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杜の都で待つ人は  作者: はる姫
第四章
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小話2

            * 夜  会 2 * ―誰の所為―


 薄青色の月明かりに照らされ、二人の身体が揺れている。遠くに聞こえる楽の調べに合わせ、優雅にステップを踏んでいるのはこの国の皇太子夫妻だ。

 「フイイは何処に行ったのかしら。踊りましょうと約束していたのに」

「アイツはどちらかと言えばご婦人方にもてるから、アヤより年配の方に行ったのかな」

「フイイは約束を破る男性(ひと)ではないです。きっと何かあったのだわ。

 ドュー、わたし着替えて舞踏会へ戻りたい」

「合うドレスがないのだろう。諦めなさい」

「いいえドレスは沢山あるの、わたしが恥ずかしいのを少し我慢すれば大丈夫。

 アザレア達が言っていたわ。女性は丸い膨らみで男性を悩殺するのだから、胸は少々はみ出る位で丁度好いんですって。

だから今あるドレスでも十分よ。ドューお願い。」

「駄目だ。それは下位の令嬢たちの振る舞いであって、皇太子妃が胸を強調して出歩いては、示しがつかないだろう。風紀が乱れる」

 ドュランのもっともな言葉に納得して、アヤカーナはコクンと頷き目の前の肩に頭を預ける。

やはりドレスの胸がすぐにきつくなるのは、風紀上良くないのだ。

「ドューくすぐったい…あんっ」

いつの間にか露わになっていた薄桃色の蕾を、口にしようとしているドュランの鼻先からかすめ取る。

「駄目よ。胸には触らないで、それに口に含むのも禁止」

 アヤカーナは白い膨らみを元に戻そうと必死になる。

その姿が男心を刺激しドュランの下半身が反応する。

 そんな男の生理を露知らずか、アヤカーナは持論を展開し始める。

「本来、女性の胸は赤ちゃんの為にあるのよ。

それに女官長に聴いたの、胸って男性に揉まれると大きくなるんですって。私はこれ以上胸が大きくなるのは嫌。だからドューも協力してね。」

本当は、誰の所為(せい)でこんなに胸が大きくなったのかと責めたいところだが、そこは胸の奥に押しやり胸を張る。


 ドュランは毅然と微笑む妻の顔を呆然と見つめる。

「…… 」

 何故話がこうなるのか、釈然としない。天を仰ぎ、ゆっくり息を一つ継ぐといつもの事だと諦める。

 ふーん、胸は触るな、か。まっ仕方ない…。

‘触って’って懇願されるまで責めるのも一興だな。



「アヤがそう言うのなら、もちろん協力するよ」

 言って夫は妖しく微笑む

 妻は優しい夫に感謝を込めて告げる。

「ドュー大好き。愛してる」

「あぁ俺も愛してる」


アヤにとって長い夜が始まる。



おしまい






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