第五借 防衛強化計画を始めよう
「見捨てることはない」とは言ったものの、今の俺にできることは限られている。だからこそ、今できることを精一杯やろう。
「まずはこの村の生活環境を整える」
「生活環境…ですか?」
「ああ、今の村の状態だと防衛が不十分だ。」
真冬の寒さを耐え凌ぐために、密集するするしか方法がないのは流石にまずい。
「悪いが俺は建築には疎い。誰か詳しいやつは…」
「そういうことなら俺に任せてくれ。兄ちゃん」
大男が胸を叩きながら名乗り出た。
「おっと、自己紹介がまだだったな。俺のグレイ。一ヶ月前まで金持ちの別荘を作るための奴隷をだった。歴が長いもんでな、技術は盗んできたぜ」
「本当か!助かる。よろしくなグレイ」
「おうよ!」
俺とグレイは街全体の現状をまとめた資料を作った。
《シュタイン村防衛強化計画書ー建築ー》
1,家を建て直す
2,バリケードを建てる
3,村長宅(集会所)を建て直す
「ざっとこんなもんだな!技術の方は任せとけ!超絶かっこよくしてやるぜ」
「それも良いが、耐久性の方も頼むぞ?」
「当ったりめぇよ!安心して暮らせる村を作ってやるぜ!」
しかし、今の村から2人で建て直すとなると時間がかかる。もしその間に攻撃もしくは災害があれば、守り切れるか不安が残る。
「あ、あの…」
声のする方にふり返るとそこには、座り込んでいた住民達が立ち上がり俺達を見つめていた。
「「私…達も協力…したいです」」
「お前ら…」
「お兄ちゃん…おねがい。私たちも村を守りたい」
アンバーは俺の服の袖を細く小さな手で掴みながら思いを叫んだ。
「それなら、まずは飯だな」
俺がそういうとアンバーは強く握り締めていた銀貨を俺に向けた。
「これ…お兄ちゃんの…」
「気持ちは嬉しいけど、それは自分で持っとけ。身知らずの俺に話しかけた勇気へのご褒美だ。飯は俺が作るから、ちょっと待ってろ。できるか?」
俺がアンバーの頭を撫でながら問いかけると
「うん!ありがとう!ユーリお兄ちゃん!私待てるよ!」
「偉いぞ?アンバー!他のちびっ子達も慌てず待てるか?」
俺が聞くと子供達は声を揃えて返事をした
「「「待てる!」」」
「よし!良い気合いだ!」
数分前まで静かだったシュタイン村にどっと笑いが起こった。
村に残っていた食料は僅かだったが、炊き出し経験のある俺は、知識をフル活用し村民全員がお腹を満たせる美味い料理を作った。
「あの食材からここまで作れるとは。
旅の方…いえユーリさんは博識でいらっしゃる。」
教会で学んだ技術使うのはを少し癪だが、今は駄々をこねている場合では無いと結論づけ、全員に食事を配り終えた。
「口に合わなかったらすまん。だが運動するなら、まずは食事だ!今はエネルギーをつけるのが最優先!そんじゃ、召し上がれ」
「「「いただきます!」」」