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13/18

永遠を願った少女は今宵も止まれない

(・ε・ )やっと終わった


前話の前に入れたり、間に挟んだりする予定だった話です


時間列は進んでません、ご了承を


人物表


エウナ

吸血鬼 え?出番・・・?


魔法使い ヒロインって何だろうね


アリス・イン・ワンダーランド

魔術師 関係ないですが、私は魔術師といえないです


ミツキ

クラゲ 設定上はクラゲじゃないんですが、まぁいいでしょう 幻想症候群面白いですよね


ソラ

魔法使い 所謂主人公sの一人 にゃんにゃん


キミカさん

お肉 出番があったよ!やったねキミカさん!


氷華ちゃん

話にだけは出てくるひょーかちゃんです 出番未だ無し 次の次くらいにはある予定


 まだお天道様が元気な昼下がりを、パカポコと馬車が進んでいく。

 やがて、その馬車はある施設の前で止まった。四角い箱を数段重ねたり並べた様な施設で、巨大ロボットに変形しそうな見た目をしているが、全く関係ない。ロボットとか出て来たことないし。当然、今後も出る予定は無い。

 その馬車が止まると、そこからピョンピョンと二人の人が出てきた。二人とも長い髪をまとめることもせずに下ろしているのだが、片方は銀色でもう片方は黒い。雰囲気も何処か対照的な印象の二人だ。


「あれ?アリスさんお出かけですか?」

「お仕事ですが・・・楓さんは?」

「人間観察のお出かけです」


 迷惑そうな顔を隠そうともせずにアリスが答えると、楓は何が面白いのかくすくす笑いながら付いていく。


「そんなに嫌そうな顔しなくても、邪魔はしないので安心してくださいな。それとも、当てが外れたから不機嫌なんですか?」

「・・・別にそんなことは無いですよ」

「エウナさんを付けてればボクが大人しくなるとでも思ったんですか?甘いですねー」

「・・・」


 くすくすと笑いながら後ろを付いていく楓を黙殺して建物へと入っていくアリス。楓も途中までは付いていったが、飽きたのか手をにぱにぱさせて見送った。

 アリスの姿が完全に見えなくなると、楓は馬車の中に戻った。中では金髪にドレスに狐のお面という、和なのか洋なのかいまいち判らない女性が眠っている。頭の上にはクラゲが乗っかっているので、さらに意味がわからない。


「エウナさんエウナさん、ひみゃー」


 楓が膝の上に乗りながら顔を覗き込むも、当然ながら寝ているのでぴくりとも動かない。別に死んでいるわけではない。


「起きないとちゅーするぞー?」


 返事が無いのを良いことに顔を寄せる。むちゅぅーと。ところで、眠り姫にキスのお目覚めって、つまり夜這いだよね?一歩間違えたら、変態扱いされても致し方なし。


「ん、んー・・・ちゅーで起きるのは幻想でしたか。刺せば起きるかな?」


 しばらく楓は短刀を片手に首をかしげていたのだが、思い直したのか頭の上で気持ちよさげに眠っていたクラゲ・・・ミツキを鷲掴みにすると外へと出る。ミツキは驚いた様に触手をじたばたさせて抗議するが、悲しいことに無視される。

 楓が完全に外へと出ると、懐から人形のお札を取り出し、少しだけ目を細める。


『我が名の下に命ずる』


 呪文を唱えるとお札が光り、そこから楓が現れた。楓が二人である。ややこしいので元から居た方を楓、お札から出てきた方を楓(札)とする。


「それじゃ、お留守番お願いしますね。寝てるからってあんまし悪戯しちゃダメですよ?」


 自分の事は棚に上げ、楓(札)に言いつけるとそこを離れた。判ったのか判ってないのか、楓(札)はとても嬉しそうな顔で頷くと、馬車の中へと入っていった。


「こんにちわ、あなたは馬肉になるんですか?」


 楓はヒヒーンとしてる馬の前まで行くと、目を合わせて話しかける。第一声にお肉になる話とは、意味不明である。馬が馬なら怒り出しても咎められる事はないと思う。尤も、そうなった場合の行く末はお肉だが。

 ところで当然ながら、馬車というものはお馬さんだけではなく、お馬さんをコントロールする人も居る。その人から見たとして、少女が馬に話しかけている様子はどう思うか?


