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変わらない非日常は変化を得て骸を作る

お久しぶりです

安定の1月投稿


さてさて、前話から気づいているとは思いますが、私にしては珍しく1話完結じゃありません

1話完結式といいながら1話完結してないわけですが!もう終盤なので多めに見てやってください

まぁほとんどの人はそんなことはどうでもいいと思ってくださると思いますが!


今話判りづらいかも…そうだったらごめんなさい


ではでは!

人物表

エウナ

吸血鬼 吸血鬼である理由を考えたらダメだZE☆


魔法使い 偽名連打で3人目 ちなみに1作目の時の名前は来夢(ライム)です


アリス・イン・ワンダーランド

魔術師 ヒロインから一転、サブキャラの立ち位置に


氷華(ヒョウカ)

旅人 やっと登場 

 変わらないのはいいこと?悪いこと?

 ねぇ、どうしてあなたは知らなくてもいいことを知ろうとするの?

 知らなければ、ずっと変わらない日々が続くというのに。

 それとも…変化を望んでいるのはボクの方なんでしょうか?

 わからないですよ…エウナさん。



□ □ □ □



 アリスと楓、二人が入院してから数日が経ったけれど、楓は一向に目を覚ます気配がない。


「ねぇ、楓…?」


 ベットの上、目を閉じたまま動かない彼女の頭を撫でる。意識なし、外傷なし、原因不明、担当らしい医者からは、これ以上なにもすることがないという事だけを回りくどく伝えてくれた。


「私はどうすればいいの?」


 さらさらと黒髪を梳いても返事はない。彼女の狐耳は時々ピクピクとも動いて、呼吸音と体温の温かさもある。見ているだけなら、眠って夢を見ているんだけじゃなんじゃないかとも思えるほど。

 しばらくの間そうしていたけれど、ミツキを探しに行くために立ち上がる。あの子もあの夜から姿が見えず、嫌な予感を振り切るための捜索だけが続いている。

 何もできず、ただ空虚な時間だけが浪費され続けて、春を迎えた。



□ □ □ □



 今日も今日とてミツキ探しは空振りに終わり、気分転換にアリスのところでも見に行くことにした。


「入るわよ」


 深夜だというのに明かりが漏れている病室のドアをノックすると、返事は聞かずに勝手に入る。

 中では、病人には見えないほど健康そうな銀髪の少女が新聞を開いていた。けれども服の下は包帯だらけで、体を起こすくらいしかできないらしい。


「もう、れでぃーの部屋に入るならきちんと断りを入れないとだめですよ」

「もう少し育ってからレディーとか言いなさい」


 適当に返事をすると、アリスは手に持っていた新聞を投げつけてきた。そもそもれでぃーって舌回ってないじゃない。


「というか、あなた寝なくていいの?」

「それが訪問して来た人の言う事ですか…」


 落ちた新聞を拾ってベットの近くまで持っていくと、呆れた顔で受け取られた。けれども読んでいた割には興味がないのか、アリスはその新聞をサイドテーブルに放り投げると、私に向かってぺかーって笑いかけてきた。


「だってエウナさんが来ると思ったから…」

「ああ、もう寝てたのね。それは悪いことしたわね」

「エウナさんー。入院生活退屈なんですから、お話しましょうよー」

「いいわよ、話題はないけど」

「ぶーぶー」


 ぶーぶーと唸り声がするのを無視して新聞に手を伸ばす。来てみたはいいけど、いざ顔を見ると別にすることもないのよね。元気そうだし。

 見出しには大きく、焼死死体やら他殺死体やらが大量に見つかったとかの穏やかじゃない文字が躍っている。というより…。


「この見出しの場所、前に私たちが泊まりに行った場所じゃない?」

「ん…?そうですね」


 何が面白いのか、くすくすと笑いながら答えるアリス。その雰囲気はどこかいつもと違う。


「そういえば、あなた仕事で行ったのよね?」

「はい、そうですよ?」

「…その仕事の内容は?」

「ホントは黙ってないといけないんですけど…まぁいいですか。ある風習を何とかしてほしいっていう内容ですよ」

「…で、あなたは仕事をこなしたのよね?」

「それがどうかしましたか?」


 ニコニコと笑いながら私の質問に答えるアリス。気のせいか、部屋の温度が少し下がった気がする。


「ねぇ…」

「エウナさん?」


 私の言葉をアリスは遮って続ける。


「もう終わったことなんですよ?今更掘り返してどうするんですか。エウナさんが知ったところで過去は変わらないですし、あなたには何も出来ない。それに、あなたが知るべきなのはそんなことではないでしょう?」

「…何を言っているの?」

「わからないんですか?」


 アリスが問いかけた時、私の頭に痛みが走った。思わず頭を抑えると、ひんやりとした手が頭に乗せられる。


「まぁ、わからないなら無理して思い出さなくていいんですよ。でも覚えてくださいね?何かを壊す事による解決法は安易に選択しちゃだめなんです。どうかそれだけは忘れないで…」


