第6話 アルティメット・ファンタスティック・チラリズム
ここはヤマダたちが最初に行った武器屋。
ヤマダたちのいた世界、つまり我々の世界から、また二人の男が紛れ込んだようだ。
男が武器屋の親父に問いかけた。
「おう親父!エクスカリバーの説明、マジなんだろうな?攻撃力500万で必殺と不死身つき」
武器屋の親父が答える。
「いらっしゃい!兄さんたち、派手系かい?いま、レジェンドシリーズがセール中よ。でも、エクスカリバーは止めときな。難易度が高すぎるぜ」
「振るのが難しいってことかよ。俺の剣道初段なめんなよ。……。軽いじゃねえか。こんなん余裕だぜ!」
男はぶんぶんとエクスカリバーを試し振りしている。
男の名前はゴウダ。その男にはホネカワという連れがいた。
外見?それを聞くかね?
どこぞの剛田武と骨川スネ夫が高校生になった感じだ。
ところで質問を返して申し訳ないが、スネ夫のスネに漢字はないのだろうか。戸籍がカタカナ混じりなんだろうか。
ご本人またはご家族が読んでくださっているなら、お便りを頂けると嬉しいです。
ホネカワが言う。
「僕は魔法を使ってみたいですね。せっかくなんで。杖とか要るんですかね?」
武器屋の親父が教えてくれた。
「魔法なら隣の店に行きな。杖も売ってるぜ」
ジャイ…間違えた、ゴウダがホネカワに話しかけた。
「俺がエクスカリバーを当てれば勝ちだろ。あ、そっか、めっちゃ速い敵とかいるかもな」
「物理攻撃が無効になるモンスターもいるかもしれませんよ」
「ああ、そういうのもあんのか。そんじゃ魔法ショップも行ってみんか。親父、俺、エクスカリバーな」
ジャイ…もといゴウダは、エクスカリバーを購入して、ホネカワと共に隣の魔法屋に移動した。
「おう、これなんか良いんじゃね?ムーンサルトり・レインボーバズーカ」
「月面宙返りしてから、光と熱のバズーカ砲?それ、本当に魔法?どのみち、凄い値段で買えないですよ。あと中古??」
「なんだよ、今ならインベーダーキャップ付きって、お得なのかと思ったぜ」
「そう言えばHP100なんですよね。回復魔法とか要るのかな?」
魔法屋の姉さんが話しかけてきた。
「あら、新人さんかしら?HPなら隣の調整コーナーで変更できるわよ。最初はドラゴン向けに10万に合わせる人が多いわよ」
「そうなんですよ。まだ…痛っ!」
ゴウダがホネカワの頭を軽く叩いた。
「おい!チュートリアルとかやりたくねえよ。とっとと行こうぜ」
ホネカワは、いくつかの攻撃魔法と補助魔法を買った。
ゴウダとホネカワは、隣のHP調整コーナーに移動した。
ホネカワから話を始めた。
「ATMみたいな感じですね。会計のときみたく、手を乗せるのかな?」
「なんだこりゃ。HP1000万まで自由に選べるのか?無料?」
「あれですよ、きっと。スリル無くなるとかで、10万が推奨なんですよ。これなにかのアトラクションなんですかね?」
「テーマパークとかそういうやつだろ?まあ10万にしとくか。どのみち俺は死なんけど」
たまたま、プリンセス⭐モニカと連れの女性が、HP調整コーナーに入ってきた。
モニカが連れと話している。
「ほんと、動物愛護協会って、なによ。ありえなくない?あのコたちやられて、あたし泣かないとダメくない?」
「プリティ系でもピンチ演出はありよ。ちょっと涙を見せるとウケるから。たまには、プリンセス⭐(スター)モニカもやってみなって」
モニカを見てドキドキしているゴウダ。
(なにあのイケてる女子)
ゴウダが思いきってモニカに話しかける。
「お、おう姉ちゃん。俺たちクエスト探してるんだけどよ…ですけど、どこ行けばいいですか?」
モニカが答える。
「なに?新人?酒場にマップあるから、適当なとこ選べば?まさか歌ってからエクスカリバー?たぶんウケないわよ、それ」
ゴウダは、案内されるのを期待していたようだが、機嫌は良さそうだった。
「行くぞ、ホネカワ!俺らの強さを見せてやろうぜ!(あの娘、俺がカラオケ好きなことに気づいちゃった?運命じゃね、これ。また声かけよー)」
全国の剛田武さんと骨川スネ夫さんと石野あらしさんへ。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
◇
ヤマダたちが素材ショップを見ていると、またキタザワが男に声をかけられた。
20歳くらいだろうか。ヒップホップ系のファッションだった。
「Yo!ブラザー炎のキタザワじゃん?」
キタザワのノリがいつもと違う。
「Yo!ブラザーイケテル・タクヤ・パーティタイム」
