第二の追放
目が覚めると見慣れた聖堂の天井が見えた
ああ、死なずに済んだ。神が見捨てないで下さった
僕は心の中で祈りを捧げた。祈り終わった後、司祭様を探すことにした。一体誰が僕をここまで運んで下さったのか聞かなければなるまい。
「あの!司祭様!」
「ん?おお、ユーリか!目覚めて良かった。本当に」
「はい。神のご加護が僕を守ってくださりました。」
「ああ、神はいつでも私たちを見守ってくださる」
司祭様の声は心地がいい。聖書を読まれる時も、会話をしている時も相手のことを考えている声ように聞こえる。
「それと、質問があるのですが」
「聞こう」
「僕をここまで運んで下さった方は…」
質問を言い終わる前に、聖堂の鐘の音がした。神のお告げがあった時に鳴る鐘だ。
「すまないユーリ君。私は行かなくては」
「あ、はい。こちらこそ呼び止めてしまってすみません」
足早に歩いていく司祭様の後を追い、僕も聖堂の中央にある祈りの間へ向かうことにした。
僕が祈りの間へ着くと、すでに何人かのシスターや見慣れた顔ぶりがいた。僕も祈りの姿勢に入りお告げを聞いた。
『真の信仰を持たぬ者。等しく追放すべし』
お告げについて、祈っているといつの間にか空が暗くなり、夜になった。消灯時間になったから僕は病床に入り眠ることにした。
すると遠くの方から声が聞こえた。
「きっとお告げは彼のことですよ司祭様」
「そんなことは分かっておる。神に選ばれし勇者様に見限られたのは、他でもないあやつしかおらん」
「だったら早く追放しましょう!」
「ああ、明日の朝にでも墓地に埋めるとしよう」
気がつくと僕は走っていた。雪が降り、視界は悪く、頼れるのは薄暗い街灯の灯りだけ。それでも走り続けた。無我夢中になり過ぎてしまっていたようで、いつの間中見たこともない路地裏に入ってしまった。
とぼとぼと歩いていると、段差に気づかず転んでしまった。
「僕はどこで間違えた?何がいけなかったんだ」
誰に聞いたわけでもない質問のはずだった。
「哀れね」
後ろから声が聞こえた。振り返るとそこには真冬なのにも関わらず布面積の少ない服を着た女性がいた。
「哀れ?僕がですか?」
「ええ、そうやって他人を責めず、善人であろうとするあなたは哀れだって言ってるのよ」
何故こんなに言われなくちゃならないんだ。僕の中かが壊れる音がした
「僕だって、好きで自分を卑下してるんじゃない!こうやって生きるしかなかった!名前も知らないあなたにそんなに言われる筋合いはない!」
こんなに大声を出したのは赤子の頃以来だと思う
「イヴ」
「え?」
「私の名前はイヴよ」