8 帳簿の管理
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さて、まずは、帳簿の管理からですわね。使用人を雇うにも、この家にどの程度の資産があって、毎月どの程度のお金が入ってくるかを把握しないとなりませんもの。
目の前には、執事に出してもらった財産目録と過去6 年分の帳簿。というのも、ルミエール公爵家はケインが二十歳の時に臣下に下ったことで興った公爵家。歴史としては浅いのですわ。
現在ケインが所有しているのは、辺境にある領地の他に、王都にあるこの屋敷と、国内各地の別荘がいくつか。領地からの税収は確かに途絶えてますわね。
宝飾品などはある程度持ってますが、これは王族としての品位を保つためのもので、売れるものではありませんわ。
金庫は見事に空っぽ。では、どうやって生活していたのかというと、やはりケインは騎士だったのですわ。
とは言え、もう退職してますけれど。
騎士団を退職した歳に与えられる恩給が、現在唯一の収入源ですわね。
「想像以上でしたわ」
本当に、見事にお金がありませんわ。これで良く子どもを10人も引き取ろうなんて思いましたわね。これでは、使用人を2人しか雇えないのも納得ですわ。
「……どこから手を付けるべきかしらね」
貴族の収入源は大きく二つ。一つは領地からの税による収入。もう一つは、仕事で得る収入ですわ。
領地を持たない貴族でも、城仕えをすれば当然給料を貰えますし、自分で事業をする方もいます。もちろん、先祖代々持っている莫大な資産を運用して、一生働かない人もおりますわ。
本来ならケインは、王族を離れるときに莫大な財産贈与を受けて、それを運用していれば一生お金に困ることは無かったはず。
それを使い果たしたと言われれば、呆れるのも当然でしょう?まぁ、無いものは今更どうしようもございませんけど。
わたくしはお祖父様から譲り受けた事業は継続しつつ、資産はきっちり運用しておりますわ。お金は使えば無くなりますけど、運用し続けて、利益分だけ使うようにしていれば、資産を大きく減らすことはございませんのよ。うふふふ。
帳簿を確認すると、これもまあ、見事にスカスカ。使途不明金だらけですわ。これでは、お金の流れは分かりませんわね。
「ケイン様の資産は、本当にこれだけですのね?」
わたくしの言葉に、申し訳さなそうに頭を垂れる老執事。
「作用でございます」
「帳簿は今までどなたが管理していたのかしら?」
「カイン様がご自身で管理なさってました」
「そうなのね……」
事業資産は会計士に任せますけど、個人資産は、女主人がいない場合、ある程度自分で管理することが多いですわ。ケインの場合、事業はなさってませんから、ご自身で管理していても不思議ではございません。
まぁ、これからは全てわたくしが管理しますけど。
収入を得るためには、新しく事業を始めるか、城仕えをするか。ケインにできるのはどちらかしらね。これは、ケインが回復してから、おいおい考えましょう。
次に、毎月の必要経費の確認ですわ。
まずは、子どもたちに会ってみないとですわね。




