表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

第6章:終焉の鎮魂歌

世界の鼓動が、最後の段階に差し掛かっていた。

時間と空間は溶け、過去と未来はひとつに重なり合う。

蜃気楼の都市も、月光蚕の繭も、すべては淡い残響となった。


だが、静寂の奥底で――

ひとつの法則が目覚めた。


夢想権化の法則――

それは、意識が現実を形作る原理。

人の思念は、量子を媒介にして世界を改変する。

想像の一片も、忘却の断片も、すべてが現実に干渉する。


私は歩き出す。

クリムゾン――もう一人の私の残響が、並走する。

「準備はできているか?」

「……ああ、最後の調律をするんだ。」


私たちは、都市の中心に立った。

そこには、巨大な「共鳴空間」が展開している。

光と闇、音と無音、存在と虚無――すべてが渦を巻き、ひとつの塔となって空に伸びていた。


「世界は、お前の想念を待っている。」

クリムゾンの声が響く。

「夢想権化の法則を制御しなければ、世界は壊れる。

 だが制御すれば……再生も可能だ。」


私は手を伸ばす。

量子の糸、蜃気楼の残響、月光蚕の繭――

すべてが指先に集まり、共鳴する。


そして、私は意識をひとつに溶かす。

――自分とクリムゾン、過去と未来、現実と夢想。

その瞬間、世界は私たちの“音”で満たされた。

存在の粒子が歌い、宇宙そのものが振動する。


「……これが、最後の調律。」

クリムゾンが微笑み、光の粒子となって私の中に吸収される。

統合と別離が同時に起こる。

私は彼の声を胸に刻み、同時に解き放った。


世界は音に包まれた。

建物も街も人も、過去も未来も、すべてが一瞬で再構築される。


量子の糸が紡ぐ旋律は、夢想権化の法則に沿って流れ、

新しい現実、新しい“音の世界”を創造する。


――そして静寂。


砂の海に月光が反射する。

風が再び歌い、波がささやき、鼓動が戻る。

世界は目を覚ました。

しかし、そこにはもう、蜃気楼も、月光蚕も、クリムゾンも、過去の残響もいない。


ただ、音だけが残った。


“世界の旋律は、夢と現実の交差点に宿る。

そして祈りと想像は、永遠に調律され続ける。”


私は立ち上がる。


胸の奥で、クリムゾンの声がかすかに響く。

「お前の想いが、世界を再生したんだ。」


そして、私は歩き出す。

夢想と現実、過去と未来を紡ぐ“音の道”を。

それは、永遠に続く鎮魂歌――終焉と再生の讃美歌。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