第十三借 生きていてくれて
マリィは俺達が侵入したことに、一切気づいていないようで屋敷の中はとても静かだ。
「作戦1は成功。グレイ、作戦2は頼んだ」
「おう!任せろ!」
そういうとグレイは目を閉じて鼻をぴくりと動かした。
「分かったぜ。」
「どこだ?」
「上だ。」
人差し指を立てながら、グレイは話を続けた。
「フランの言っていた屋敷内の構図で言うと、寝室…だな!」
「流石グレイ、ありがとう!寝室を避けながら奴隷にされてる仲間を助けよう。」
「おう!」
「え、えぇ。」
フラン達の手は震えていた。
「無理しなくて良い。俺は仲間には苦しんでほしくないんだ。」
俺がそう言うと、フランは震えていた手で俺の手を握った。
「ここに来ると昔のことをより鮮明に思い出してしまいます。でも…もしここで帰ったら私は私を一生許さないと思います。だから、一緒に進みます!」
フランの手に力が入ったのが伝わってきた。
「ユーリお兄ちゃん…僕も!/私も!」
「よし…じゃあ1分1秒でも早く助けに行こう!」
「うん!/えぇ!」
俺たちは寝室を避けながら、食堂へ向かった。
―その頃、マリィの寝室ではー
「マリィお嬢様。お食事の準備が整いました。」
「あらそう。今日はどの奴隷を痛ぶってやろうかしら」
「お嬢様。発言をお許し下さい。お父上の期間が近づいております。火遊びはもう…」
「ハイド!執事風情がこの私に意見を述べるな!」
マリィは近くにあった花瓶を執事であるハイドへ向けて乱暴に投げた。
「申し訳ございませんでした、お嬢様。」
「朝から気分が悪いわ?早く食堂に行くわよ?これは命令!」
マリィは、花瓶をもう一つ床に叩きつけて部屋を後にした。
ーユーリ達は食堂前についたー
「ここまで一人も兵士を見なかったぞ…」
「マリィは、損害なんて気にしない女です。きっと気に入らない兵士を辞めさせたのでしょう。その性格が自分の首を絞めているとも知らずに…」
「なるほどな。だが誰一人傷つかずにここまで来れたんだから、作戦には支障はないな。
よし、行くぞ!」
俺たちはグレイの超嗅覚でマリィがいないことを確認し、食堂に入った。
「?!」
食堂に入るとそこには、銀食器を拭く首輪をつけられた獣人達がいた。
「「ア、アンバーちゃんにポコくん…?」」
「「フラン…なの?!」」
「みんな!生きててくれた…」
アンバー達は互いに泣きながらハグをした。
「ど…どうしてここに?」
「みんなを…た…助けに来たの!」
アンバーは、泣きながらも必死に説明をした。
「ユーリお兄ちゃんって言うすごく強いお兄ちゃんと、グレイお兄ちゃんがみんなを助けてくれるって…自由にしてくれるって…」
「ユー…リお兄ちゃん?」
「こんにちは。俺はユーリ・オレスティア。みんなを助けに来たよ!」
「アンバーと…いっしょに…僕たちを助けに?」
「ああ。俺が君たちを自由にする!」