2 これってお見合い、ですわよね?
◇◇◇
必死の抵抗も虚しく、お父様に連れられてルミエール公爵家に行くことに。
まぁ、借金があって貧乏って話ですけど、一応王弟殿下なわけですし、王都のお屋敷はそれなりにご立派なんでしょうね……とか思っていたら、とんでもない場所に連れてこられましたわ。
錆びついた門の前で呆然と立ち尽くすわたくし。これはお屋敷……っていうよりも、お化け屋敷?蔦に覆われた古い屋敷は、ところどころ壁が崩れていて、今にも何か出てきそう。鼠とか虫とか以外にも。窓ガラスにもヒビが入っていて隙間風が吹いてますし。
広い庭には美しい花もなく、なにやら野菜みたいなものが雑多に植えられてるんですけど、ろくに手入れもしてないみたいで萎びてるし。
「帰っていいかしら?」
思わずそう呟いてしまったのも、致し方ないことだと思いますわ。だってわたくし、今まで最高級品に囲まれて生きてきましたもの!こんな雑草だらけのお庭なんか見たこともありませんわ!こんな所で暮らすなんて、絶対に無理ですわ!
けれども、お父様の意思は固いようで、
「ハッハッハ!なかなか改築しがいがあるお屋敷じゃないか!これからお前好みに仕上げれば良いじゃないか!十分な資産はあるわけだし!」
とか抜かしやがりますわ。なぜわたくしがわたくしの財産で、このオンボロ屋敷を改修しないといけないのかしら?絶対に嫌ですわ!
この婚約が避けられないというのなら、できれば婚約破棄。とりあえず一回は結婚しなきゃならないのなら、白い結婚のち短期間での離婚が妥当なところではなくて?こんな所で暮らすなんて、ゾッとしますわ。ビタ一文使いませんからね!
◇◇◇
門の前で待つことしばし……。誰も出て来ませんわね。
「お伺いする時間は、あちらから事前に指定されていたのですわよね?」
「ああ。事前に招待状を頂いたからな」
「陛下の勝手な命令で、実はわたくし達、歓迎されて無いのではなくて?これが噂の門前払い、ってことかしら?それでしたら、無理して会わなくても構いませんことよ。むしろ清々しますわ」
「そんなことはないはずなんだけどなぁ……」
そこにパタパタと駆けてくる一人の子ども。
「大変お待たせ致しました!フローレンス子爵様と、アデリーナ様ですね!今、門をお開けします!」
執事のような服を着たその少年は、息を弾ませながらやってくると、錆びついた門をえっちらおっちら開けようと頑張っている。
しかし、なかなか開けられずに悪戦苦闘していたので、お父様と二人で手伝って何とか開けることが出来ましたわ。
門を開けるのにも一苦労なんて、先が思いやられますわね。
「た、大変申し訳ございません!お客様に手伝っていただくなんて……」
恐縮する子どもに、にっこりと微笑みかける。
「気にすることありませんわ。子どもだけに力仕事をやらせて、いい大人が黙って見てるなんてできませんもの」
子どもは国の宝。それは、貴族だろうと平民だろうと変わりませんわ。
「あ、ありがとうございます……あ、あの、お母さま……と、お呼びしても?」
ん?お母さま?
「あなた、もしかして……」
「あ、あの、僕、公爵様の養子で、長男のミハエルです。今日、僕たちのお母さまになられる方がいらっしゃるって聞いて、すごく楽しみにしていました!……これから仲良くしていただけると嬉しいです」
何故か将来の夫に会う前に、義息子に会ってしまいましたわ。