「そうなんですか。でも気をつけないと、何時お肉にされるか判ったものじゃないですよ」


 非常に怪しい。しかも内容が物騒な上に、少女は巫女服の上に赤いコート、さらに頭にはケモミミがひょこひょこしてるし、傍らではクラゲがふよふよと浮いている。話題性は抜群でも、まず間違いなく係わり合いになりたくないタイプである。何より片手に短刀を握ったままだ。

 やがて楓は、馬に美味しそうな人がやってる酒屋の場所なんかを聞くと、またふらふらと何処かへと歩き出した。そんな事を聞く方も聞く方だが、知ってて答える馬もどうかと思う。

 その様子を見ていた人はその後、仲間に「人形みたいだった」と語ったとか何とか。



□ □ □ □



 ガラガラと酒屋の扉が開く。古びた雰囲気の酒屋だが、きちんと清掃されているのか内装は綺麗だ。看板には元がなんと書いてあったのか判らない掠れ字があり、辛うじて酒屋という文字だけが読める。


「よーほー」


 楓が誰も居ない店内へと声を掛けると、奥から慌てた様子で女性が出てきた。茶色の髪を後ろで束ねていて、優しそうな瞳をしている。


「いらっしゃ・・・」


 けれども酒屋に来たのは普通の人ではなく、巫女服の上に赤いコート、頭の上には黄金色のケモ耳、片手には短刀を持ちながら笑顔を見せている少女である。そしておまけの様にクラゲもふよふよと頭の上を漂っている。

 見ようによっては強盗か、もしくは未知の生物との遭遇現場とも言える中、酒屋の店員さん、キミカさんが固まったのも無理は無いだろう。幸運だったのは、固まるだけで済んだので、ただでさえ短い寿命が縮まらなくて済んだ。

 

「白ワインを買いたいのですが、売ってますかー?」

「あ、はい。えっと・・・種別は・・・?」

「よくわからないので一番丈夫そうなのお願いします」

「は、はぁ・・・」

「あとグラスもお願いしますね」

「えっと・・・いくつほど?」

「いっぱい!」


 両手で量を表す楓。いささか注文がアバウトすぎる。

 これをプロ根性というのか、それともあまりに自体が異常すぎて脳が追いついていないのか、キミカさんは言われるままホイホイと白ワインを準備する。一番丈夫そう、とかいう謎のリクエストにも真摯に答える姿は商売人の鏡とも言えるだろう。

 一体手元の短刀は何処にいったのか、楓はいつの間にか手にしていたペンダントを首に掛けると会計を始める。


「領収書を書いてもらえますか?名前はアリス・イン・ワンダーランド宛でお願いします」

「え・・・?」


 会計の手続きの間、クラゲだったミツキも退屈になったのか、人の形になってはあちこちをうろうろしている。ところで他人の財布で食う飯は美味いとは言うけれど、勝手に他人の財布を使って飲む酒はどうなんだろうか。

 キミカさんは人になったクラゲやら、ひょこひょこ動くケモ耳やらにもめげず、言われるままに進めていたのだけれど、領収書を書いている途中でピタッと止まった。


「どうかしましたか?」

「あ、あの・・・アリスさんの関係者ですか?」

「んー・・・そうですよ」


 少し悩んだあと、爽やかに嘘を付く楓。正確には関係者じゃなく、付いて来ただけなのだが、彼女にそれを知るすべは無い。


「そ、それじゃ・・・引き受けてもらえるんですね!?」


 花が咲いたように笑顔になるキミカさん。いずれは潰される花を哀れむ様にくすくす笑う楓。


「そうですね、明日には会いに来ると思いますよ」

「そ、そうですか・・・」


 安心した様に胸を撫で下ろす彼女を尻目に、ワインとグラスを入れた木箱をミツキが抱えた。


「あ、そうでした」


 楓はお店を出る前にくるりと回るとキミカさんへと微笑みかける。


「今日はお一人ですか?」

「はい、そうですけど・・・?」

「そうですかー、これは全くの善意で言うことなんですが」


 後ろから刺してくる夕日が、彼女の顔に影を作り、表情が読めなくなる。


「今日はもう店じまいをして、誰にも会わない方がいいですよ」



□ □ □ □



 狐のお面を着けた金髪吸血鬼が、木の棒でつんつんしては諦めている上の方、アリスの元には忙しなくぽっぽと鳩が突っ込んでくる。

 それはともかくさらに上の馬鹿と煙が好む場所、所謂屋根の上では二人の少女が居た。片方は巫女服の上に赤いコートを着て、頭の上には狐耳、胸にはペンダントをぶら下げ、星空を肴に手元のワインをコクコク。もう片方の少女は水色のワンピースを風に揺らしながら、吸血鬼の方をチラチラ。