 そのまま、痛みが落ち着くまで頭を撫でられた。


「それに、今はできる事をしましょうか」


 私が顔をあげると、いつものアリスがぺかーっと笑って言った。



□ □ □ □



 車椅子にアリスを乗せて廊下を歩く。深夜にけが人を運ぶ私…人に見られたら要らぬ誤解を得そう。


「エウナさんって運び屋さんの才能がありますね」

「…何それ。運ぶのは死体って事?」

「無意識でも気遣って運んでくれるから楽ですよ」

「叩き落していい?」

「またまたー、なるべく振動させないように動かしてるじゃないですか」

「…」


 なんとなく癪なので振動を与えてみる。


「ああ!痛い!エウナさんの愛が…!ちょっと本気で痛いんですけど!」


 アリスは暫く騒いでいたけれど、楓の病室の前に着くころには静かになった。

 ガラガラと車椅子を楓のベットの近くまで持っていくと、アリスは目を細めて頭を撫でた。


「この姿を見るのは初めてですね」

「…何かわかるの?」

「んー…わからなくなくもないですね」

「どっちよ」

「…それにしても気に入らないですね」


 アリスは楓の頭を撫でながらぽつりと呟いた。


「ん?」

「ねぇエウナさん?今私達がこうしているのは、私達の意志でしてるんでしょうか?」

「どういうこと?」

「都合が良すぎるとは思いませんか?あの夜に落ちる私をエウナさんが見つけなかったら、私はここには居ません。そして、それは楓さんにも同じ事がいえます」

「…」


 アリスが何を言っているのか判らず、沈黙する。


「そもそも…私達は偶然出会ったんでしょうか?」

「それはあなたが…」

「最初に仕掛けたのは私だと…本当に思いますか?覚えてます?私があなた達を襲った理由」

「…大切な場所?」

「そうですね。そして楓さんはその事実を知ってて、あえてそこを住む場所として選んでいたんですよ?」

「…」


 そこまでいわれて、アリスの気に入らないという事が判った気がする。


「つまりですね。私…私だけじゃないですか、エウナさん以外の人はこの子の思惑のコマ扱いされている気がするんですよ。それが、気に入らない」

「…考えすぎじゃないの?」

「そうかもしれません」


 そこでアリスは撫でるのを止めると、サイドテーブルを引き寄せた。


「でも、そうじゃないのかもしれません」


 そこには誰が置いたのかもわからない、一枚の紙とペンが置いてあった。


「まぁどちらにしても舞台は整っていますし、私には私の出来る事をしましょうか」


 紙とペンを手に作業を始めたアリスの代わりに楓の頭をなでる。

 今の言うことが正しいとすると、お祭りで私がプレゼントを買ったのも…でもそうすると?へぇ?つまりは…そういう?なんだ、そうならそうと始めから言ってくれれば…。


「あ、猫耳帽子みたいな個人の趣味志向が激しく付く物は関係ないと思いますよ?」

「…心を読まないでくれる?」

「人が真剣に作業してるときに変な妄想しないでもらえますか?」

「ごめんなさい」


 むしゃくしゃしたので件の耳を撫でる。さらさらとした手触りのソレは、撫でていると時折ピクピクと脈動する。仄かに暖かくて、私が思ったとおりにとても手触りがいい。

 あ…ヤバイ。コレ癖になりそう…。


「エウナさん?何してるんですか?」

「…ちょっと宇宙の神秘に思いを寄せてまして」

「へー…」


 無心となって撫でていたけれど、悲しいことにその至福の時間は鶴の一声で遮られた。

 そうなるとすることもないので、ぼーっとアリスの作業が終わるのを待つ。


「ところで何してるの?」

「魔方陣が必要なので作ってるんですよ」

「へ、へぇ…」


 聞いてみたけどよくわかんないので、アリスの姿をじーっと見つめる。


「説明してもわからないと思うので簡潔に言いますけど、エウナさんは楓さんと一つになってもらいます」

「ま、まさか…せ、性的な意味で?」


 まさかと思い聞いてみると、アリスは重苦しい顔でこくりと頷いた。その瞬間に脳内を駆け巡るドリームアイランド!桃色風景!桃源郷!別に動かない体もお人形さんごっこみたいで良いなとは決して…決して思って等いない!なぜなら私は紳士だから!


「精神的な意味で」

「私の夢を返して!」


 思わず叫んだ瞬間、巨大な竜の拳だけが空間から現われ、私のボディにめり込んで消えていった。


「深夜ですから落ち着いてください」


 車椅子の下に沈む私に降り掛かる冷たい声。あなたには血も涙もないの!?


「説明すると、エウナさんと楓さんは繋がってたんです」

「それは性的な…「どちらかというと(のろ)いですね」」

「けれども、今はその繋がりが強引に断ち切られている状態になっています」

「…」


 なるほど、わからん。


「つまりは軽い以心伝心状態だったんですけど、今はそれがないんです」

「…も、もう少し判りやすく」

「以前はバッキンアイスが繋がっていた関係。そして今はパッキンされて、楓さんの方が砕かれてる感じです」

「ふむ…」


 なんとなく判ったような気がする。つまり私達はアイスの様な関係だったのね。


「で、何をすればいいの?」

「楓さんはずっと夢を見ている状態なので、エウナさんはその中に入って何とかして貰います」

「…そんなこと本当に出来るの?」

「私だってコレだけ休めばそれくらいは出来る様になりますよ」

「そ、そう」


 そういう意味で聞いた訳じゃないのだけれど、別にいいか。


「それに、理屈上魔法に出来ないことはないんですよ?」

「…そうね」


 少なくとも、私はアリスを信じるしか出来ない。


「最も…帰すのは経験がありますけど、送るのは未経験なんですが」


 …さらりと聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたので思わずアリスの表情を見るけれど、そこにはとても綺麗に微笑んだ顔しかなかった。し、信じていいのよね?信じるからね?ね?


「出来ましたー」

「そ、そう…出来たの」


 出来てしまったのね。

 アリスの手元には魔方陣が書かれた紙。で、どうすればいいんだろ。

 何かをすればいいということだけが判っていて、具体的に何をすればいいのかが判らないのでどうしようもない。私がぼーっとしていると、アリスは楓のベットに手を突っ込んで細くて白い何かを引っ張り出してきた。

 色白なそのお手手には誰かさんがあげた指輪。今考えると相当恥ずかしい贈り物してるわね、誰かさん。


「それではお手を拝借」


 アリスは楓の手を魔方陣の上に乗せてから、私の手を取る。そのまま楓の手の上に載せ、お手手とお手手が重なり合う。

 さて…どうすっぺ。

 特に何も思いつかなかったのですりすりと手をなでてみると、彼女の手は柔らかくてすべすべで…。

 あ…ヤバイ。コレ癖になりそう…。

 一心不乱に撫でていると、後頭部を強い衝撃が襲ってテーブルに叩きつけられた。


「あ…ごめんなさい、手が滑りました」

「…」


 顔が上げられないのは怒りと悲しみの慟哭を心の中であげているからであって、冷たい声が後頭部に降りかかったのが怖いからではない。


「頭は冷えましたか?」

「はい…ごめんなさい…」

「あ、一つ言い忘れたことが」

「何?」


 アリスは先ほどとは変わって真面目な表情になると、告げた。


「エウナさんがこれから行く所はあくまでも夢の中です。そこでは何が起きたとしても不思議ではないですし、何がおきたとしてもエウナさんの責任ではありません。だから…悩まないで」

「…?え、ええ…」


 全く良くわからないのだけど、とりあえず頷いておく。そろそろ判らない続きで頭がパンクしそう。


「それでは目を閉じて、楓さんのことを強く思い描いてください」

「それだけでいいの?」

「はい」


 どんなことをするのかと思ったら…まぁ、それでいいならいいか。

 少し拍子抜けしながら言われた通りに目を閉じると、楓の手を握る。そうしていると、彼女の手に嵌めてある指輪が手のひらで感じられて、あの夜のことが思い出された。

 落ちていく誰か。

 どんなに伸ばしても届かない手。

 どうしようもなく感じられる無力感。

 ねぇ楓?私は…あなたに何が出来るの?

 問いかけた瞬間、私の意識は闇に落ちていく。


「…どうか呑まれることなく、きちんと帰って来て下さいね」


 最後に誰かの声が聞こえた気がする。



□ □ □ □



 糸が切れた用に倒れるエウナを見届けてから、アリスは深く息を吐いた。


「これでいいんですか?」


 窓から差し込む月明かりを見ながら、アリスは誰かに問いかける。


「ところで、私はどうやって部屋に戻ればいいんでしょう?」


 返事が無いからか、それとも別の理由からか…彼女は憂いを帯びた顔で窓の外を眺めながら、ぽつりとつぶやいた。



□ □ □ □



 目を開くと、そこは暗闇の中だった。

 頭がどこかぼーっとする。確か…楓の夢の中に入ったんっだっけ?でも、ここは何処だろ?

 辺りを見渡しても明かりは無い。明かりどころか音すらない。軽く足を上げて床を踏みつけてみたけれど、音は出なかった。

 ここは室内なのか、それとも外なのか、それすらも私にはわからない。意識と世界が溶け込んで、自分が居るのかどうかがわからなくなってくる。

 それでも何かがあるのが見えて目を凝らすと、闇に溶け込みそうな一人の少女が見えた。

 彼女は生気の無い虚ろな目で宙を見つめていて、白装束を着ていた。黒い髪はサイドの部分だけが少し長くて、他は肩の辺りで切られている。

 私はこの子を知っている…?

 徐々に鮮明になっていく頭で、この子の事を思い出す。

 遠い昔、もう幽かにしか思い出すことは出来ないけれど…この子は私と一緒に居てくれた。姿を変えて、名前を変えて、私が忘れてしまっても…それでも私の事を忘れないで傍に居続けてくれたあの子の事だけはなぜか思い出せた。

 来…夢…?

 思わず零れた呟きは音として響くことはなく、虚空に消える。

 今私の目の前に居るのは来夢なの?それとも…楓?

 聞こうにも私の声は出ず、目の前の少女は虚ろなままで何も反応しない。感情が無いかのように、ただ宙だけを見つけている。

 私がじっと見つめていると、少女は無機質な顔のまま頭を動かした。

 目が合った気がする。

 思わず一歩後ずさると、背中に何か当たるのが感じられる。その何かかはぐにゃりと沈み込んで、私の体を呑み込もうとしてきた。生暖かく、やわらかいその感覚には覚えがある。その感覚に思考が追いつくよりも早く、私の体はその何かから飛びのくようにして離れた。

 離れてから何かがあった場所を見ると、そこには凹みがゆっくりと戻っていく黒い壁。その様子を見ていたら、それが何であるのかを思い出した。

 確か結界じゃなくて…封印だっけ。違いは、中のモノがどうなっても外に出さないこと…。そこまで思考が進むと、また少女のほうを見る。封印されているのってもしかして…。

 けれどもすでに彼女はこちらではなく、さっきまでと同じどこか一点だけを見つめている。

 どれくらいそうしていたのか、突然少女の見つめている場所から光が溢れてきた。

 突然の明かりに思わず目を細めると、何かを持った人型の影が入ってきて、再び部屋は闇に閉ざされた。けれども今度は長くは続かず、ポツリと小さな明かりが暗闇を照らす。

 入ってきた誰かが手に持っているランタンの様な物の蓋を開けると、何度か明るくなったり暗くなったりを繰り返して、丸くて明るい何かは外へと飛び出していった。ふらふらと、まるで自身の場所を探すようにして辺りを飛び回る球体。

 それで初めて空間が照らされる。少女の居た空間はそこまで広くはないけれど、物がほとんどないから逆に広く感じられる。あるのは板張りの床の上に無造作においてある、ボロ布だけ

 木で出来た四角い空間に窓はなくて、ドアらしきものは2つ。1つは何処に続いているのか判らないけれど、誰かが入ってきたもう一つは…たぶん出口。

 やがて球体は天井についている棒の様な所に居付くと、その明るさをあげた。

 明るさに照らされたのは先ほどから居た少女と私、そして新しく入ってきた誰かさん。

 その誰かは白く長い髪に赤い目をしたアルビノで、黒いドレスを着込んでいる。首からは紅白のあの子がいつも付けていた水晶のペンダント。でも、何でこの人がそれを持ってるんだろう。

 というか、鏡で見たことある顔ね…。自分にそっくりな人は世界に数人はいるとか聞いたことあるけど、実際に目の前にするとなんともいえない気持ち悪さ。

 そっくりさんは手に持っていたトレーとランタンを床においてから口を開く。すると少女はそれに2、3言で答えた。薄々感づいてはいたけれど、この映像に音は無い様で会話内容はいまいちわからない。

 トレーの上には…黒い料理のような何かが2人前。というより、コレを料理と呼んでいいのかしらね?

 けれども少女たちはそんな疑問を持たないようで、箸を持つと薄暗さでさらに黒さと怪しさが増している料理に手を付け始める。

 黙々と食べている少女にそっくりさんが何か言うけれど、反応が無かったのか苦笑して自分も黒い何かを食べ始めた。

 料理らしき何かが口の中へと入ると、彼女の表情が固まる。その間も少女は黙々と食べ続けているけれど、一口が小さいから料理はさほど減っていない。

 そんな少女に恐る恐ると言った感じでそっくりさんが話掛けると、今度は答えてくれたのか気まずそうに食べ始める。

 …不味かったのね。

 その後は二人とも黙々と食べ続け、食べ終わるとそっくりさんがまた何かを話し始める。身振り手振りで話す内容に少女はじっと彼女の言葉に耳を傾けているのがわかる。


「…れいな人を…たの」


 唐突に、少女から言葉が聞こえてきた。小さい声で、しかも時折ノイズが走るからほとんど聞こえない。そっくりさんの方にはノイズが無いのか、彼女の言葉を聞き取ろうと耳を傾けている。


「金髪の綺麗な人」


 今度はノイズが無かった。


「…それ、何処で見たの?」

「…夢の…中…?」

「そう…」


 そっくりさんは神妙な顔で少女の言葉を聞くと、彼女の髪をやさしく撫でた。そして荷物をまとめて立ち上がる。

 突然の行動を不思議そうに見つめる少女にそっくりさんは一言だけ言った。


「用事が出来た」


 そして扉を開けると、赤い光を背に受けながら少女に手を振り、彼女は外へと出ていった。

 扉が閉まると空間は再び闇に包まれ、少女はそっくりさんが帰った場所をじっと見つめ始める。虚ろな目で、再びそこが開く時が来るまで彼女は見つめ続ける。

 結局、少女が眠りに付くまで彼女は帰ってこなかった。



□ □ □ □



 その後もそっくりさんは光と共にやってきては赤い光を背に帰っていく。きっと光の戦士か何かなんでしょう。

 彼女は来ると必ず得体の知れない料理らしきものを自信満々に取り出す。そして必ずといっていいほど残念な結果になる。学習能力が無いのか…味覚があれなのか、どうなんだろうか。

 しかし、あの自信は何処から湧いてくるんだろ?自信の泉でも見つけてるのかしらね?

