶー」
天使の如き微笑で返すも徐々に膨れていく楓の頬。・・・はぁ、しょうがないわね。
私は一つため息を付くと周りに人影が無いか見渡し、そっと彼女へと顔を近づけた。
□ □ □ □
暗い森の木の陰で、その一部始終を見つめている少女がいた。
少女は長い銀色の髪に藍色のワンピースを着ており、木の陰でぶつぶつと何かをいっている姿はとても怪しく見える。
「パ、パル・・・いえコレは拙いですね・・・それにしても妬まし・・・」
とても、怪しく見える。
「ダメです私!山田たいちょーも言ってたじゃないですか!」
アリスは自身を鼓舞するようにして一人呟く。ちなみに、とても怪しく見える彼女だが、幸い周りに人はいない。
実際に彼女の目の前では黒い帽子にマスク、そしてコートという怪しさ大爆発の男がいた。周りに人はいないが、別にいても彼女の幻想なのでかまうことは無いだろう。
『いいかい?アリス君、一度でもバカップルを経験したものは、他のバカップルを妬んではいけないよ?』
静かに諭すように変態は言う。
しかしソレもつかの間、変態の横から黒髪美人の女性が現れて状況は一変する。
『山田様、どうかなさいましたか?』
『おお山口君!実はアリス君に人間性の何たるかを説いているところでね』
『まぁ、さすが山田様です』
『ハッハッハそうでもないよ』
少女の目の前で展開されるのろけ、持つものと持たざるものとの差が今ここに明確に現れる。
「バカップル爆発しろ!」
ついにアリスの堪忍袋の尾も切れ、幻想相手に石を投げつける始末。しかし効いたのか、幻想の中のバカップルは何処かへと消えていった。
「私だって・・・私だって・・・」
一人呟くアリスの肩を叩くものがあった。
アリスがそちらを見ると、そこに居たのは宙に浮くミズクラゲ。
「あなたも・・・なんですか?」
悲しそうに触手を振るクラゲを見た瞬間、二人?は意気投合し、クラゲの持っていた酒瓶で乾杯となった。
暗い森の中、2つのグラスが寂しくカチンと鳴る。
お久しぶりです
いきなり3話目から読み始めて初めましての人はいないと思いますが、初めましての人は初めまして
前話から2,3週間くらい空きましたね
それほど空くと閲覧数も良い感じに過疎るのでチェックも疎かになります
まぁ自虐ネタはこの辺にすることにしましょうか
さてさて、だれてめぇ見たいな名前の人が割と出てきますが・・・まぁ他作品に出た子ということで気にしないでください
たまに出てきますが別に知らなくても問題は無いと思います
次話のネタはもう考えてありますから・・・早ければ1週間には出るでしょう
といいつつ、1ヶ月になる可能性も無きにしも非ずなのでお待ちいただける方はだらだらお待ちください
一応月1更新目標ですから!
ではでは、お読みいただきありがとうございます
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです