13 王都の孤児院
◇◇◇
「あの、お母さま、今日は孤児院の慰問に行くんですよね?その格好は一体……」
メイドたちに指示をして、子どもたちには動きやすい服装をして貰いましたわ。
そしてわたくしが着ているのは、
「何って作業着ですわ」
わたくしの服装を見てポカンと口を開ける子どもたち。日頃ドレス姿しか見たことが無いので、驚くのも無理はありませんわね。
今日わたくしは、フローレンス子爵家が開発した上下繋ぎの作業着に身を包んでおります。手には分厚い手袋。足元は汚れに強い素材で作られた長靴ですわ。
「普通、着飾って行くもんじゃないのか……」
レオンがポツリと呟きましたけど、
「今日行くのは、わたくしの実家である、フローレンス子爵家が運営する孤児院のひとつですわ。そこではこの格好が最適ですの。まぁ、行けばわかりますわ」
とっとと数台の馬車に乗り込み、孤児院に向かうわたくし達。百聞は一見にしかず。タイムイズマネーですわね。
◇◇◇
「施設長こんにちは!」
「お待ちしておりました!」
明るい工場内に子どもたちの元気な声が響きわたります。
「こんにちは。忙しいところ悪いわね。今日はこの子たちに工場の見学をさせたいの。少し時間を貰ってもいいかしら?」
わたくしは現場でリーダーを任されている15 歳のキャシーに話しかけましたわ。赤い髪の毛にそばかすの可愛い女の子だけど、とてもしっかり者で、子どもたちからの信頼も厚い、頼れるリーダーですの。
「もちろんです!この施設に新しく入る子どもたちですか?」
「いいえ。実はわたくし、今度結婚することになったの。この子たちは主人の養子で、わたくしの子どもになる子たちよ」
「それはおめでとうございます!アデリーナ様がお母さまなんて。正直羨ましいです」
「ここにいる子どもたちも、キャシーあなたも、手塩にかけて育てた、わたくしの大切な子どもだわ。ちなみに今日の作業はどうかしら?」
「えへへ。ありがとうございます。アデリーナ様のおっしゃる通り、洋服の裁断から縫製まで分業制を取り入れてから、それぞれの作業の熟練度が上がって、作業効率が飛躍的にアップしました」
「上手くいって良かったわ」
「さらに、新しく入った作業員は、本人の希望を最大限考慮して、それぞれ得意な作業の所に配置しています!」
「完璧ね。さすがキャシーだわ」
「アデリーナ様の、日頃のご指導のたまものです。……その作業着、すごく似合ってます」
褒められて嬉しそうに微笑むキャシー。しっかりしているけど、まだまだ子どもらしい可愛らしさもありますわね。
机の上に生地を広げる係、型をとる係、裁断係、ミシン係、チェック係など、分業制でテキパキと作業する子どもたち。
まさにここでは、わたくしの着ている作業着を作っている最中ですわ。
「え、みんな、子ども……?」
そして、ここで働いているのは親を亡くした孤児院の子どもたち。そう、ここは、生活や教育を行う孤児院に隣接した被服工場なのですわ。
「……子どもを働かせてるの?」
リナがポツリと呟く。
「働かされてるのではなく、ここにいる私たちは自分たちの意思で職業訓練を受けているのよ。しかも、きちんとお給金を貰ってね!」
子どもたちの呟きにキャシーが胸を張って答えてますわ。
「自分の意思で?」
「ええそうよ。被服工場のほかにも、各種工場、農園、商店など、幅広い場所で職業訓練を受けることができるわ。孤児院に隣接しているものもあれば、王都のお店で実際に働けることもあるの。仕事が気に入って能力を評価されれば、そのままそこに就職することもできるわ。この孤児院では、言葉遣いや身だしなみなどのマナー、読み書き計算も習えるわよ」
「す、凄い。王都の孤児院って、僕たちがいたところと全然違う……なんで、こんな。王都ばっかり……ずるいよ……」
うつむくノア。
「いずれ、国中の孤児院がこうなりますわ。王都の孤児院は言わばモデルケースですの」
「モデルケース……」
「ええ。子どもたちに等しく勉強の機会を与えて、人生の選択肢を増やす取り組みを進めてますの。今はまだ王都だけだけど、他の領地でも少しずつ孤児院の運営が見直されてますわ。あとは、地域の人達との連携が課題ですわね」
子どもは国の宝。なぜなら、成長した後は、国を支える貴重な人材となるからですわ。