 残念な食事も終わると、何処にそんなものを持っていたのか、彼女は少女に向けて色々なものを見せたり話を始める。ジャグリングやら、子供だましの手品やら、絵本やら何やら。少女はその一種挙動を無表情のままでじっと見つめている。

 いくら子供だましだと言っても、手品は手品。そもそも、アレは普通に見たら見抜けないように出来ているわけであって、そうほいほいと見抜いてしまったら手品として機能しない。だから子供だましとはいえ、私が見抜けなくてもしょうがないわよね。うん、しょうがない。

 …誰に言うまでもない言い訳をしたら余計空しくなった。独り言以上に切ないことはそんなに無い。

 暫く観察していたら、少女は無表情じゃなくてきちんと反応していることに気づいた。手品を見たときは驚いたように目を見開くし、絵本では真剣な顔でお話を聞いていて続きをせがむ。ただその挙動が小さすぎて、注意深く見てないと判らないほどの変化しかない。けれども、気づけたときには思わず頬が緩んだ。たぶん、それはそっくりさんも同じことを思ってる事なんでしょう。だから彼女はあんなにも色々なものを少女に見せる。

 出入り口とは別にあるもう一つのドア。そこを開けると浴場やトイレがあって、少女はたまに立ち上がるとトイレに行ったり、そっくりさんとお風呂に入ったりする。

 もちろん私は紳士なのでお風呂シーンを見ても何も込み上げない。というか、自分に似てる奴が居るとここまでも気持ち悪いのね。ドッペルゲンガーに出会うと死ぬらしいけど、ドッペルゲンガーを見た場合はどうなるの?

 そんな疑問にも答えず、そっくりさんは予定調和のように来て、そして帰っていく。

 1度だけ。誰も来なかったときがあった。

 そのときは出口に続くドアの下側一部分だけが開き、そっくりさんの代わりにパンとスープだけが載っているトレーが押し込まれてきた。そして少女はその様子を無機質に見つめると、もそもそと食事をして眠りに着く。もうその日は誰も開ける事が無いんでしょう。

 少女とそっくりさんの異常とも言えるほど変わらない日常が淡々と続いていく。

 けれども変化は唐突にやってきた。

 その日、いつものように何かの罰ゲームの様な食事風景が繰り広げられると、そっくりさんが何かを語り始めた。そっくりさんがフォークを手に力説する内容を首をかしげて聞く少女。

 食事が終わるとそっくりさんの話も終わったのか、まだ理解してない様子の少女の手を取って立ち上がる。そして初めて、少女を部屋から連れ出した。

 扉を開けると大量の光が溢れて来たけれど、目が慣れてくるとそこは階段のある通路というのがわかった。通路の両脇には、合わせ鏡が敷き詰められているようにして張られていて、不快な太陽光を爛々と反射している。どうやらコレが光の戦士の正体みたいね。幽霊の、正体見たり、枯れ尾花。ん?意味違ったかな?

 彼女たちが階段を登っていくと、鏡の中では何重にも重なって写りこんでいく。当然ながら私は写らない。

 登り終えたところにある扉を開けると、広い廊下に出た。床にはカーペットが敷かれていて、定期的にある大きな窓から差し込む太陽光がカーペットを赤く照らしている。

 扉の両脇には体格のいい二人の男が立っていて、そっくりさんに軽い会釈をした。けれども、その顔は黒く塗りつぶされたように見えない。

 その後も何度か、廊下でメイド服や執事服の人がそっくりさんに会釈をしたり挨拶をしていくけれど、どれも顔は黒く塗りつぶされている。

 そして誰一人として、少女のほうに目を向けない。それは気づいていないというよりも、目を合わせることを恐れている様な光景だった。

 館の端っこの部屋に着くと、そっくりさんが扉を開ける。

 その先から出てきたのは薄暗い、何やらごちゃごちゃとした部屋。床には紙、お札、木材に果物の皮やら、割れたガラスやら埃のかぶった機械なんかが敷き詰められており、その合間を縫うようにしてくしゃくしゃになった布団が敷かれている。窓には何かの植物が蔦や蔓を元気良く伸ばして領土争いをしていて、部屋へと入る光を遮っている。壁にはなぜか立てかけてある障子や襖、掛け軸、さらには何処に続くのか判らないドアなんかが張られていて、ここだけ異世界の様な現状をかもし出している。唯一、鞘に収められている刀だけが埃から免れて壁に掛かっている。

 そのガラクタの山をそっくりさんは蹴散らしながら道を作ると、目を丸くしている少女の手を引いていく。たどり着く先は、壁についているドア。

 館の構造的には外にしか出ないはずのドアをそっくりさんが開けると、またもや異世界が見えてきた。

 ドアの先にはガラクタではないものの、シャーレやフラスコがあちこちに置かれていて、中には七色に光る液体や、紫、緑色のどう考えても体に優しくない液体が泡を吹いている。二人が中へと入るとドアは勝手に閉まり、光源となるのはフラスコに入っている液体郡だけとなった。入ってきた場所とは違って、ドアは3つ見えるけれど、内1つのドアらしきものにはノブも取っても付いていないから、模様が付いたただの板にしか見えない。

