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ナマケモノ、バチが当たる

 社畜を卒業して、はや一年。


 連れ合いが薄目で居るのを良い事に、社会復帰の社の字も無い、だらーーーーんとした日々を満喫していたのですが、とうとうバチが当たりまして、滅茶苦茶に躰が鈍っただけならまだ良かったんですが。


 そらーもう、どちゃくそに太りました。

 

 そもそも痩せちゃいないんですが、それにしても若くないとは恐ろしいもので、あれえ? と思ってからの膨れていく様と来たらあなた、コマ落しの如き猛スピードで(茫然)


 去年の今頃は余裕で着ていたジーンズ類はきれいに全滅。どころか、紐で締めないと緩かった筈のジョガーパンツですらぱっつんぱっつん。うっかりAラインの服なんか着ようものなら、バストからそのままがっぽり広がっちゃって、誰がどう見たって妊婦(ただし年齢が絶望的に可笑しい)


 ―――何かもう、嘆くより先に笑っちゃってね。


 流石のオバチャンも己がリアルマシュマロマンになる日が来るとは思っていなかった。


 それでつくづく実感しましたけど、残業が当たり前の立ち仕事って、実はそれなりの運動量だったんですね……。


 無職の今、行動範囲はほぼほぼご近所のみで激狭。家事こそサボっちゃいませんが、そもそもさして広くも無いマンションのこと、日々のルーティンならばものの数時間も掛からず終わってしまうわけで、残った時間を全て読む観る食う寝る時々書くで調子こいていた処、みるみる諸々退化していきまして、気付けば歩き慣れた筈の自宅の周りの坂道ですら青息吐息。


 もうねえ、脚力の衰えと息切れが尋常じゃない。


 背負う脂肪が増え、担う筋肉が減るにも程が有る。このままでは近い将来にも寝たきり待ったなしだ何とかせねば―――、と思い始めた、とある日曜日のこと。


 更なるバチが私を襲いました。


 未だかつて経験した事の無い、実に気持ち悪い眩暈という形で。


 ―――目が覚めた時から、何か変だなあとは感じてたんですよね。


 立ち眩みとも違う、何となく覚束ない感じ。一番近い感覚は軽い船酔いでしたが、自宅でぐーすか寝て起きただけでそんなモノになる筈も無し。


 変だ変だと思いつつブランチを準備し、食べようとしたのですが、これが口に入っていかない。いつもの半分も食べられなくて、諦めて洗い物をしてる間もずーっと胃がムカムカする。


 さては猛暑日続きで軽い熱中症か。最初はそう思いました。

 で、ふらふらするからちょっと横になるね、と連れ合いに断ってコロンと寝た、その瞬間。


 天井がぐるーーーーん。


 うわ何だこれ、と目を閉じてもぐるんぐるん回転する。同時にぐわあっと吐き気が来て、慌てて起き上がろうとしたのですがコレがどうにもならない。脳が振り回されて内臓がせり上がって来るのを飲み込むのが精一杯で、身動きできないし、なんなら声も出せないんですね。ただひたすら、気持ち悪いのと闘うしかない。


 幸い、眩暈そのものは十秒かそこらで収まったものの、吐き気が止まらない。

 何と言っても食後ですからね、大惨事を起こしてはならじと無理矢理起き上がったら、―――また、ぐるーーーーーーんんん。


 ――――――その場はギリギリ根性でリバースを耐えました。本気で冷や汗が出ましたけども、なんとかかんとか乗り切って。


 ゼエゼエしながら、まず頭に浮かんだのは、メニエルでした。昔の同僚が散々に溢していた眩暈発作の出方と似ている気がしたのです。

 でも耳は普通に聞こえるし、耳鳴りもしないし、詰まってもいないから多分違うな、と。

 

 次は血圧の急上昇を疑い、嘔吐(えず)きつつ測ってみましたが、むしろいつもより低い。

 

 じゃあやっぱり熱中症かと思いましたが、それにしては真っ直ぐに立ってたり座ってたりする分には全く目が回らないので、これもなんか違うなあ、と。


 で、絶え間なく上がって来たがる臓物(と中身)を念力で押し戻しつつ、冷や汗ダラダラで『仰向け 眩暈 吐き気』で検索してみましたらば、これが一発でした。


 良性発作性頭位めまい症。略してBPPV。


 ………もうねえ、今となっては笑い話ですが、この時の安堵感ったら無かったですね。


 何たってドアタマに『良性』が付いているからには、これは絶対に怖い眩暈じゃない。かーなーりー辛いけれども、それでも、とうとう来た不摂生のあまりの高血圧だの、脳の血管に脂肪を詰めただの、そういう急激にデブった祟りが引き起こしたものでは、恐らく、ない―――という事で私は安心しちゃったわけですが、一部始終を見ていた連れ合いのほうは、そう簡単には納得しませんでして。


