この世に『風呂でも入ってけよ』展開は存在しない
なぜ俺はこんなにもバカなのだろう。
勢い余ってツッコミを連発していると、気づけば我が家が組み込まれたマンションの目の前。
つくづく自分が嫌になる。
今の心境を言葉で表わすとなれば、これ一択だ。
終わったーー。
苦手な人種に絡まれ、挙句の果てにはソイツに家バレ。
すみませーん。今から入れる保険ってあったりしますか…?
「あれ、ここもしかしてここ、おにーさんの家?」
「そ、そそそそそんなことないです…」
「いや、それは無理あるでしょ。てか、いくらなんでも噛みすぎな?」
「はぁ……。ま、そーいうことだから、お引き取り願います。」
「どーいうことですか?」
「帰れやゴルァぁぁということですが?(怒)」
ポツポツ…ポツ………ポツポツポツポツ
おい、お天道様。タイミング考えろよ。
絶対今じゃねぇだろ。
『雨降らせよ〜ポチッ』ってしたでしょ。
「あー、雨振ってきて、服が濡れちゃったなー。このままじゃ、風邪引いちゃうなー(棒読み)」
「俺は何もやってやんねーからな。」
「明日は熱出して、道端で倒れて、病院送りになっちゃうなー。」
「じゃ、元気でなぁー。俺はここらへんでお暇させてもらいまーす。」
「じゃあ君は、雨でずぶ濡れの可哀想な俺を見捨てた、最低人間になりたいんだ。へぇ〜そうなんだ〜。」
人聞き悪ッッッ。
「……」
「おーい。もしも〜し?」
「……」
「あれ。プリーズした?」
ガシッッッッ
「…あれ?すいませーん。この腕何ですか〜?」
「仕方ねぇ。水浴びくらいなら、させてやる。」
グッッッ
「うえぇ。力つよー。首締まってるんですけどー…」
ズルズルズル…
「ちょっ!タンマ!引きずんなって!おい!人の話聞いてる?!無視すんなー。おーい!」
これは不可抗力だ。
あくまでも、水浴びさせるだけだ。風呂に入れる訳ではない。
そう、本当にそれだけなのだ。
と、自分に言い聞かせながら、この迷惑野郎の頭を片腕に挟み、エレベーターの昇るボタンに指を添えた。