 そっくりさんがどこかに声を掛けると、誰かが出てきた。

 その誰かは腰まで届きそうな青みの掛かった銀色の髪をポニーテールに縛り、来ている服は何故か和服に赤いコート。頭には犬のお面が乗っかっている。ここをお祭りか何かと勘違いしてるのかしらね。それにしても…知らないはずなのに嫌悪を感じるのは何でだろう。

 そいつはそっくりさんと2、3言話すと、少女に目を向ける。


「へぇ?この子が噂の鬼?随分とちみっこいのね」


 彼女の声は鮮明に聞こえてきた。


「冗談でもそんなことは言わないで。私達とほんの少し違うだけで、この子は人間よ…鬼なんかじゃない」

「言われなくても判ってるって。だからそんな怖い顔しないで」


 誰かさんはにくすりと笑うと、少女と目を合わせる。少女は少しだけ見詰め合っていたけれど、そっくりさんの影に隠れた。すぐさま追う、また隠れる、そのまま二人でぐるぐると回り続ける。


「ふむ…記念すべきコミュニケーション第一歩は失敗か」

「胡散臭さが滲み出てるからじゃない?」

「そ、そんな…!私ほど清やかな人なんて何処探しても見つかりやしないのに!!」

「はいはい、で…例のものは?」

「私の分はもう出来てる。後はあなた次第ね」

「そう、ありがと。あといい加減周るの止めてくれない?」

「あ、私これから旅に出るから用があるなら今言ってね」

「あれ無視?無視なの?」

「ふっ…世界が私を呼んでいるのさ…」

「ねぇ無視するの止めてくれない?そして周るな、殴り飛ばすわよ」


 そっくりさんがそういうと危険を感じたのか、周るのを止めた。少女は目が回ったのか、少しふらついてドレスのスカートにしがみ付いてる。


「仮にも淑女が殴るだなんて…品の無い」

「相手を選ぶのよ。そしてまた旅に行くの?」

「面白い子を見つけたからね。最も…君がさくっと私を殺してくれたら旅をする必要性も無いんだけど」

「そうね、寝言は夢の中で言いなさい」

「私にとっちゃ夢も現も変わらないわよ」

「それはそれは…何なら夢の中でも旅してれば?」

「名案だとは思うけど、生憎と見たい夢は決まってるから遠慮しとく」

「そう、まぁどうでもいいけど」


 そうして二人とも黙って見詰め合うと、互いに笑い始めた。


「生きて帰りなさいよ、相棒」

「それは嫌味かしら?まぁ、そっちこそちゃんと生きてなさいよ」


 ぱちんとハイタッチをすると、彼女はそっくりさん達が入ってきたドアから出て行った。ドアを開けたら部屋じゃなくて森になっていたんだけど…魔法のドア?


「ちょっと変なやつだけど、悪い奴じゃないから」


 私がぼーっとドアのほうを見ていると、そっくりさんが苦笑しながら少女に笑いかけているのが見える。そちらへと視線を動かせば、そっくりさんがネックレスを模様の付いたドアに向かって掲げているのが見えた。

 そっくりさんが暫く掲げていると、まるで思い出したかの様にビクビクと震えながら上へと吸い込まれていくドア。色々と大丈夫なのか心配になってくるドアの先には、黒い壁が一面に広がっている。

 完全にドアが開くと、そっくりさんは少女の手を引いて黒い壁の中へと入っていく。哀れにも手を掴まれているので、怪しさが爆発している謎空間に入らざるをえない少女。そして少女が行くから行かざるをえない私。

 暫くの間、何も見えない空間を前へと進んでいく。どういうことなのか、辺りを支配している闇はとろとろと絡み付いてきてすごい気持ち悪い。そして、その不快な空間からは唐突に抜けた。


「わぁ…」


 少女の声がする。私も思わず声が漏れたけれど、音にはならずに消えていった。

 闇から抜けた先は一面の銀世界だった。青白い月が浮かんでいる夜空にはまるで降ってきそうなほどの星が瞬いていて、月明かりが雪に反射して幻想的な空気を醸し出している。

 暫くの間、無言できらきらと光るその光景を見つめていると、そっくりさんが悪戯をするような顔で前へと出た。いつの間にか、手には紺色の四角い箱を持っている。


「さぁさぁ皆様お立会い。ここにありますは種も仕掛けもあるただの箱でございます」


 …種も仕掛けもあるとか言って良いの?そりゃあるに決まってるけどさ。

 そんな疑問は置いておいて、そっくりさんはもったいぶった手つきで箱に手を掛けると一気に蓋を開いた。箱からは光の弾が飛び出して空高く昇っていき、炸裂する。

 皆でその行く末を見上げると、ちらちらと白い何かが降ってきた。これは…雪?