 周到にもバケツ片手に言う事には、例えそうでも念のために休日診療の病院を探して行こうと。しかし何せ私は安心しちゃってますから(大笑い)明日になってもこんなんだったら近所の耳鼻科に行くから大丈夫―――と言い放ったんですが、僅かその数時間後に胃液すら出なくなる程の大リバースをかましまして、バケツ抱えながらトイレまで這うわ吐くわ吐くわ吐くわ苦しい余りにしくしく泣くわ、そらーもう散々な醜態を晒してしまいました。


 水すら胃に留めておけないなんてのは久々でしたね。いや苦しかった。それも吐いて終わりじゃないんですよ。依然として目が回ってますからね、身動きするとスイッチが入って吐き気が込み上げる。口もゆすげないんです、頭と一緒に内臓が揺れるから。何だこの地獄のエンドレス。


 そのうち、ここまでダメになってる私を見た事が無い連れ合いが救急車を呼ぶとか言い始めたので、それは死ぬ気で止めて、泣きながら眩暈発作で見てくれる休日診療の病院を探したのですが、間が悪い時間帯に差し掛かっていた為にガチの救急病院しか無い。


 ―――本当に本当に眩暈如きで申し訳ないとは思いましたが、背に腹は代えられず、行きましたよ、救急病院。そして二人もの当直医の手を煩わせた挙句に典型的なBPPVのお墨付きを貰い、居た堪れなさの余りに謝り倒しました。


 『ほんとにすんませんこんなんで来ちゃって』『怖い病気の可能性もありますから来て正解です』『それにしてもお恥ずかしい』『いえいえ当直の度に最低ひとりは診る病気ですから』『貴女くらいの年齢から罹り易いんです苦しいですよねコレ』『気を付けて帰って下さいね』『必ず近所の耳鼻科でも診て貰ってね』


 ………と、天使のように優しく、かつものすごいイケメン揃いだった(マジで。目を疑うほど格好良かった二人とも)当直医たちに見送られ、隣の二十四時間対応の薬局で薬を出して貰って、とぼとぼ帰ってスポドリで眩暈止めと吐き気止めを流し込んで一息ついて、―――深く深く深く深く反省しました。


 というのもですね、今回検索しまくって初めて知ったのですが、BPPVって、年齢的な諸々の他にも罹り易い人の特徴がありまして。


 即ち、『就寝時など横たわった状態で長時間スマホを見がち』で『同じ姿勢で座っているなど頭の位置が動かない生活』を送る『運動不足』の人。


 ―――もはや思い当る節しかない。


 しかもね、BPPVって一旦は治っても高確率で再発すると言うんですよ。


 という事は今後もこのぐるんぐるんは不意を突いて来やがる可能性が大なわけで、それは全く冗談にもなりません。繰り返す眩暈がこんなに苦しいものとはついぞ知りませんでしたが、これは間違いなく一種の地獄です。


 ―――自業自得とは言え、これは切ない。心底、そう思いました。

 

 若い頃なら自堕落の限りを尽くしても精々がデブり散らかすだけですが、トシを取るとこういう処にも来るんですね皺寄せが。まずは生活改善。それが喫緊の課題です。怖いのは生活習慣病(いわゆる成人病)だけでは無かった。ってコレも一種のソレか。そうだな。………間違いないな。


 などと今回もダラダラと綴ってまいりましたが、ええ、お目通し下さった皆様にお伝えしたい事はたったのひとつでございます。


 運動不足というのは本当に本当に怖い事になりますので、ちょっとでもお心当たりがおありの方は、ラジオ体操でも良いそうですから是非とも毎日の習慣に組み入れることをお勧め致します。


 オバチャンみたいになってからじゃ遅いのよーーーーう。マジでーーーー。




 ………って書いたのは眩暈が収まってからで、今から一週間ほど前の事でした。つらつらと推敲もして、さて投稿しようかなって思った処で本当に再発しやがりまして敢無くダウン☠


 またしても薬を出して貰って、何とか復活してきたので、みたび目が回りだす前に投稿します。勘弁してくれ………

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