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ぬくもりの香り  作者: noi
香りとの交じり合いを
19/33

12月19日 木曜日 雪焼けの香り②

「あっちのレンタルルームの受付でレンタルするものを決めれるからまずはあそこに行くぞ」


 楽斗らくとに言われるがままについて行き、建物の中へ入る。外観からはよくある小屋のように見えていてあまり分からなかったけど中は倉庫のようになっていた。


 このレンタルルームは受付を抜けた先にスキーウェアやスキー板、スキーブーツのレンタル用品がズラッと並んでいた。想像していたよりも多くの物であふれている事に少し驚きながら受付の列に並ぶ。


「並ぶ前に貰ったこの紙にレンタルする物を記入しないといけないんだけど陽介ようすけは俺が書いたのを書き写したら良いから。ここの身長と体重の部分だけ自分の書いといて」


 手元の記入用紙にレンタル用品の項目と身長、体重とスキーの経験などを記入していく。


 書き終えて4人で順番が来るのを待つ。


「あと、10分くらいで受付まで行けるな。もう、みんな書けたか?」


「僕は書けたよ」


「私らも書いたよ。ってか楽斗もスキーにしたんだね。スノボー滑れるって聞いてたからスノボーすると思ってた」


「俺もそうしようかなって思ったんだけどさ。3人ともスキーだからさこの機会に俺もスキーを練習してみようかなってな」


 もしかして、楽斗は1人だけスノボーなのが寂しかったんじゃないだろうか。


「そうだったんだ。じゃあ、私たちが2人に教える感じなんだね。私はあんまり上手じゃ無いけど頑張って教えるね」


 和気あいあいと話していると僕たちの番が来た。記入法を係員に渡して間違えが無いか確認されてからまた新しい紙を渡してもらう。


「さっき渡されたこの紙をそれぞれの受付で見せるとレンタルできるんだけどスキーウェアだけレンタルしたら集合しよう」


 そう言われてから改めてレンタルルームを見渡すとスキーウェア、スキーブーツ、スキー板のそれぞれに対して受付があった。


 人の流れに沿ってスキーウェアの受付に行き、受付の係員に紙を見せてスキーウェアを選ぶ。


 僕と楽斗は5分くらいで選び終わった。僕が黒色のシンプルなスキーウェア。楽斗が赤色のシンプルな物を選んだ。僕と楽斗はってことは当たり前だけど松村まつむら先輩と衣緒いおさんはまだ選んでいる。


 さすがに僕らが選ぶのが早かったなと話していた。そうやって話すこと10数分。まだ、2人は選んでいた。どうやらレディースウェアはレンタルできる種類が多いらしい。


「俺がここで遅いって言ったら怒られるんだろうな」


「当たり前だろ。そんなこと僕は怖くて言えないよ」


 本気で怒られはしないと分かってるけど怖くて言えないよね。


 結局、その会話の5分後に選び終わった2人が歩いてくる。


「ごめん。待たせてしまったかな。思ってたよりスキーウェアの種類が多くて悩んでしまってね」


「大丈夫ですよ」


「あ、楽斗。このスキーウェアどうかな?」


 隣で楽斗が試練を課されている。なんでそう思うかと言うと衣緒さんに尋ねられた楽斗の顔が一瞬、固くなったからだ。たぶん、あいつはダサいとは思っていなくても褒めるほど良いとも思っていなかった。そんな顔だった。頑張れ。


「私が選んだのはこれなんだけど。陽介君はどう思う?」


 こちらも同じだった。


「黒と薄めのクリーム色の落ち着いた感じでいいと思います。その落ち着いた感じが結構好きですよ」


「ありがとう。君がそう言ってくれそうな物を選んだからね。もちろん、自分がこのスキーウェアが一目見て好みだったからって理由も大きいんだけどね」


「先輩の好みが僕の好みと近いのかもしれませんね」


 あれ?先輩は今、『君がそう言ってくれそうな物を選んだ』って言ったような気がする。聞き間違えじゃないと思うけど聞き返すことが出来ない。さらっと話を流してしまった事に後悔してしまう。


「そうかもね」


 先輩のちょっとした笑みが可愛かった。僕の疑問なんてどうでも良くなるくらいに良い笑顔を見れた。こんな感じでふとした何気ない会話の中で魅せてくれる表情が好きなんだと改めて実感する。


「スキー板とかをレンタルする前にロッカーに行くぞ。荷物を預けてスキーウェアに着替えたりしないといけないから」


 ロッカールームは人が多く空いているロッカーを探して荷物を預た後、男女に分かれて更衣室へ移動した。


「あんまり人がいなくて良かったな。普段だったらもっと人がいてロッカーも借りれなかったかもしれないな」


 あれだけ人がいたのにまだマシだったのか。受付でもらったリフト券をスキーウェアの左手首辺りにあるリフト券入れに入れながら話す。


「結構、人が居たと思うんだけど。あれでも、あんまり人が居ない方なんだ」


「そうだぜ。ピークの時なんて最初の受付で1時間くらい並ばないといけないな。さっきのロッカーなんて空いている方が珍しいしな。それに、この更衣室もゆっくり着替えられるスペースがあるだろ」


 人が集まりすぎてムワッとしている時の最悪な香りを想像してしまった。絶対に遭遇したくない混雑具合だ。


「今日もある程度は混んでてもおかしくなかったけどな。そうじゃなくて良かった良かった」


 「本当に良かったよ。っと言うか、このスキーブーツってどうやって履いたらいいんだ?」


 普段履いている靴とは全く別物の硬く、重いブーツの扱いが分からない。


「あー、今は足がブーツの中に入っていたら大丈夫だ。ブーツの固定はゲレンデに出てからした方が良い」


 そんな物らしい。楽斗の言葉に従っておこう。


 2人共、着替えが終わったので更衣室から出ていく。


 スキー板のレンタル受付前で楽斗と待っているとすぐに着替え終えた2人が出てきた。


 大学では見ることのできない松村先輩のスキーウェア姿に感動する。


 スキー板との受付で記入用紙を提出してスキー板を受け取る。最後にストックを忘れずに持って出口に向かう。


 ゲレンデを出てすぐに改めてスキー場に来たことを実感する。


 既に滑走してゲレンデを楽しんでいる人がいる。スキー板やスノーボードを履いて今まさにリフト乗り場に向かっている人がいる。


 雪は太陽の光を反射して白く輝いている。


 リフト乗り場からはポーンポーンと音が聞こえ、スピーカーからは音楽が聞こえてくる。


「まずは人の邪魔にならないところに行ってスキーブーツの締め方とストックの持ち方、スキー板の履き方を教えるね」


 松村先輩がそうやって言ってくれる。


 どれだけ滑れるようになるかは分からないけど関係ない。この時間を楽しもう。

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