「エウナさんの事がそんなに気になるなら、お手伝いでもしますか?」


 片方の少女が声を掛けると、もう片方は悲しそうな、何かを諦めてる顔で首を振った。


「まぁまぁそう諦めずに、今宵は新月無礼講・・・月の魔力も使えない日です。それに、人魚姫が声を出しても問題ない日が、たまにはあってもいいでしょう?別に何をしたからどうするという気分でもないですし、安心して良いですよ」


 少女は何が面白いのか、くすくすと笑って告げる。水色の少女は少しだけ怪訝そうな顔をしていたが、振り返るとまた吸血鬼のほうを見下ろす。


「どうして?」

「不思議ですか?そうですね、どんなことがあっても・・・何をしようとしていても・・・諦めずに笑って生きてくれるなら、ボクは何も言わずに応援しますよ。

 ・・・持って行って下さい、木の棒よりはマシでしょうから。・・・大事な物ですから、くれぐれもお取り扱いにはご用心を」

「・・・」


 赤い少女はペンダントを杖に変えると、水色の少女に手渡す。そしてもう何も見てないし、何も言わないとでも言うように木箱へと向かうと、新しいボトルの栓を開ける。


「それにしても、あの人も困った人ですね。ろくなことが起こってないのに、そんなに知りたいんでしょうか?」


 もう自分以外誰も居なくなった屋上で少女がぽつりと呟くと、手に持っていたグラスにヒビが入った。


「何も知らず、何もしなければ、ずっとこのままで居られるのに・・・世知辛い世の中です」


 少女はヒビの入ったグラスを見つめると、少しだけ誰かに向かって祈る仕草をした。



□ □ □ □



 草原で二人の女性が見詰め合っている。片方は和服、もう片方は巫女服で猫耳帽子がひょこひょこ動いている。二人に共通なのは、お互いに赤いコートを着ていること。

 空は曇っており、二人の下に月明かりは届かない。


「よーほー」

「・・・あなたのソレ、私に対するあてつけか何か?」

「うに?」

「いえ、何でもないわ・・・」

「そうですか。ではでは、よーほー」

「・・・」

「よ、よーほー?」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・お久しぶりですね。まだ生きていたんですか」 

「・・・ええ、おかげさまでね」


 巫女服の方・・・楓が、和服の方・・・ソラへと何事も無いかのように笑顔で話しかけた。一見は和やかに見える光景も、楓の手には短刀、ソラには銃という凶器が握られている。二人の間には『ちょっとこれから殺し合いでもしましょうか』とでも言い出しかけない異常な雰囲気が当たりを支配している。


「それで、コンナところまで一体何の御用です?」

「馬鹿弟子が不祥事を起したって聞いたからね。ちょいと殺してやろうかと」

「それはそれは、困った人も居るものなんですねー。お姉さんも、わざわざ月の出てない時に来なくても良いと思うんですが」

「全くよ・・・まぁ月が無い程度、何のハンデにもならないけれど」


 くすくすと笑う楓とは対照的に、硬い表情を崩さないソラ。


「一応聞いておくけど、止める気は無いの?」

「愚問ですね。それとも長い間生きすぎてボケましたか?」

「・・・たしかに愚問だったわね」

「それに、知らないんですか?」


 初めて、楓が笑顔を止めて無表情となった。そのまま、自分に言い聞かせるかのようにポツリと呟く。


「魔法使いってのは、奇跡を起すものなんですよ」

「・・・奇跡なんて起きないし、死んだ奴の代わりなんて誰にもならないわよ」

「そうかもしれないですね・・・でも・・・それでも、ボクは止まるわけにはいかないんです」


 二人ともしばらくの間何も言わず、ただ風だけが吹いていく。


「・・・それじゃ、始めましょうか」

「・・・そうですね」


 楓が地面を蹴って前へと跳ぶと、それに応じる用にソラが銃口を向ける。けれども銃口を向けられたソラの前から楓は消えると、彼女の後ろから短刀を振り下ろす。しかし、振り下ろされた短刀は見えない壁に阻まれているかの様に宙に止まっている。

 ソラが振り向くと、またも楓はソラの目の前から消えて後ろに現れる。けれども、今度は短刀が振り下ろされる前にソラの片手が喉を捉えた。ソラは楓を力任せに地面へと叩きつけると銃口を胸に向け、引き金を引いた。

