力よ
神様は言いました。
「面白いやつだな。お前には経験値のふり方を選ばせてやろう」
「攻撃力全ぶりで!!!」
これが間違えの始まりだった。
神様も変な顔してたもの。
だが仕方ない。こういう生き方しかできないのだ。
転生先の両親は言いました。
「あのこ、なんの特技もないわ……顔も良くないし、身体も小さいし……もう、闘技場で稼がせるしかないわ」
今年、不作だった。
寒気が麦の苗を全滅させてしまった。森の作物すら不作で、オークやゴブリンが人里まで降りてくるほどだった。
そのような状況で村の半分の人が餓死し、子供がお金のために売られるのは普通の事だった。
兄弟4人いるなかで、1番頭の悪くて、1番身体の小さい俺が売られるのはまったく利にかなっていた。
ガタガタと質の悪い荷車に乗せられて、首都に来た。首都には娯楽として闘技場がある。仕方ない。この世界にはテレビもゲームの無いので、闘技場が人気の娯楽だった。
ここでは命をかけて戦うのを見るのがみんなやりたいことだった。
相手はオークやオーガなどの化物はもちろん、小型の竜まで鎖で繋いで持ってくるという気合いのいれようだった。その気合いをゲームを作るために使えよ。
その思いは、始めて見学してもらった試合で消え去った。
観客の歓声が地震だと思うほどだった。対戦相手の人が軽々と持ち上げられ、壁に叩きつけられる。何百万円もしそうな剣が簡単にへし折られてキラキラと宙を舞った。
偉そうなやつが言った。
「お前やってみろ」と。
できるわけ無いじゃないですか。
何の訓練もしてないんですから。
相手のオークだってまったく負ける事なんて考えてなくて、むしろ食事がきたぞーって感じで向かってきた。
俺は、足元に転がっていた錆びた剣を拾っておもいっきり振り抜いた。
避けられるどころか、目の前をゆっくりと横凪に通過しただけだった。
しょうがないですよね。剣って重いんですね。こんな何の訓練もしてない人間が剣を振り回せるわけもなくて、まったく役にたたなかった。
司会者が説明文でオークの種類がポリケファロ・ポケメントートンという種類だと観客に説明している。
オークはもう完全に油断していて、頭の上に振り上げた棍棒を俺に向かってブンブンと振り回し、まるで、俺が剣を振り回しているみたいに真似して笑っていた。
オークは笑う知能があるんですね。おそらく、人と共生でるように進化した個体と思われるんですね。
それで、観客に自分の凄さを見せるために両手を広げて躍りを踊り始めたんですね。
バカですね。
俺、攻撃力バカ高いんですね。
錆び付いた剣でオークの足先に振り抜いて、巨体がバタンと倒れた。
攻撃力およそ1万。オークの体力は240。
オーバーキルであった。
本来戦いを盛り上げるための生演奏オーケストラが、瞬時に終了曲に行き、花吹雪と、本物の花びらが天井から降ってきた。
壁の穴からは、医者と思われる人が走ってきて、オークの様子を見て頭を振っていた。
頭を振ったということはダメだと言うことなんですね。
観客の皆さんラッキーですよ。こんな試合見れたんですから。なのに最後まで歓声はなかった。なんでだ。