第9章:蠢く蝕石天秤
赤い月光は消え、革世紀の空に淡い残響が漂う。
都市は量子共鳴で再構築され、メシアノイズの光が微かに街を照らす。
しかし、世界の安定は束の間だった――蠢く蝕石天秤が、その姿を顕す。
天秤の覚醒。
地平線の果てから、天秤の巨大な影が揺らめきながら浮かぶ。
その両端には、光と闇、救済と破壊の象徴が見える。
都市の残像が歪み、建物は螺旋状に崩れ、道路は迷路のようにねじれる。
「……天秤が、暴れている!」
リーダーパイロットの声が空に響く。
13の蝕徒が一斉に出現し、天秤の揺らぎと完全に同期する。
都市、意識、時間――すべてが量子迷路の嵐に変わった。
13の蝕徒との連動戦。
・アカリ(暁の爪)
都市残像を操り、パイロットを錯覚の迷宮に誘い込む。
高速で残像を編むたび、共鳴波は逆流し戦意を削ぐ。
・カゲロウ(幻影の牙)
精神干渉で恐怖を増幅、パイロットの思考を揺らす。
一瞬の隙をついて、都市の壁面を裂く攻撃を仕掛ける。
・ツムギ(連鎖の手)
パイロットの共鳴波を吸収し、反撃力に変換。
攻撃のタイミングを読まれ、さらに天秤の揺れが増幅される。
戦闘の心理戦。
戦闘者パイロットは血と意識を共鳴させ、攻撃力を強化する。
観測者パイロットは都市全域を精神波動で編み込み、残像と蝕徒の動きを逆算する。
「油断するな……奴らは天秤と同期している!」
パイロットたちは、個々の蝕徒の能力だけでなく、天秤そのものの動きと共鳴する戦術を組まなければならない。
都市の建物が螺旋状にねじれ、瓦礫と血の飛沫が空中に舞う。
蝕徒の攻撃は単体ではなく、天秤の揺れに連動して倍化する。
共鳴波は混ざり合い、戦場は意識と物質の迷宮と化す。
メシアノイズとの連携。
「全員、共鳴波を重ねろ!」
リーダーの指示で、パイロットたちはメシアノイズと意識を共振させる。
天秤の揺らぎを共鳴波で吸収し、都市残像のねじれを修正。
13の蝕徒の連動攻撃を一点ずつ封じ、量子迷路を徐々に安定化させていく。
最高潮。天秤の収束。
最後の蝕徒、**シンジュ(終焉の心臓)**が天秤の中心から現れる。
全蝕徒を統括し、都市の量子共鳴を最大化する。
パイロットたちは共鳴の糸を極限まで編み、シンジュに直撃の共鳴波を叩き込む。
天秤は揺れを止め、都市と残像が安定する。
13の蝕徒は形を崩し、天秤の残響として再吸収される。
光が収束し、都市は静かに呼吸を取り戻す。
天秤は姿を消したが、微かな揺らぎは世界に残る。
メシアノイズは再び守護者として都市を見下ろし、
パイロットたちは血と意識の旋律を胸に、次なる革世紀の戦いに備える。
蠢く蝕石天秤――13の蝕徒――そして人類の意識。量子共鳴戦線は、まだ終わらない。




