第三借 シュタイン村
気がつくと俺は目も当てられないほどに荒れ果てた村にいた。整備されていない道、隙間風の通る家、藁で作られたスカスカの屋根。
(多分ここがシュタイン村…だよな?)
周りを見渡すと薄い文字で
《シュタイン…ム…ラへようこそ》
と書かれている看板を見つけた。
(ここで何をしろと?イヴ)
考えてもわからないか、と俺は村を散策することにした。
しばらく歩くと少し大きく作られた村長の家らしきものを発見した。見た感じ村長は不在そうだったから、後で来ることにした。
(飯屋でもないかな。腹減ったな)
なんて考えていると、子供が駆け寄って、今にも消えそうな声で話しかけてきた。
「メ…恵み…恵んで、ください…」
獣耳の生えた獣人族の少女だった。
頰はコケて、着ている服はツギハギだらけ、転んだら簡単に死んでしまいそうな体をしている。
イヴの魔法で礼拝服からローブに着替えた俺の服を見て、金を持っていると思ったのだろう。
(悪いが俺にも金は…ん?)
ポケットに手を入れた俺は何かを掴んだ。
取り出してみるとそこには
『悪魔からの祝福よ。どう使うかはあなた次第』
と、書いてある紙切れと金貨,銀貨,銅貨が6枚ずつ握られていた。
「悪魔が祝福って…まあ良いか」
「?」
「ほらよ。大事に使えよチビ。」
俺が銀貨を手渡すと少女は俺を見つめ、硬貨を握り、困惑しながら問いかけてきた。
「こんなに…良いの?」
「もちろんだ!俺も数分前まで金なしだったからな。いっぱい食ってデッカくなりな」
俺がそういうと少女は涙目で声を振り絞り
「ありがとう」
と言い去っていった。
仮にも一応元聖職者。善の心は失ってない。
一方、走り去っていった少女は…
「みんな、旅の人からお金貰ったよ。」
村の住人に輝く目でそう報告した。
「今なんと?アンバー」
熊の獣人らしき大男が聞き返す。
「あの、ね。マントのお兄ちゃんが…たくさん食べてってね、くれたの」
「マントのお兄ちゃん…?その人は今どこに?」
大男は焦りながら問いかけた。
「わ、分かんない。でも村長の家の近く…にいたよ」
「分かった。アンバーはここで待ってろ。お前らもな!」
大男はアンバーとその場にいた村の住人達に声を掛
けてから,走ってマントのお兄ちゃんを探した。
ユーリは、所持金の使い方を考えながらベンチに座っていた。
(金貨を使える店は、ここには無さそうだな。銀貨は装備に使おう。銅貨は…食事代かな。宿代は野宿…)
なんて考えていると、息を切らして走ってきた大男に声を掛けられた
「あんたがアンバーの言ってたマントの兄ちゃんか?」