二人は、片腕と片腕を合わせてから、もう一方の片腕と片腕を合わせ、更にグーに親指を立てて挨拶した。
(えっと、ブラザーは名前に含まれないんだよな)
キタザワが、ヤマダたちにタクヤを紹介した。
「彼はフィニッシュに良く風の攻撃を使うよ。それと、ギリギリのところ攻めてる感じだから、参考になると思うよ。たまに倫理委員会うるさいからね」
クドウが頷いている。
「やっぱりそういうのあるんですね。垢BANみたいなことあるのかな?」
さすがに、キタザワには意味が通じなかった。
「アカバン?は意味が分からないけど、勿論ペナルティあるよ」
「ブラザーたち、ルーキーなんだろ?マイムービーをCheck it nowしちゃいなYo!」
ヤマダたちは、半ば強引に動画を観ることになった。
◇
『IT'S SHOWTIME!』
相手はハーピー、上半身が女性、下半身が鳥型のモンスターだ。
見た目は綺麗だが、キタザワいわく、飛行速度が侮れないらしい。
「盛り上がって行こうぜー!Let's Party Time!マッハ・ダンシング・イケテルスーツ!」
『高速で動けるスペシャルオーダーメイドスーツだぜ。』
フォーマルなスーツ姿に変わった。武器はない。
ハーピーが空中から攻撃を仕掛けてくるが、踊るように避けている。速い。
「COME ON!イラッシャイマセー・フォロワー・カワイコチャンズ ver.スカート!」
『俺のフォロワーのギャルズだぜ。今回のドレスコードはスカート着用だ。Thank You!参加者募集中!』
普通の若い女性たちが召喚された。キタザワいわく、出演を了承したフォロワーを仮想召喚する荒業らしい。
タクヤは、とにかく攻撃を避け続けている。
ハーピーは、たまに女性たちにも仕掛けてくるが、タクヤが女性を抱えて移動して守り続ける。
「しまった!ぐはあ!」
タクヤが女性をかばって、スーツの背中がハーピーの爪に裂かれた。
「モンスターでも、女には攻撃したくなかったが。俺のギャルズに手を出すなら別だぜ?」
なにやら格好つけてポーズを取るタクヤ。
ようやく戦闘らしきことを始めた。蹴りが主体の戦い方だ。
「スーツ破けちまったから、ちょっとキツいかもな。エブリバディ、いつもの応援頼むぜ!エナジードリンク・ハイリマース・リクエスト!」
『投票してくれるとドリンクが増えるぜ。ヨロシク!』
画面上にカウントが出てきた。どんどん増えていく。
「Thanks エブリバディ!エナジードリンク・ギブズウイィィングス・タワー!」
『シャンパンタワーみたいなやつだぜ。』
タクヤが腕を振ると、いくつものグラスが出現して、シャンパンタワーのような物が組み立てられた。
更に空中にボトルが出現して、ドリンクが注がれていく。
「こんだけあれば余裕だぜ。Ready?……。Check it now!アルティメット・ファンタスティック・チラリズム!!!」
『エナジードリンクを風の力に変えて放てる超必殺技だぜ。地面からの余波に気をつけてくれよな。』
まあつまりはそういうことだ。
◇
「なあ、クドウ、ガールズバー行ったことある?未成年でもOKなんだよな?」
「ないよ。ノンアルなら大丈夫だけど、店によるみたいよ。4組の森いるじゃん?あいつは行ったことある…」
何故かキタザワが会話に割り込んできた。
「ガールズバー、この世界にもあるよ。プリンセス⭐(スター)モニカも、ファン増やすために副業で働いてる」
タクヤが思い出したように言った。
「そういや、観たかよブラザー?プリンセス⭐(スター)モニカちゃんの今日のやつ。どうかしてるぜ」
(あんたのほうがどうかしてるぜ、ブラザー)
キタザワが答える。
「あれな、でもブラザーもドリンク使うから、似たようなこと出来るよな?」
「OMGでTYだぜ、ブラザー!それ、グレートアイデアじゃん?水着のギャルズでもイケるYo!」
タクヤは、挨拶してから店を出ていった。
「なあ、クドウ。OMGとTYって何?」
「Oh my godとThank Youだよ」
最大HP1000万に変更しました。
『ムーンサルトり・レインボーバズーカ』は誤植ではありません。作者も小学生の頃、『月面宙返り』を『ムーンサルトり』と読んでいました。
興味のある方は、ぶっ飛びパフォーマンス漫画『ゲームセンターあらし』をご確認ください。
【ネタ元】『ドラえもん』から「剛田武」「骨川スネ夫」。『ゲームセンターあらし』から「ムーンサルト…」「インベーダーキャップ」「石野あらし」。エナジードリンク『レッドブル』から「ギブズウイングス」。