 雲一つない、満天の星空から降ってくる雪はちらちらと舞い降りて少女を包み込んでいく。


「どう?気に入ってくれた?」

「うん!」


 その雪を掴んだりしている少女にそっくりさんが問いかけると、返って来たのは星空にも負けないほどの笑顔。そんな少女にそっくりさんは近づくと、少女と目を合わせた。


「いい?○○。ここの事は誰にも言わないで、二人だけの秘密よ」


 何故か、名前のところだけ音がない。


「ひみつ?」

「ええ、秘密。そしてこのペンダントは秘密の場所への鍵になってるの。あなたが秘密を守れるなら、コレをあなたにあげるけど…守れる?」

「うん!」


 少女がとてもうれしそうな顔で頷くと、そっくりさんは少女へとペンダントを掛けた。そして、首元にある水晶を何度も撫でる少女を微笑ましそうに見つめる。


「世界には色々なものがあるのよ」


 雪の中をふわふわと周って遊ぶ少女にそっくりさんが告げた。


「もう少ししたら、こんな偽者じゃなくて本物を見せてあげる…未来(ミク)


 最期だけは、ノイズも何もなく聞こえた。そして突然、激しいノイズと共に世界は闇に染まった。



□ □ □ □



 闇に目が慣れたときは、少女が虚ろな目でドアを見つめている見慣れた光景。今さっきまであったことは…?そして未来って…名前?誰の…?楓の?

 その問いには誰も答えてくれず、いつものように少女は眠りにつく。けれど、その日はいつもとは違いドアが開いた。


「早く起きて!ここから逃げるわよ!」


 そっくりさんが駆け込んできて、目を覚ました少女の手を取る。彼女のドレスや肌はところどころが赤黒く汚れていて、腰には鞘に収められた大小の刀。

 まだぼんやりとしている少女の手を引いて、赤い光が乱反射している階段を駆け上がっていく。階段を上り終えた先には人型の何かが2つ倒れていて、頭のない身体から流れ出た液体がカーペットに不思議な文様を描いている。

 そっくりさんはその光景には見向きもせずに少女へと振り返り、少女のネックレスを外す。そして、ネックレスを一振りして短刀に変えて少女に持たせると、不安そうな目で短刀を見つめる少女の手を引いて走り始める。

 少女の速度に合わせた速度で走っていると、道中の部屋からメイドが出てきた。最初彼女は呆けたようにそっくりさんと少女を見つめていたけれど、赤黒い汚れの正体に気づくと足をもつれさせながら後ずさりして逃げようとした。

 けれども彼女は逃げることは出来ず、恐怖の表情のまま頭が宙へと舞う。頭部の離れた胴体からは赤い液体が噴水のように飛び散り、刀を鞘に納めるそっくりさんの肌や髪を赤黒く塗りつぶしていく。

 その噴水が収まることも待たずに、そっくりさんは少女の手を取って走り始める。赤い液体は少女の白装束をも赤く色づかせていった。そのとき、私には少女が小さく笑っているのが見えた。

 幸か不幸か、二人は最初のメイド以外には誰にも出会うことはなく、玄関へとたどりつく。外へと通じるドアを開けば、赤い夕闇が外に広がる庭と二人を照らしていく。

 そっくりさんは二度、三度と周囲を見渡すと、少女の手を取り歩き始める。彼女は辺りを警戒しすぎていて、少女が人形のような無表情となっているのに気づいていない。

 庭を横切り門を開けると、目の前には深い森が広がっていた。黙々と、会話もなく歩き続ける二人。けれども、突然少女が足を止めた。焦ったようにそっくりさんが振り向くと、目を丸くして立ち竦んだ。

 返り血で赤黒く染まった白装束に身を包んだ少女は、虚ろな瞳で半笑いを続けている。その姿はいつか…星空の下で楓が見せた表情に似ている。


「どうし…っ!?」


 少女は心配そうに瞳を覗き込もうとしたそっくりさんの身体を短刀で切り裂くと、先ほどまで自身が居た屋敷へと走っていった。

 そっくりさんは何が起きたのかも判らない様子で血を流しながら地面へと倒れる。

 屋敷へと走り去った少女を止めるものはもう居ない。



□ □ □ □



 玄関ロビーから伸びる広い廊下を、二人の男女が歩いている。片方は執事服、もう片方はメイド服で仲睦まじく手をにぎにぎ。辺りをきょろきょろ。そんなに辺りの視線を気にしないといけないとは…苦労人ね。

 けれどもそんな二人の幸せはドアが開く音と共に終わりを告げ、突然執事が前のめりに倒れた。背中を刺されている彼からは、赤い色が止まることなくあふれ出てくる。

 メイドさんが倒れた執事の方へと屈んで何か叫んだ。そして、その様子を虚ろな目でぼーっと見つめる少女。ゆっくりと、メイドさんが少女に気づき顔を向けると、少女の手に持っていた短刀が振るわれた。

 血しぶきが少女の白装束に赤い斑点を作っていく。少女は手についた血をぺろりと舐めると、笑顔になって走り始めた。

 1人、また1人と白装束に赤い色を追加していく。中には異変に気づいて武器を手にしているものも居たけれど、抵抗することなく倒れていった。

 たった一人の少女を誰も止められず、誰も見つけられず、誰も助からない。

 一部屋だけ少女が来る前から死体のある部屋があった。その死体はメイドや執事とは違う、高価そうな服を着て倒れているけれど、その胴体にあるべき頭だけは部屋の隅に転がっている。

