4 最低の父親
◇◇◇
お屋敷の中は必要最低限の物しかなく、掃除も行き届いていないせいか、どこか埃っぽくて。おもわず扇で口を隠しましたけど、長居すると喉を痛めてしまいそうですわ。
そもそも、使用人の姿が見当たらないのはなぜなのかしら。さすがに、公爵様と子どもたちだけで暮らしている、なんてことは無いですわよねぇ……。
「こほん、ミハエル、公爵邸の使用人はどこにいるのかしら?」
「あ、あの、それが……執事さんが今腰痛で寝込んでいて、メイド長が弟たちのお世話をしています」
「……それだけ、ですの?料理長は?」
「……賃金が払えずに出ていってしまいました」
「では、誰が食事の支度をしてるんですの?」
「執事さんがしてくれてたんですけど、腰を痛めてからは、僕たちでなんとか……お庭から野菜を取ってきて、たまにパンを買ってくる程度ですけど」
うん、何となく、公爵様の体調不良の原因が分かったような気がしますわ。
◇◇◇
「やあ、君がアデリーナ嬢か。こんな姿ですまないな……」
お父様のお話から、なんとなく線の細い優しげなお姿なのだろうなぁと想像してましたが、意外や意外。ルミエール公爵様は、騎士のようにガッチリした体付きの殿方でしたわ。
「お初にお目にかかります。フローレンス子爵家の娘、アデリーナですわ。王弟殿下?公爵閣下?どうお呼びしたらよろしいかしら?」
ふわりとカーテシーをしたあと首を傾げるわたくしを見て、苦笑いを浮かべるルミエール公爵。
「ケインと呼んでくれ。アディと呼んでも?」
「……では、ケイン様とお呼びしますわ。ところでケイン様、王弟殿下であり、公爵閣下でもあるあなたが、どうしてこんなに貧乏でいらっしゃるのかしら」
わたくしの超弩級のどストレートな言葉に、呆気に取られるケイン。
だってどう考えたっておかしいですもの。例え養子を10人迎えたって、貴族家が傾くなんてありえませんわ。
「叙爵に伴う金品や、領地からの収入なんかもあるはずですわよね。結婚したらわたくしがこの公爵家の女主人として、資産の管理をしなければなりませんわ。どうなってますの!」
「……財産は全て博打ですったんだ。領地からの収入は、災害によって途絶えている」
「は?」
「つまり、俺は今文無しってことだな!」
たははっと、頭をかくケインに、ふつふつと怒りが込み上げて来たわたくし。
「ふざけるのも大概になさって」
本気で怒っているわたくしの顔を見て、ケインも真面目な顔をする。
「もし、そのお話が本当だとしたら、あなたは最低の人間ですわ!子どもたちを引き取っておきながら、満足な食事も与えていない。そんなの、父親失格ですわ!」




