第六借 匠の奴隷
「ユーリお兄ちゃん、料理上手なんだね!」
と、瞳をキラキラさせ、アンバーは口いっぱいに料理を頬張った。
食事を終えると、グレイは
『家や森から木材を調達する資材調達班』と
『資材をもとに建築をする建築班』
に住民を班分けをした。体の不自由な者と女性、子供は安全に資材を集めて比較的力のある者は建築班に回った。
グレイの建築技術は匠とも呼べるほどだった。盗んだ技術はもちろんだが、住民とのコミュニケーションが取れていて、彼の人相の良さが滲み出ていた。
奴隷の身ながらそこまでの建築技術を習得するのに、生涯でどれほどの時間を費やしたのだろう…
しばらく建築をした後、俺はもう一つの仕事に取り掛かることにした。
「グレイ!俺は晩飯の準備をするよ!」
「おう!元気が出るようなの頼むぜ!」
「ああ、任せとけ!」
とは言ったものの、近くに村もなければ森の恵みにも限りがある。どうするべきかと頭を抱えていると、
「あら、お困りのようね」
「イヴ?!」
驚いて目線を上げると、木の枝にぶら下がったイヴと目があった。
「なんの説明もなしにいきなり飛ばすなよ!」
「まあ細かいことは気にしないで!」
「細かいことって…まあ良いか。」
「フフッ。それで、今は食材探しちゃうかしら?」
イヴは、木の枝から飛び降りて浮遊しながら聞いてきた。
「ああ、そうなんだが見つからなくてな」
これの困り顔を見るとイヴは少し笑った。
「これも初回サービスよ?私、優しいからね。」
するとイヴは指を鳴らした。その瞬間、俺の手には食料のたくさん入った布袋が握られていた。
「良いのか?」
「ええ、もちろん。これも祝福ね!お代はスキルでお願いね!それじゃ、見守ってるわよ。またね〜」
「あ、そうだよ。スキル!どうやって使うんだ?」
俺が言い終わる前にイヴは煙に包まれどこかへ行ってしまった。
俺はイヴにもらった食材でポトフを作った。
「夕飯できたぞー」
「お!待ってました!今日の作業は終わり!みんなで飯にしよう!」
グレイがそういうと、全員建物の中へ入っていった。
「「「いただきます!」」」
と挨拶をしていっせいにポトフを頬張り始める。相当疲れていたのだろう。
「ユーリお兄ちゃん!ぽとふおいしい!」
「そりゃあ良かった。火傷しないように気をつけろよ?」
「はーい」
人に褒められるというのはやはり嬉しい。
(イヴにも食わせてやりたいな。礼も含めて。)
再び食べ始めると、グレイが話しかけてきた。
「ユーリ!このポトフ美味ぇな!職人技って感じがするぜ!」
ビシビシと俺の背中を叩きながらニカッと笑った。
「職人技って言ったらお前の建築も凄かったぞ?」
「ああ、あの技は俺の夢への一歩でもあるんだ」
グレイは顔を緩めて話し始めた。
「俺よ…チビの頃から鉱山で働かされてたんだ。やっと出られて自由になったと思った.でも、今度は金持ちの別荘を作らされてクソ悔しかった。村も守れねえ、俺に何ができるんだって。」
「グレイ」
「でもよ、気づいたんだ!俺が技術を盗んで職人になれば村の奴らにでっけえ城を作ってやれるって!」
グレイは再びニカッと笑った。どれだけ虐げられようと光を見つけて突き進む姿をカッコいいと思った。
「ハハッ!笑ってもいいぜ?だけど俺はこの夢をぜってえ叶える!」
「笑わねえよ。俺もその夢、協力させてくれ」
俺がそう言い手を差し出すと、グレイは驚いた表情を見せたがすぐに俺と目を合わせ
「ありがとよ!相棒!」
と言い力強くハイタッチをした。