 乾いた銃声が夜空に響き渡る。


「いくら時間が止めれても、使い手がコレじゃどうしようもないわね」


 胸からドクドクと血を流している楓を踏みつけながらソラがポツリと呟く。

 サーッと風が吹いた瞬間、突然現れたミツキが勢い良く走り寄ってくると、ソラ目掛けて抜刀する。けれども、ソラはそちらを見ることすらせずに片手のナイフを抜いて刀を受け止めたので刃が届くことは無かった。

 驚きで目を丸くするミツキ。


「・・・!」

「封印されてる分際で・・・」


 ソラはナイフの力を一瞬緩めてミツキの体性を崩すと、銃を持った方の手で殴り飛ばす。そしてナイフを空へと振り上げると、呪文を唱えた。いつの間にか、夜空の雲は途切れ、少しばかりの月明かりが注いでいる。


『我が名の下に命ずる』

「ダメ・・・!」


 意識を取り戻した楓の叫びも空しく、ナイフを振り下ろされると、空から落ちてきた細い光がミツキの体を貫いた。


「どう・・・して・・・」


 楓の呟きの先では、身体を貫かれたミツキが血を流しながら二度三度と痙攣した後、ぴくりとも動かなくなった。


「ところで心臓を撃ったはずなんだけど、あなた人間止めたの?」


 そんなミツキの様子をチラリと見ると、まるで世間話のようなトーンでソラが話した。


「企業秘密・・・なので・・・黙秘します・・・」

「そう・・・」


 ソラは彼女の途切れ途切れな答えを何処か哀しげに聞くと、銃口を頭へと向ける。


「そういえば聞いてなかったのだけど、あなたは何のためにここまでしてるの?」

「そんなこと・・・簡単・・・じゃない・・・ですか」


 ソラの質問がおかしいのかくすくすと笑い始める楓。


「ボクがしてるのは・・・あの人の・・・ためだけ・・・ですよ・・・」

「・・・その結果、恨まれることになっても?」


 楓は質問には答えずに微笑むと、目を閉じた。いつの間にかその手には杖が握ってある。


『我が名の元に命ずる』


 ソラが杖に気付いて飛び退くのと、楓が呪文を唱えるのはほぼ同時だった。杖から爆音と共に光が飛び出すと、楓が居る場所へと空から光の柱が降って来る。

 柱が降り注いだ後には楓の姿は無く、黒々とした地面だけがむき出しになっていた。


「雪か・・・季節外れね」


 ソラは自身の周りに張った結界を解くと、空を見上げてぽつりと呟いた。空からは白い点がぽつぽつと降り注いでおり、その量は段々と増してきている。


「全く・・・一仕事終えた後だというのに、どうしてじっとしていてくれないんですか?」


 ソラの後ろから声が掛かり振り返ると、そこには2頭の竜を従えたアリスの姿があった。


「初めましてアリスさん、あなたの後釜をやらせてもらってます」

「それはそれは・・・私の跡を継いだのがこんな子とは驚きね」

「全くです。先代が見かけて人を判断する様な奴だったとは・・・がっかりです」

「ソレは失礼したわね。失礼ついでにすることがあるんだけど、行かせてもらえない?」

「死んでるはずの人が目の前に居るわけですから、これは現世に生きてる私が送り帰すべきだとは思いませんか?」

「それはそれは、こちとらそう簡単に死ねてたら苦労してないわよ」


 アリスはソラの答えに微笑みで返すと、杖を構える。


「たかが2代目が、私を殺せると思ってるの?」

「知らないの?人は日々変わるんですよ?」


 ソラもアリスに応えるように銃口を向けた。


「君は少し身の程を知ればいいと思うよ?」


 ソラがそう言うと、アリスの周りから炎が舞い上がった。



□ □ □ □



 ミツキを抱えた楓が、雪が積もった神社の境内をよたよたと歩いている。足取りはふらふらと落ち着かず、すぐにでも倒れそうだ。

 やがて中央辺りまで歩くと、力尽きたように地面へと倒れこんだ。抱えていたミツキも雪の積もった地面へと放り出される。

 楓は暫らくそのままで荒い息をしていたが、ゆっくりと起き上がるとミツキの元へと這いずり寄る。ミツキは浅い息を繰り返して血を流しており、さほど長くない事は明らかだった。


