精神科で見た、長期隔離患者の話
初めて隔離室に入ったときのことだった。
⸻
二十室ほど並ぶ部屋の中で、
一室だけ、違和感があった。
⸻
間取りは同じ。
⸻
だが、
中にあるものが違っていた。
⸻
⸻
生活用品が、置かれていた。
⸻
⸻
本来、
隔離室には物を置かない。
⸻
自傷の危険があるからだ。
⸻
許可されたもの以外は、
持ち込めない。
⸻
⸻
だが、その部屋だけは違った。
⸻
生活できるだけのものが、
揃っていた。
⸻
⸻
理由がわからなかった。
⸻
⸻
隣にいた看護師に聞いた。
⸻
⸻
返ってきた言葉は、
短かった。
⸻
⸻
「昔、やってるから」
⸻
⸻
それ以上は、
言わなかった。
⸻
⸻
あとから聞いた。
⸻
⸻
過去に、
職員を殺したことがあるらしい。
⸻
⸻
事実かどうかは、
わからない。
⸻
⸻
だが、
扱いは明らかに違っていた。
⸻
⸻
入浴は二人対応。
⸻
出入り口にも、
必ず人を配置する。
⸻
⸻
検温や採血も、
一人では行わない。
⸻
⸻
徹底されていた。
⸻
⸻
その患者は、
話さなかった。
⸻
⸻
何も言わない。
⸻
⸻
ただ、
こちらを見ていた。
⸻
⸻
ずっと。
⸻
⸻
目だけが、
動いていた。
⸻
⸻
舌を出したまま、
表情は変わらない。
⸻
⸻
異常な行動は、
なかった。
⸻
⸻
暴れることもない。
⸻
⸻
ただ、
そこにいる。
⸻
⸻
⸻
それだけなのに、
⸻
⸻
一番、
近づきたくないと思った
最後まで読んでいただきありがとうございます。
異常は、必ずしも目に見える形で現れるとは限りません。
むしろ、何も起きていないように見えるときほど
強く感じることがあります。
X「こころの余白|無理しない人間関係」で発信しています
https://x.com/yohakumaind/




