第十二借 侵入
俺たちはマリィを倒すために、クルージス邸へ出立した。
邸宅は、ここから遠くはないらしい。
グレイはちびっ子達を、俺はフランを支えながら向かった。
「ごめんなさい。重いでしょ?」
「重くないよ、それに美女を支えられるなんて男として本望だよ」
「フフッ、ありがとう」
「プク〜〜ッ」
アンバーは何故か頬を膨らませながら、こちらをじーっと見ていた。
「アンバーどした?トイレか?」
「グレイ!ッお兄ちゃん!違うよ〜っ!」
「そうか?トイレならすぐ言えよ!」
「もーっ!」
「「はははっ!/フフッ」」
「ユーリお兄ちゃんにフランお姉ちゃんまで!」
「プッ」
「ポコまでー!」
グレイは緊張をほぐすように空気を明るくした。
休憩を挟みながら歩くと屋敷が見えてきた。今まで散々王都で見てきた屋敷とほとんど変わらない外見のはずだが、違和感を覚える。
「ユーリ?どうした?」
「いや。何でもない。」
「気をつけろよ?もしかしたら悪徳貴族殺し、ジャック・ザ・リッパーが出るかもしれないぞ?逆にこの家が襲われてないのが、おかしいくらいだしな!」
「「グレイお兄ちゃん!怖いこと言わないでよ!」」
「「ははっ!/ふふっ!」」
笑い終わった俺たちは、気合いを入れ直して作戦の確認をした。
「よし、最終確認をするぞ。」
「おう」
《マリィ・クルージス復讐計画》
1:今はほとんど使われていない裏口から侵入
2:マリィの居場所をグレイの超嗅覚で探知
3:奴隷にされた仲間を解放
4:マリィへ復讐
「敵兵は俺に任せろ」
「「うん。ユーリお兄ちゃんを信じる!」」
「ありがとうなアンバー、ポコ!」
「ユーリさん…無理…しないで下さい」
「ああ。フランもな!」
「ユーリ…行くか!」
「おう、作戦開始だ!」
俺たちはフランの案内に従いながらできるだけ見つからないように裏口へ向かった。
「裏口とは言え見回り兵達がいるな…」
「ユーリ…」
「みんなそんな不安そうな顔すんな!任せとけ」
俺はスキルの目を使い、兵士の肩書きを見た。
《クルージス邸見回り兵》
複数者共通肩書き
・マリィの奴隷 ・見回り兵 ・男性
(5人程度なら一気にスキルが使えるのか!これも加護のおかげか…よし)
「肩書き追放!!」
俺がスキルを使うと元兵士達は慌て出した。
「あれ?俺はどうしてここに?」
「つーか何だこの重い服!」
「分からないが、とりあえずここを離れよう…」
「本当にどうしてここに…」
「わ,分からない」
混乱しているのか、次々と裏口から離れて行ってくれた。
(逃げてくれて助かった。その場で倒れられでもしたら困るしな…)
「「ユーリお兄ちゃんすごい!」」
「すげーな!何だ今の魔法!」
「あの兵士たちをこんな一瞬で…すごいです!」
「ははっ。ありがとな!他の兵士が来る前に屋敷に入るぞ!」
「「「おう!/うん!/はいっ!」」」