5.
R15になります。ご不快に思われるかもしれません。どうぞご了承の程、よろしくお願い申し上げますm(_ _;)m
ドュランに抱かれたアヤカーナの後を、アザレアを先頭にケイト達が追いかけてくる。
階段を急ぐのは、ドレスの裾で足を取られ、とても危ない。皆が転んだりでもしたら大変だ。
心配だとアヤカーナはドュランに伝える。すると彼は、階段の途中で立ち止まり、下を向いて叫んだ。
「アザレア、大丈夫だ。土産に毒は入っていない。
今から白萩の間へ移る。お前達も用意して移って来い」
毒?アヤカーナは胸元に握り込んだままだった袋に目を遣る。アザレア達は、マリユス従兄様を疑っていたのだと気付く。有り得ないのに!
少しむっとしてドュランの肩越しにアザレアの顔を見れば、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせ、こちらに向けて会釈した。
アヤカーナは不思議に思った。そんなに毒が入っていないことが嬉しいのだろうか?
ドュランはそのまま階段を上がり、三間続きの大きな部屋の最奥へと、扉を肩で押し開けながら進んだ。そして、そのまま部屋を横切り、寝台へそっとアヤカーナを降ろす。
アヤカーナは広い寝室の豪華さに目を奪われていた。ここに到達するまでの部屋の装飾も凄かった。
今居る寝室の床は寄木細工で萩の花が浮き上がっており、大理石に金の象嵌が施された壁、天井にもやはり萩が描かれており鴨居に飾られたレリーフの細かさが見事だ。
「ここがアヤの新しい寝室だ。」
アヤカーナはベッドの上で座り直し、頭上のドュランへ戸惑いの表情を向ける。
ドュランは寝台に腰を下ろし、不安げにしているアヤカーナと向き合う。
「この部屋は俺の部屋の隣だ」
そう言って顔を寄せ、耳元で囁く
「愛している。いつも傍に居てくれ」
アヤカーナは恍惚に震え、はいと答える。そしてドュランの肩に、喜びに潤んだ顔を預けた。
ドュランは喜びながらも、彼女がまだ縋るように抱きしめているマリユスの土産が、どうも気になり、謁見の間で目にしたマリウスの姿が頭から離れない。
マリユス王子…。冷たい眼差しが印象的な男だった。
「先程マリユス王子に会って来た。
容姿がアヤにそっくりで綺麗な方だな」
アヤカーナは顔を上げ、嬉しそうに笑う。
「美形な従兄様に似ているって言われて、私照れます。
でも、殿下の方がとても素敵です」
恥ずかしそうに俯いた途端、はっとして扉に顔を向ける。
「従兄様に、帰らないって伝えなくては。」
行かさんとばかり、ドュランはいきなりアヤカーナを抱き上げ、彼女もろとも寝台の中央へ倒れこんだ。
ドレスを通して、逞しい身体から温もりが伝わってくる。
「ドューだ」
呼び名を指摘して、ドュランは二人の間を隔てている小さな袋を取ろうとする。が、アヤカーナは抵抗する。
「この飴は大事な物なので、引っ張らないで下さい」
「それは、俺よりもマリユス王子が大切ってことか」
ドュランの拗ねた口調にアヤカーナは目を丸くする。そして少し考え、言い難そうに口を開く。
「…あの、笑わないで下さいね。
子供の頃から、琥珀色の飴をいつも殿…ドューだと思って眺めていました。琥珀色はドューの瞳の色ですし…。それに、甘くて幸せをくれます。
だから、私から飴を奪わないで下さい」
ドュランは驚きながらも、訊かずにはいられない。
「…そのこと、マリユス王子は知っているのか」
「私が琥珀色の飴が大好きなことは皆知っていますが、理由は私だけの秘密です。」
だろうな、知っていたら土産になどしないだろう。
ドュランは腕の中の少女の口に口を寄せて囁く。
「これからは二人だけの秘密だ」
初めは優しい口付けだった。軽く啄ばむように唇を吸われ、下唇を優しく噛まれる。気持ちの良さにもっと、とアヤカーナは口を開く。途端、キスが熱いものへと変わった。
口の中を飢えたような舌に蹂躙され、何も考えられなくなる。アヤカーナは夢中でドュランの髪に指を絡ませていた。
胸の動悸が激しく、今にも心臓が胸を突き破って飛び出してきそうだ。唇が離れると二人共荒い息を吐く。
ドュランは身体の位置を変え、アヤカーナのシュミーズを頭から脱がせて、脇に抛った。
アヤカーナは我に返り、ストマッカーやコル・バレネがいつの間にか身体から外されていたことに呆然とし、慌ててむき出しの胸を両手で覆う。
「隠さないで…」