「ごめんね・・・ボクはもう大丈夫だから・・・ごめんね・・・」


 楓が謝ると、ミツキは目を薄く開けて何かを応えようとしている。その様子を見た楓は血で濡れた手で彼女の頬を撫でると、静かに呪文を唱えた。


『失われし、我が名の元に命ずる』


 すると、ミツキの体を光が包み込む。その光が消え去った後には、ただ赤く色づいた雪だけが残っていた。

 境内に自分以外誰も居なくなると、力尽きたように倒れこむ楓。胸の辺りからはじんわりと血が染み出して来ており、辺りの雪を赤黒く染めていく。


「あれ・・・思ったよりも・・・早いんですね・・・」


 しかし楓は何かに気付いたかのように身体を起すと、何処とも無く声を掛けた。その返事は鳥居の下から聞こえてきた。


「私が早いんじゃなくて、あなたが遅すぎただけでしょ」

「そう・・・ですか・・・」


 楓はくすくすと笑おうとして、激しく咳き込む。それでも笑顔は絶やさず、ソラの方へと顔を向ける。ソラの服装は所々焼け焦げており、片腕と足をやられたのか腕をだらりと下げており、立ち方も何処かおかしい。


「アリスさんは・・・どう・・・でした・・・か?」

「事件の解決法に手っ取り早い方法を考えたのは高評価。でも、それを実行するのに躊躇して犠牲を増やしたのは減点ね」

「誰もが・・・そう・・・割りきれる・・・ものじゃ・・・無いですからね」


 今度は咳き込まずに笑うと、楓は空を見上げる。


「なかなか・・・思い通りに・・・ならない・・・もの・・・ですね・・・。世知辛い・・・世の中です・・・」

「別にあなたが何処で何を考えて、何処でどんなことをしていようが、私には関係ないのだけれど」


 ソラは銃を抜くと、楓に向かってゆっくりと歩き始める。


「君の事情に、私を巻き込むな」


 それからはお互いに無言のまま、ソラは楓の元まで歩みよると銃口を頭へと付けた。


「最期にもう一度聞くけど、止まる気は無いの?」

「愚問・・・ですね・・・。ありません・・・」

「そう、それは残念ね。一応、遺言があったら聞くけど?」

「そう・・・ですね・・・」


 楓は空を見上げていたが、ゆっくりとソラの方へと顔を向けると笑顔になった。


「ボクが・・・どうなろうと・・・お姉さんには・・・手伝って・・・貰いますよ・・・?」

「・・・」


 ソラが無言のまま、カチリと撃鉄を引く。


「だって・・・お姉さんも・・・あの人のこと・・・好き・・・でしょう?」

「にゃっ!?」


 楓の言葉に虚を付かれた様で目を丸くするソラ。すると、彼女の頭から猫耳がひょこひよこ、お尻からは尻尾がふりふり。その様子が面白いかのように、くすくすと笑っては咳き込む楓。


「それ・・・まだ・・・治して・・・なかったん・・・ですか」

「・・・にゃおし方を知ってたら教えてほしいくらいよ」

「生憎ですが・・・ボクにも・・・わからない・・・です」


 頭を抱えて呻くソラに楓が告げると、もうどうでも良いとばかりに立ち上がる。


「私のあいつへの気持ちにゃんてどうでもいいでしょ?」

「お姉さんの・・・素直に・・・ならないところ・・・好きですよ」

「そう・・・生憎だけど、私は君の事が嫌いよ」


 後はもう何も言うことは無いかのように空を見上げる楓。そんな楓の頭にソラは銃を向けると、引き金に指を掛けた。


「雪・・・ですよ・・・お姉さん・・・」

「ええ、そうね」

「氷華ちゃんも・・・よく・・・見せて・・・くれましたね」

「・・・」


 少しの静寂の後、神社から銃声が響いた。


「・・・やっぱり私は、君のそんにゃところが嫌いよ」


 ソラは胸を撃たれ、人形の様にぴくりともしないまま血を流す楓へと告げると、背を向けて歩き始める。

 何時しか降り注ぐ雪は赤みが混じり、ピンク色へと変わっていた。

さてさて、残すところたぶん後3話!


次話は考えたのが半年以上前で構想が若干化石化してます

何が言いたいかというと、遅れる可能性大です

いつも遅れてますが


次は忘れてそうな魔法使いを探すお話の予定!


ちなみに本編で出たソラさんは空を見上げて歩いていこうのしゅじんこーです

中々外道です


自分の作品なのにタイトル間違えるとかホントにね・・・



ではでは、少しでも楽しんでいただけたら幸いです

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