 少女は死体を動かして壁に立てると、隅に転がっている頭を抱える。そして頭を元ある位置へと戻すと、にっこりと笑って短刀を振るった。再び地面へと転がる誰かの身体と頭。

 少女はその光景を満足そうに見ると、その部屋を後にした。

 屋敷から音が消えるまでどれだけの時間が経ったのか、窓から差し込んでいた赤い光はいつしか青白い月明かりに変わっている。

 月明かりで幻想的となっている廊下を少女が歩いていく。少女の服は元の色がなんだったのか区別がつかないほど赤黒く染まっていて、少女の白い肌にも汚れがついている。

 廊下や部屋のところどころには物言わぬ、変わり果てた姿となった皆さん。

 誰も動かない廊下を通って玄関に着くと、血でぬれた手で外へのドアを開けた。嫌がる様に軋んだ音を立てたドアが開いていくと、雲ひとつない星空に満月が浮かんでいるのが見えた。そして、門の向こうからは傷口を抑えながら門にもたれ掛っているそっくりさん。

 彼女は少女の様子に気づくと目を丸くしたけれど、すぐに諦めた様な笑顔になって少女の方を見つめた。

 少女も獲物が逃げないことが判っているのか、ふらふらとした足取りでそっくりさんへと近づいていく。

 少女が無表情で目の前に来て短刀を振り上げてもそっくりさんは動かず、ただ微笑んでいるだけ。


「偽者でもいいから…あなたに世界を見せたかったんだけど…どうやらそれが裏目になったみたいね…」


 少女はそっくりさんの言葉を全く気に掛けずに、短刀を振り下ろした。

 短刀は身体の中ほどまで進むと止まり、そっくりさんは少女にもたれ掛るようにして倒れた。赤い血が少女の服から流れて地面へと吸い込まれていく。


「…ごめん…ね…」


 そっくりさんが呟いた瞬間、辺りに強い風が吹き、彼女は地面へと倒れた。その風が収まった頃、少女の目に光が戻る。

 少女は地面に倒れるそっくりさんに目を向けると、何が起きたのか判らない様子で傍へと屈みこむ。


「ひょーか…ちゃん?」


 死体からは返事の代わりに血が流れ、それは外に出ると固まって赤い結晶となっていく。

 少女はそっくりさんを何度も揺らして呼びかけていたけれど、手に持った短刀と自身の服装に気づいた。無表情のまま、彼女は血にぬれた短刀を見つめていると瞳から光が無くなっていき。

 少女は短刀を自身の喉に突き刺した。

 え…?

 何が起きたのか理解できない私を置いて、どさりと彼女が倒れる音がする。

 短刀は地面に当たった衝撃で喉を貫通し、赤黒い血を流していく。

 やがて少女から出た血も流れなくなり、私を除いてこの世界から動くものは無くなった。

 何が…起きたの?

 私が少女の下へと歩み寄っても、彼女はもう動かない。

 え…?

 そんな…おかしい…だって来夢は…あれ?

 私が呆然としていると、世界が抜け落ちるように黒く塗りつぶされていく。そして、完全に闇へと変わると、先ほど死んだばかりの少女が虚ろな目で扉の方を見つめているのが見えた。何事もなかったかのように、ドアが開いて世界が変わることを待ち望んでいるかのように。


「私に…どうしろというの?」


 呟いた問いには、誰も答えてくれない。

はい、まだ続きます!

そして皆さん後予想のとおりにお話ももう終盤です


終盤なのにこの執筆スピード…くっ!

というか1年異常連載する予感しかしないですね。嗚呼…3、4ヶ月で終わっていた頃が懐かしい…


 こうなった原因といいますか、言い訳といいますか…執筆中にふと、我に返るときがあります。

 こうパチパチしてるときにふと「あ、私なにやってるんだろう?」という鋭い現実が私の精神を切り裂き、豆腐である作者のメンタルはお味噌汁の具となってぐつぐつ煮込まれてしまうわけです。

 当然ながら、こんな訳判らん内容が詰まっている豆腐の入った味噌汁なんぞ誰も飲みたがるわけがなく、ぐつぐつ煮込まれたお味噌汁は煮詰まって濃さを増して行きます干ばつ期です。願わくば、誰か私に潤いを。

 そうなると手を出し始めるのはお酒と昔から相場は決まっております。ええ、昔からお酒は大好きでした。

 結果あまりの日照りと潤いのなさから、人恋しさと寝不足となった私は、こんぼう一本で魔王に挑む勇者の如く、現実の多忙っぷりに無謀な戦いを強いられ、血と何かよくわからない汁しか出ない空想に逃げ込むことは出来なかったわけです。ええ、空想の中でも殺伐してます。血も涙もあるので潤いをください。

 まぁ、大体そんな日々だったとご想像ください。


 ということで、次話は出来るだけ早く!という目標を掲げながら、来月中には出せるといいなーと目測を建てております。

 1月も同じ内容書き続けると、次の話の構想なんぞ記憶の大樹海に旅に出てしまいますので、まずは探検隊を派遣することから始めましょう。


ではではこんな内容ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです

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