ドュランはアヤカーナの両腕を、難なく片手で頭の上に押さえつける。彼女の突き出した胸を見詰める熱っぽい眼差しには、称賛が込められていた。
胸の先が固くなり、アヤカーナは頬を染め訴える。
「アザレアと女官長に駄目だと言われています」
ドュランは一瞬、身を強張らせたが、次の瞬間には薄桃色の乳首に唇を寄せていた。強烈な興奮のうねりに、アヤカーナは息が出来なくなった。もう一方の乳首が指でつままれ、静かに引っ張られる。
「腰を上げて…」
アヤカーナは素直にドュランに従い、スカートを脱ぐ為に腰を浮かせた。
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アヤカーナは、この上ない幸福感に満たされ、ドュランの腕の中で眠りについたはずなのに、魘され飛び起きてしまった。
思い出したくもないあの死刑執行人風の男が、再び首を締めつけにやって来て、今度こそ殺されると思った瞬間、ドュランとマリユスが助けてくれたのだ。アヤカーナはドュランに飛びつきキスに夢中になる。ふと、マリユスを見ると、彼が淋しそうに彼女を見詰めていた。彼の灰色の瞳が孤独に彩られ、人の温もりを求めている。従兄様のところに行ってあげなくちゃ。
そこで、目が覚めた。
「マリユス従兄様…」
思わず声に出して呟く。途端、しなやかで逞しい腕に組み伏せられた。
「ほう、夫の腕の中で、他の男の名を呼ぶとはいい度胸だ。」
「誤解です。夢の中で従兄様がとても淋しそ…っ」
上になったドュランが、アヤカーナの柔らかい唇を獰猛に押しつぶし、掌でゆっくりと身体中を撫で回す。
「お仕置きだな」
ドュランは、からかうように囁くと、徐々に頭を下げていく。彼の舌と指の技巧でめくるめく官能の世界に浸りながらも、アヤカーナは拒絶反応から身体を強張らせる。
信じられない、ドュランが恥ずかしいところを広げ、口付けをしている。
嫌!止めて!
脚を蹴り上げ抵抗するが、直ぐに押さえ込まれる。退こうとしても腰をつかまれ離さない。嫌だと必死に頭を左右に打ち振るう。なのにドュランは一向に止めようとしてくれない。
ああっ、アヤカーナの身体がビクンと跳ねる。頭は嫌がっているのに身体から力が抜けていく。太ももの筋肉が震え、知らない快感がこみ上げて、呼吸が速くなる。
いい…まるで天国にいるみたい…。
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マリユスは東宮殿の前の暗がりに身を潜めていた。業を煮やしての進入だった。パーレスの警備が甘くない事は分っていたが、昼間のアヤカーナの泣き顔が忘れられない。一言でも掛けて、慰めなくては。
「ここは立ち入り禁止だ。
斬られても文句は無用だと、ご承知の上の愚行か?」
低い声が響いて、逢瀬が叶わぬことを知る。
やはり、か…。息を吐き、回れ右をして声の主に向き合う。
「お役目ご苦労。タンギュー隊長」
マリユスのふざけた返答に、タンギューは眉を寄せる。
「速やかにご退出願う」
マリユスは悲しげな微笑を浮かべる。
「何度、愛しの従妹に面会を申し込んでも却下されて、つい心配でね
私としては、‘従兄妹同士の感動の再会’とやらの続きを希望しているだけなのだが」
タンギューの黒い瞳が据わり、纏っている空気が怒気をはらんだものへと一変した。
「おっと、そんな怖い顔をしなくても、直ぐに退散するよ。」
胸の前に両手を挙げてタンギューを制し、マリユスは素直に元来た道を引き返す。
タンギューは剣を構えたまま、男の背中を目で追い続けた。もう大丈夫かと思いかけた時、男が振り返った。剣を持つ手に力が入る。
「近衛隊の諸君、アーヤを護ってくれてありがとう。これからも頼むよ」
言って、マリユスはまた前を向いて歩き出す。
タンギューはマリユスを面白い奴だと思った。回りを囲まれていたことに気付き、剣が届かない所で捨て台詞を吐きやがった。…いや、違うか。捨て台詞ではなく本心からの礼か…。
タンギューはにやりと笑い、男の背に手向けを贈る。
「下世話かもしれないが、貴公はフォンティーヌとは遊びか?
手を出したからには、我が国のお姫様は、ケセンのお姫様とは大分違うことを、肝に銘じられておいたほうが宜しいぞ。」
マリユスの笑い声が澄んだ冬の夜空へ消えていった。
琥珀色の飴=べっこう飴
と書きたかったのですが、あえて琥珀色の飴です。
べっこう飴だと平らな飴が最初に浮かんでくるので…
あれ、あたしだけかな(*´ー^`)ゞ