第10章:第1の蝕徒−暁の爪−
赤い月光が都市の高層ビル群を照らす。
だがその光は、量子残響でねじれた都市に反射して、視界を錯覚の迷宮へと変えていた。
高層ビルの間に立つ光の柱――第1の蝕徒・アカリ(暁の爪)**が都市を支配する残像迷宮を編み上げた。
その光と影の間を縫うように、三人のパイロットたちがメシアノイズの操縦席に座り込む。
リーダーパイロットの視点。
「目標は暁の爪。都市全体が戦場だ」
都市残像を解析し、共鳴波の歪みからアカリの実体を特定する。
光の柱が爪を振るうたび、残像が無数に分裂する。
「幻覚ではなく、波を斬れ」
メシアノイズはブレードを振るい、共鳴波を一撃に集約。
残像を切り裂き、都市残響を破裂音のように響かせる。
だがアカリの反撃は一瞬も隙を見せず、残像が次々と都市を引き裂く。
戦闘者パイロットの視点。
都市の迷路の中、アカリの爪は戦場のあらゆる方向から襲いかかる。
メシアノイズは血と意識を共鳴させ、ブレードで瞬時に反撃を構築。
「吸収される前に返す……私の意識はひとつじゃない」
アカリが巨大化し、血と光を伴った巨人となると、戦闘者の波動は巨大な手の反撃に変換される。
都市の瓦礫が砕け散る中、メシアノイズは共鳴波を媒介にし、アカリの攻撃を吸収・反射して迎撃する。
観測者パイロットの視点。
都市全域の残響と量子迷路を観測し、敵の残像と実体の位置をリアルタイム解析する。
「幻想に惑わされるな、現実の波を見ろ」
アカリの爪や残像が高速で都市を切り裂くが、観測者の共鳴波探知が戦場を可視化する。
都市の残像が崩れ、量子迷路が揺れるたび、観測者は共鳴波を送り、リーダーと戦闘者の攻撃精度を補助する。
一瞬の判断の遅れが命取りとなる戦場で、観測者の目は都市全域を覆う。
三層共鳴戦の極限。
巨大化したアカリは、光の爪で都市を押し潰し、残像でパイロットたちを翻弄する。
だが、リーダーが斬撃で残像を切り裂き、戦闘者が共鳴波で攻撃を反射、観測者が戦場全体を補助する。
「これが……俺たちの調律だ!」
リーダーの共鳴波が戦闘者の反撃、観測者の戦場補正と同期し、都市中心に一点の衝撃波が発生する。
血と光、都市残像が渦巻く中、アカリの爪は砕け散り、巨大生命体の姿は天秤の残響として吸収される。
都市に静寂が戻る。赤い月光は残響の中で微かに揺れ、戦場の破片が散乱する。
三人のパイロットは深呼吸をし、それぞれの役割の重さを胸に刻む。
暁の爪――都市と意識を裂く残像。だが、三層の共鳴で制御され、調律された。
革世紀の戦線は、まだ終わらない。




